ゼネコン, 組織設計事務所, Engineering Firmの違い

Youtubeに挙がっている怪しげな建築業界紹介動画を見てしまった。あれらよりは実情に基づき、また前職を離れた立場から幾分か公平に語れると思ったので書き残しておく。
ただしこれも設備設計者一人の経験と伝聞でしかないし、主語を大きくするつもりもない。ゼネコンは某スーパーゼネコン一社のみ、組織設計は協働した某N建さん、N設さん、Aさん、K米さん、Y下さんあたり、Engineering Firmは建築部門、施工部門を持たない今の企業に限った話。

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施主の傾向(あくまで傾向なので、そうでない施主から受注することもある)、工事監理の有無、給与あたりが主な違いで、中でもお付き合いする施主が異なるということが、設計内容や働き方にまで大きく影響すると思うのだが、そのことに言及している記事を見かけない。日本の建設業界が激務なのはほぼ施主のせいだと思っている。頑張ってしまう設計者、施工者にも多少非はあるし、これまではこの工期で出来ていたという慣習を受注側が足並み揃えて拒絶する必要があるが、施主が適切な工期、設計期間を設ければ働き方は変わるはずで、建設業界が激務である必然性はない。

私はまだ海外経験が浅いが、施主に金持ちが多く、また日本より設計期間が長く設けられている印象。残業なしの働き方が前提としてあるのかもしれないし、金持ちゆえの余裕が工期に現れているのかもしれない。
建築家に依頼し意匠にお金をかける施主は設備に無関心かというとそうでもなく、少なくともお金を持っているので、設備側でもできることが増える。省エネや環境配慮には基本的にお金がかかる。限られた予算での創意工夫にやりがいを感じる人もいるかもしれないが、そんな制約は無いに越したことはない。
お金を持っていて余裕のある良い施主とお付き合いすることが、優れた建物を健全な働き方で実現するために最も重要で、それができる企業で働くべき。技術レベルが高いことが前提なので中小より大企業、仕事を選り好みするためには国内企業よりグローバル企業。ただしグローバル企業でも日本の支店は激務と聞くので、日本の施主を相手にすると日本式の働き方になってしまうのかもしれない。働き方重視なら海外。

日本の働き方も今後改善されるかもしれないが、少なくとも私の働いた7年間は表にも書いた通り、仕事量が変わらず、つけられる残業時間だけが減らされていき、仕事が終わらないので隠れて残業し、意図的なPC切り忘れをいつも怒られ、状況は寧ろ悪化していた。
私はバリバリ働きたかったので残業が多いことは問題なく、残業して怒られること、隠れて残業しなければならないことが不満だった。正確な勤怠管理は本来良いことだが、それに従って受注案件数や業務量を調整しないから歪みが生じる。
私はかなり働いていた方(月残業平均約170h)なので極端な例かもしれないが、平均的な若手設計社員だって23時近くまで残業していたので、正直に申告していたら36協定を守ることなど不可能。受注案件数を減らす気がなさそうだったので、あとはひたすら外注して自分たちでは設計しないかたちに堕するしかないように思われる。私が知っているのは2年近く前の姿なので、最新状況は現役社員に聞いて下さい。

ゼネコンにいた頃は、監理もやっている分、組織設計より自分たちのほうが建築のことをわかっている、技術レベルも高いはずだと信じていた時期もあったが、自分が納まりに詳しくなったかというとそれほどでもない。逆に監理がない分案件数をこなせる組織設計を羨ましく思った。組織設計の設計者が監理を経験せずにどこまで現物や納まりを理解しているかは不明。

前職は最初に内定をもらったことと真面目そうな印象から決めてしまったが、外からの印象は当てにならないと知った。実際の働き方が外からわからない、もしくは実際どこも似たりよったりなら、事実として意匠のレベルが高く、設備が機械設備と電気設備両方担当できるTさんがゼネコンでは一番魅力的。

海外企業は国によっては所得税、住民税、社会保険料等が非常に少なく、手取りが増える。退職金は出ない。海外企業で働きたい場合、新卒では設備設計の知識がないまま母国語以外で仕事することになり、なかなか大変。グローバル企業の日本支店に就職して転勤するか、それが叶わない場合は日本企業で基礎を身につけてから転職する方が良さそう。日本の事情(標準技術、最新技術、法規等)を知っていることも海外就職時に他者との差別化につながると思われる。日本のこともよく知らないと日本人である利点が少なく、純粋な設計技術で現地人を凌駕する必要がある。海外では日本人ほど一生懸命働く人は少ない印象で、勤勉さは大きな長所だと思うが、それを就職時に評価してもらうのは難しい。ただ転職は遅すぎると転職時に給与が大幅に下がる(その時点で海外経験0、海外で通用する資格も持っていないと、日本で経験年数が多くても評価されにくい)ので、できるだけ早い方が良い。

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