北海道遺産シリーズ(32)~登別温泉地獄谷
北海道にも歴史があります。そんな歴史をたどり、未来へ紡いでいく北海道民の宝物。そんな北海道遺産を自身の足(車)で巡り紹介しようと思います。なお、記事作成にあたって、『北海道遺産 完全ガイド』(北海道新聞社)を参考にさせてもらいました。
1. 登別地獄谷の概要
登別市に位置する地獄谷は、北海道を代表する温泉地のひとつで、年間を通じて多くの観光客が訪れる人気スポットです。火山活動によって形成された独特の地形と、絶え間なく湧き上がる温泉や噴気孔から立ち上る硫黄の香りが特徴で、その荒涼とした風景はまさに「地獄」の名にふさわしいとされています。
2. 地獄谷の成り立ちと歴史的背景
登別地獄谷の起源は、約1万年前にさかのぼります。地獄谷そのものは、かつての火山噴火によって形成された爆裂火口で、その広さは約450メートルにも及びます。この荒涼とした風景は、火山性ガスが地中から噴出し、硫黄や鉄分を含む温泉水が絶え間なく流れることで維持されています。
地獄谷の温泉は、アイヌの人々にとって古くから重要なものでした。アイヌ文化において、温泉は神聖な場所とされており、治癒の力を持つ「カムイ(神)の湯」として崇拝されていました。彼らはこの地を「ヌプル・ペツ」(濁った川)と呼び、その力を敬っていました。
江戸時代に入ると、地獄谷の温泉の効能が広く知られるようになり、湯治場として利用されるようになります。当時は、温泉の豊富な鉱物資源が皮膚病や神経痛の治癒に効果があるとされ、多くの人々が治療のために訪れました。
3. 明治から昭和の観光地としての発展
登別地獄谷の歴史には、地域の発展に大きく貢献した人物として、滝本金蔵(たきもと きんぞう)さんの存在を忘れてはなりません。滝本金蔵は、登別温泉の開発と観光地としての発展に尽力した人物であり、彼の活動は現在の登別温泉街の礎を築いたといっても過言ではありません。現在の「第一滝本館」の前身となる、温泉宿「滝本館」を創業しました。
明治時代に入ると、登別温泉の価値はさらに認識され、政府や地元有力者の支援を受けて温泉街の整備が進みました。地獄谷もその一部として、観光客の増加とともに発展を遂げます。明治初期には登別温泉の管理を担う旅館や宿泊施設が次々と建てられ、治癒を目的とした湯治客だけでなく、観光目的で訪れる人々も増加しました。
特に鉄道の開通が大きな転機となりました。1880年代後半に北海道の鉄道網が発展し、登別温泉へのアクセスが大幅に向上しました。これにより、北海道内外からの観光客が気軽に地獄谷を訪れるようになり、温泉地としての名声は全国に広がりました。
さらに、昭和初期には登別温泉街の規模が拡大し、観光インフラも整備されました。1930年代には、より多くの宿泊施設や温泉施設が建設され、観光客の受け入れ態勢が強化されました。地獄谷そのものも、訪れる人々にとって「温泉観光の中心地」として位置づけられ、噴気孔から噴き出す白煙や独特の地形が話題を呼びました。
4. 地獄谷の魅力と見どころ
登別地獄谷は、その名前が示す通り、まるで地獄を思わせる独特な景観が魅力です。地獄谷に一歩足を踏み入れると、目の前に広がるのは白煙が絶え間なく立ち上る荒涼とした風景。これは、地下から噴出する火山性ガスや温泉水によるものです。
地獄谷の中にはいくつかの見どころが存在します。その代表的なものが、噴気孔や温泉の源泉です。谷のあちこちに噴気孔があり、硫黄の匂いが漂う中で、地中から勢いよくガスが噴き出す様子を見ることができます。特に有名なのが、「大湯沼」と呼ばれる巨大な温泉湖で、温泉水が地下からボコボコと湧き出る様子は圧巻です。
また、地獄谷の見どころとして忘れてはならないのが、湯けむりや硫黄の匂いといった五感で楽しむ体験です。谷を散策することで、地熱によって温まった地面や、硫黄の強い香りを全身で感じることができます。
5. 地獄谷を訪れる際のアドバイス
登別地獄谷を訪れる際には、いくつかのポイントを押さえておくと、より快適で充実した観光を楽しむことができます。
まず、歩きやすい服装と靴を準備することが重要です。地獄谷内は整備された遊歩道があるものの、一部は自然のままの道もあり、坂や凹凸のある地形を歩くことになります。特に温泉の蒸気や湿気があるため、滑りやすい箇所もあるので、履き慣れた靴や軽装で訪れることをおすすめします。
次に、硫黄の強い匂いに注意が必要です。地獄谷では地下から噴出するガスによって硫黄の香りが漂っています。これが魅力の一つでもありますが、匂いに敏感な方や、長時間の滞在が難しいと感じる方もいるかもしれません。そのような方は、あらかじめ短時間での散策を計画しておくとよいかもしれません。
また、持ち物として、タオルを1枚、バッグに入れておくとよいと思います。足湯があり、湯から上がる際にタオルがあれば便利だとおもいます。
6.温泉の素
全国でも有数の温泉地、登別温泉そしてカルルス温泉。
その豊富な湯量もさることながら、実は10種類もの泉質の温泉が湧き出ていることでも有名。温泉のデパートと称されるように、これだけたくさんの泉質のお湯に浸かることができる温泉地はそう多くはありません。
硫黄泉/食塩泉/明ばん泉/芒硝泉/緑ばん泉/鉄泉/酸性泉/重曹泉/ラジウム泉/単純温泉
市販の温泉の素は、乳白色をしています。この中では硫黄泉をモチーフに作られていると思います。登別温泉といえば、この硫黄泉が代表格なのだと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。