【ラララカラオケ】ヨジレ節/姐さんとクレイジーよじれ隊
ひと仕事を終えた御手洗六助は、いつものように、ほんわか商店街の中にある『六兵衛』という名の小料理屋に向かった。
ガラガラガラ♪
「邪魔するでぃ!」
六助は、威勢のよいお決まりの挨拶をしながら店内に入った。
「いらっしゃい!」
九里雨音が答える。
威勢よく入ったはいいが、店内はやけにシンとしており、お決まりの挨拶が虚しく消え去った。
「シーッ🤫」
九里雨音が左手の人差し指を口に当て、右手で六助の視線を誘導した。
九里雨音の指の先を追いかけると、ピアノの前で美月経子が白と黒の鍵盤をまさぐっていた。
経子は視線をあげて六助に言った。
「今ね、耳コピ中」
六助は、「耳にチュー💋!?」と聞き間違え、頬をポッと赤く染めた。
間髪いれずに、心の中のリトル六助がつぶやいた。
その鍵盤の黒鍵のように、自分の黒鍵もまさぐって欲しいとか思っているんじゃないだろうな……
「でっ、できました! 耳コピ! これで誰か歌いたい方が来ても大丈夫。♪ラララカラオケ完成ですっ!」
と経子は目をチクタクと時計のように瞬きながら胸を弾ませた。
「そ、そのコ、コジレ節なら歌えます」
「六助さん、コジレ節じゃなくてヨジレ節ですよ」
と経子は目を三日月のようにしてケタケタ笑った。
心の中のリトル六助がつぶやいた。
テンバッて上がってるな?テンバッて上がりたいのはaokidaさんだ。
「六助さん、まずは席について何かのんで落ち着いてくださいな」
九里雨音がおしぼりと付け出しの小鉢を運びながら着席を促した。
一杯飲んで落ち着きを取り戻した六助は、再び経子のもとにいった。
「ヨジレ節歌いますので伴奏をお願いします」
すっかり調子にノッた六助は、何度も何度も繰り返し歌った。
心の中のリトル六助が数を数えた。
チューチュータコかいな、チューチュータコかいな…10回歌ってるな……
耳にタコが出来るほど聴かされた店内の客は、みなゲッソりしていた。
ぱひゅん。
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