【シリーズ連載】 監禁少年 #1-1
きっかけなんて簡単だった。
こんなつもりじゃなかったのに。
こんなつもりが今は物凄く心地いい。
2年付き合った恋人と別れて3ヶ月、傷が癒えそうで癒えないまま1人いつもの喫茶店で。
今日は向かいに見たこともない若い男がいた。
サラサラの黒髪に
澄んだような死んだような目。
私は元彼のことなんか忘れて思わず
15秒ほど彼だけに没頭した。
我に帰った私は会計を済ませ店を出る。
昨日買った傘を探しながら傘立てを漁るも見つからない。
その時頭上に気配を感じ、
屈んだまま見上げると、あの彼がいた。
私の傷を一瞬だけ初めてなかったことにした男。彼は傘を私の上でさしながら何か言っていたが、雨の音で聞こえなかった。
雨のせいか、私のせいか、彼のせいか。
あの一夜、彼を家に招き入れたことで私という人間の全てが壊された。
作家:羅生門の老婆
モデル:たつのすけ
ロゴデザイン:育