俺の夢 #創作大賞2022
この「俺の夢」は2020年10月28日に記事です。
創作大賞2022に応募するために再編集しました。
ドライブをしていた。
ナビゲーターシートにはスマートで素敵な彼女。と、言いたいところだが、鎮座しているのはナビゲーションアプリを立ち上げてあるスマートフォン。今のところ。
正面にコンビニエンスストアが見える丁字路にさしかかったところだった。丁字路に設置された信号機の歩行者信号が点滅している。丁字路迄の距離を考えると、信号が赤に変わるタイミングだろう。俺はアクセルペダルから足を離し、愛車を惰性で進ませた。
さて、ここはどちらに曲がろうか?気ままなドライブとはいえ、面白そうなものがあるのは右か左のどちらなのかが気になった。その先に何があるのかを確認するため、ナビゲーター・シートのスマートフォンを手にしようと、手を伸ばしながら助手席に眼を落とした。
予想通り丁字路の信号が赤になった。ブレーキを踏んで愛車を停止させると、突然、コンコンと窓を叩く警察官が現れた。
窓を開けると「運転中にスマートフォンを操作していたな?すぐそこのコンビニエンスストアの駐車場に行け」と言われた。
ナビゲーションを見るのもスマートフォンの操作に当たるのか?とモヤモヤした気持ちで、コンビニエンスストアの駐車場に愛車を滑りこませた。
駐車場に停車させると、今度はコンビニエンスストアのユニフォームを着たお姉さんが、窓を開けてとジェスチャーしてきた。
窓を開けると、「おめでとうございます。あなたが1万人目のお客様です。こちらはプレミアムな招待状になりますので、是非店内にお越しください」と降車を促された。
言われるがままに店内に入ると、奥のイートインに案内された。ドアを開けてイートインに入ると、床にはふかふかの絨毯が敷かれ、ガラステーブルとベルベットの長椅子が設置されていた。
長椅子には、タイトスカートからスラリと伸びた脚を組んだ、菜々緒を思わせるような スタイルの良い女性が座っていた。
愛車のサイドシートにも、こんな感じで脚を組む彼女が……なんて事を考えていたら、ふかふかの絨毯に足を取られて転んでしまった。その拍子に、テーブルの上に置いてあったであろうグミキャンディが床の上にこぼれ落ちてしまった。
気不味い。そう思いながら、床に落としてしまったグミキャンディを拾うためにしゃがみこみ、つい彼女の方を見てしまった。目の前には、パンティが見えそうで見えない綺麗に組まれた脚があった。気不味い思いが増幅する。
こぼれ落ちたグミキャンディを拾い集めていると、そこに細身スーツにゴールドのアクセサリー身につけた色黒の男性が、変な花瓶を持って現れ、俺に話しかけてきた。
「花瓶に傷がついた。どうしてくれんの?」
いきなりの事に、気不味い思いも吹き飛んだ。
俺は立ち上がり、
「グミキャンディで、しかもこんな柔らかい絨毯のある床に落ちたグミキャンディで、その花瓶にどうやって傷がつく?そもそも、花瓶はどこにあった?説明してくれ。」
と、色黒細身スーツの男に詰め寄った。
勢いに任せ更に詰め寄った。
「プールの飛び込み台から飛び込んだ時に、入水角度によってはコンクリートに打ち付けられたような衝撃になるとか。ならば、"豆腐の角"も超高層ビルの屋上から落とした場合、トンでもない衝撃に襲われるだろう。当たる確率はトンでもなく低いけどな!グミキャンディもしかりだ!」
ぐうの音も出なくなった色黒細身スーツは、すごすごとその場を去って行った……
隣では、色白太身スーツの男がぐうぐうと鼾をかいて眠っていた。そんな鼾で起こされた通勤電車での朝の一時。
金も免許もない俺には、愛車でのドライブなんて夢。ましてや、綺麗な脚の彼女とのドライブデートなんて夢のまた夢。
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