【シリーズ連載】 監禁少年 #4-4
暴力を受けることが生きている実感に結びつくようになるまで、そんなに時間はかからなかった。
僕に優しい彼は、僕が外の世界で傷付くことを許さないと同時に、僕が外の世界に出ようとするのも許さなくなってしまったのだ。
1人で生きようとすると怒られる。
まともになろうとすると殴られる。
そして最後には必ず
「こんな事してごめんね。」
と謝るのだった。
冷たい箱の中。
誰からも求められず刺激のない日々。
生きているのか死んでいるのかすらわからない毎日。
そんな中で唯一暴力と優しさを交互に与えてくれる同居人。
彼だけだ。
彼だけなのだ、僕には。
傷だらけの自分と鏡越しに目があった。
腫れた頬に頭に巻かれた包帯。
動かせば痛い身体。
僕の全身の赤色。
これは今、僕が生きている証拠だ。
「出て行くよ。」
急に彼が発したその言葉を噛み砕こうともせず、僕は彼を引き止めた。
ねえ
君がいなくなったら
僕はどうすればいいんだよ。
暗く 重く
冷たいだけの箱。
ここは僕ら2人だけの、唯一の安息地だ。
完
写真:No,44
作家:rin
モデル:鈴木 裕大
ロゴデザイン:育