小ホラ 第4話
中古物件
いわくつきの中古物件を手に入れ、住める程度にリフォームし引っ越した。
不動産屋の担当も工務店の大工や引っ越し業者も物好きなオレを笑っていたが気にしなかった。
本物の事故物件に住み、心霊現象をずっとネットに配信し続けるという夢がやっとかなうのだ。
引っ越し早々、各部屋にカメラを仕掛けた。レンズを通して確認してみたが、まだ明るい時間帯のせいか、オーブすら映っていない。
夜じゃなくても何か現象が起きるなら嬉しい限りだが、やはりそううまくはいかないか。
夜は元凶といわれる部屋に布団を敷いて寝た。
深夜二時まで胸躍らせ起きていたが、日中と同様何事もなく、眠りについてからも「何かの気配で目が覚めた!」ということもなく、昼近くまでぐっすり眠った。
がっかりだったが、引っ越し疲れによる深い眠りで、霊現象にも目を覚まさなかっただけかもしれない。
そう考え、夜中じゅう回し続けていたビデオを全部チェックしたが、布団を敷いた部屋はもとより、各部屋のどれにも何も映っていなかった。
ま、初日だからな。お化けのほうも遠慮したんだろ、と気持ちを切り替え、二日目も三日目も、それ以降もあきらめずにビデオカメラを回し続け、徹夜も何度も繰り返し待ってみたものの、期待したことは何一つ起こらなかった。
ずっと何も起きなかったので、本物の心霊動画をネットに配信する夢はもちろん叶わなかった。
引っ越しして二か月、オレを奇異の目で見ていたご近所たちとも挨拶を交わすほどの仲になり、
「何か起こりましたか」
「いやぁ、それがまったく何もなかったんですよ」
「じゃ幽霊屋敷っていうのは単なるうわさだったんだ」
「そうみたいですね」
「正直、迷惑してたんで安心しました。あなたのおかげですね」
「いえいえ、そんな――」
このような会話を各ご近所と繰り返しながら、オレはこの地域のただただごく普通の住人になった。
クレームをつけてやろうと不動産屋に電話をかけたが、呼び出し音が鳴っている間、心霊現象が出ないというクレームはやっぱりおかしいよな。本来の価格より物件を安く手に入れられたのだから、これはこれでいいじゃないか、と思い直し、世話になったお礼と近況報告だけすることに決めた。
だが、電話に出た女子社員は、担当社員はじめ、リフォーム業者や引っ越し業者など、この家に入った関係者全員が既に亡くなっている旨を伝えながら、オレがまだ生きていることにひどく驚いていた。
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