【シリーズ連載】 監禁少年 #1-4
彼は私に少しだけ心を許したのであろうか。
それとも白状しないと
酷いことをされるとでも思ったのだろうか。
細々と過去を語り出す。
どうやら彼は私といる前、
誰かの「所有物」だったらしい。
それが彼の初恋でありトラウマだ。
彼の「初めて」は何もかも、
普通ではなかった。
彼の愛とは服従であり、
愛される身は捕虜であると。
彼はそう教わってここまできた。
高価な服、1人じゃ退屈過ぎる豪邸。
彼は愛する人に何もかも与えられたが、
自由など何もなかった。
彼が学んだのはただ1つ、
「暴力こそが最も純粋な愛情である」
きっと彼は彼なりに私を好いている。
しかし一緒にいても捕虜にされない疑問と、
何故かトラウマだったはずの支配を求めている違和感の中で1人彷徨っていた。
まだ彼には私に言えないことが沢山ある。
私だけが彼の過去も今も未来も
独り占めできる特権が欲しいと思った。
彼と出会って私の愛情は、
嫉妬と焦燥から、支配に変わった。
私が彼の中の
「誰にも触れられたくない部分」
に土足で踏み込んで彼に一生の心の傷を負わせたとしても、それすら愛しいと思うだろう。
私が愛することで、
彼が私を世界で1番憎んだとすれば、
私は彼の1番になれるのだから。
心も身分も空っぽの捕虜が裸足で
私の暖かな檻の中に逃げてきた。
私は彼の全ての2%もまだ知らないだろう。
彼が今日も憂鬱そうに微笑んで、
鍵のかかっていない私の檻にいてくれる。
いつかは彼の全てを
教えてもらえるのだろうか。
そのいつかが永遠に終わらないのなら、
私達は永遠に一緒にいれるのだろうか。
家に知らない人がいる。
綺麗で、彫刻のようで、
触れたらすぐにでも壊れてしまいそうな
綺麗な人。
でも私たち他人は、確かに愛し合っている。
それが私たちの愛情の答えだ。
作家:羅生門の老婆
モデル:たつのすけ
ロゴデザイン:育