小ホラ 第7話
花火の夜
花火のできる空き地を求めて深夜歩き回っていた僕たちはやっといい感じの原っぱを見つけた。
周囲に住居はなく、こんな時間に騒いでも見咎められることがなさそうな場所だ。
ただ街灯もないので真っ暗闇なのがちょっと不便か。その分、花火がきれいに見えるだろう。
買い集めた花火セットの大袋をスマホの明かりを頼りに開き、各自好みのものを取り出してライターで火を点ける。
色とりどりの火花が噴き出し始めると辺りが仄かに明るくなり、点滅する光を映して白い煙が棚引いていく。
うおぉぉと叫びながら花火を振り回すタク、残像を楽しむように円を描くミツオ、音と色の変化を座ってじっと見つめているシンジと、遊び方にそれぞれの性格が出ていて可笑しかった。
僕も大好きなねずみ花火を点火し、足を跳ね上げてはしゃいだ。
ふと、暗闇に消えゆく煙の中に人影が見えたような気がして足を止めた。誰かが注意しに来たのかもしれない。もし警官なら厄介だ。
そう思いながら、声をかけられるのを待ったけど何もない。
次々と点火されていく花火の明かりに目を凝らしたが、僕ら四人以外誰も見えなかった。
煙が描いた錯覚だ。
ほっと胸を撫で下ろした瞬間、煙の中にまた人影が浮かんだ。
今度こそはっきりと見える。しかも一人や二人じゃない――
「よしっラストだぁ、噴水花火つけるぞっ!」
「「おうっ!」」
みんなに警告しなければ、そう思っても声が出ず、逃げようとしても身体が痺れたように動かない。
タクが点火した噴水花火からしゅうううと豪快に火が吹き上がって歓声が上がる。
その光と煙の中に浮かび上がる人影がどんどん増えて、僕たちを取り囲んでいく。
やがて噴水花火の火が徐々に小さくなって消え、辺りはもとの真っ暗闇になった。
「なんだよ。引っ張るなよぉ」
というタクの声に続いて、ミツオとシンジの凄まじい絶叫が闇を裂いた。