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ユングを詠む_(016)『タイプ論』からMBTI®︎へ

『タイプ論』から『MBTI®︎』へ

1.     イントロ

ユング関連で何を書くか、2、3ネタがあって何について感想を書くか迷っていた。で、これにした。

1921年から本国で出版され日本では1987年に邦訳が出版された『タイプ論』(みすず書房刊) [3]関係に今回はしたい。

と言うのは、通称『MBTI ®︎; Mylers-Briggs Type Indicator』[1]としてユングの『タイプ論』は性格分析手法として応用されているので、基礎的原理・理論はどんなものかよく知りたくなったのが取り上げた最大の理由だ。

そして、『MBTI®︎』[2]のテキストでは、キーワードとして一切登場しないが、分離と実存的変容、そして心的機能の発達のためにマインドフルネスにあたるワークを推奨しているなど、あまり知られていない内容が説明されている。

『タイプ論』においても、実存的変容とか再統合、統合という用語は見つからなかった。また、分離という用語もない。『元型論』や『黄金の花の秘密』などには変容という言葉が出てきておりそこまで行かないといけないようだ。

最初にお断りというかお願いしたいのが、MBTI®︎に関しては誤解や誤用をしている書籍やインターネットホームページが氾濫しているため、一度は「認定ユーザー」の説明を受けてから自己の性格分析を願いたい。以下に公認テキスト[2]の注意事項を転載しておく。

私自身も、『MBTI®︎タイプ入門 タイプダイナミクスとタイプ発達編』[2]の認定者開催の講座を受講して誤解していた面に気がついたことがある。

MBTIの実施やフィードバックは、充分な知識と技術が必要とされるため、一定の訓練を受けた有資格者に限られています。したがって、有資格者でない場合は、本書をあくまでもご自分の理解を深めるためだけに使用し、絶対にあなた以外の人に用いるようなことはしないで下さい。単純なタイプ分けやレッテル貼りとして理解してしまったり、適性の有無を診断しようとするのはMBTI®︎の誤用です。MBTI®︎は回答者にとっての利益を最優先に考えられて作られたツールです。適切に用いられて初めて役に立つものです。そのたことを充分に理解して、本書は、身近な有資格者の指示を仰ぎながら自分の成長のための支援材料としてのみ活用して下さい。

[2]

さて本論に入ろう。

1.     タイプとは

タイプの説明では、参考文献[4]がわかりやすかったのでこれに沿って私なりに理解した形で書いていく。
 
 一人一人の心理学的タイプは、一般的態度と心的機能の2つの側面からなるとユングは20年に及ぶ臨床経験から見出した。
 
一般的態度;「外向(E; Extraversion)⇔内向(I; Introversion)」
心的機能;「感覚(S; Sensation)⇔直観(N; iNtution)」
                  「思考(T; Thinking)⇔感情(F; Feeling)」
 
MBTI(The Myeers-Briggs Type Indicator)®︎の場合はこの3つの次元にさらに、外界への対処のタイプとして「判断(Judgement)⇔知覚(Perception)」という次元が追加される。説明は後の機会にする。
    
馴染みのある言葉・単語が使われているが常識的な意味で使われていない内容にあるので定義はしっかり確認しておきたい。(と言っても、定義というより臨床経験から来ているものなので説明と言った方が良さそうな気がしないでもない。)

で、いきなり定義の中に“リビドー”という言葉が出てくる。これ、避けて通れないことばかかな。特にフロイトの“リビドー”より広い意味で使っている。

“心的エネルギー”とユングは定義している。自分のメモのために文末にユングの詳細な定義を書いておくが、心的エネルギーでいいでしょう。エネルギーは高校物理で習うエネルギーと同じ。私は心が実装されている神経組織を動かすためのエネルギーと解釈する。

(腹が立ったり悲しかったりすれば心的エネルギーが大量に使われて疲れる。とか、美しいものを見て興奮して心的エネルギーが使われたってイメージになるだろう。)

2.1一般的態度;「外向(E; Extraversion)」

「リビドーが外へ向かうことを意味する。主体が公然と客体に関係していること、すなわち主体の関心が積極的に客体に向けられていることを表す。(中略)したがって外向とはいわば関心が主体から客体に移ることである」

[3]p461

主体とは何か説明を見つけられなかったが、観察者のことだろう。厳密にいうと議論になりそうだが“私”と思っておく。客体は被観察者のことだろう。人で間違いないと思うが読んでいると人以外の対象、他の生物も含まれるように読めるところもある。
 
主体の心的エネルギーが自分の外に向けられていることを外向は意味する。また、自分とは何か定義大変。特に自我とか自己についてユングは使い分けている。とりあえず普通の意味で自分としておく。
 
主観的要因が客体に投影し外在化している状態であって、単なる社交性とか活動性とは異なるとのこと。参考文献[4] ユングのタイプ論に関する研究p4
 

2.2一般的態度;「内向(I; Introversion)」


外向(Extraversion)に対応するのが、内向(Introversion)。

 「リビドーが内に向かうことである。これは主体が客体に対して消極的な関係を持っていることを表している。関心が客体に向かわずに、客体から主体へ引き戻されるのである」

[3]p475

主体の心的エネルギーが自分の内に向いていることを意味する。主体が外の客観的要因を引き金にその内容を咀嚼したり解釈したりして取り込むことのようで、自閉症とか非社会的とは異なるもの。参考文献[4] ユングのタイプ論に関する研究p5
 
一般的態度の定義の段階だが、ユングの特徴のあるコンセプトは必ずタイプを対にしていることにある。「外向(E; Extraversion)⇔内向(I; Introversion)」、「感覚(S; Sensation)⇔直観(N; iNtution)」、「思考(T; Thinking)⇔感情(F; Feeling)」といった具合だ。
 
これは、補償(Kompensation)という概念による。私は、ようは心のバランサーがタイプの対の相手というふうに解釈した。
 
正常な状態では補償は無意識的であって、意識の活動を無意識的に制御してくれているという。[2]p480

2.3心的機能;「感覚(S; Sensation)」

「五感による感覚、すなわち感覚器官や身体感覚(運動感覚や脈拍感覚など)による知覚」

[3]p458

目、鼻、口、耳、肌などの感覚器官からやってくる情報のこと。日本語で感覚というと感情とか気持ちとかが混じってしまうが、ここでは純粋に神経信号のことと捉える。ただしその神経信号も主体の中で変質してしまうこともあり得る。例えば色弱があるとか視神経に疾患があれば多くの人とは違った感覚を受け取ることになる。

2.4心的機能;「直観(N; iNtution)」

「知覚を無意識的な方法によって伝える心的機能」

[3]p475

閃いたとか、降りてきたとか、ビジョンが見えたとかいった類のものもこれに入るだろう。

「その内容がどのようにして生じたのか示すことも発見することもできない。直観はその内容がなんであれ、一種の本能的把握である」

[3]p476

という。

そして、直感は前述の“感覚”と補償関係にあるとユングは記している。
 
ステファン・メルケルバッハ氏のソース理論ではこの心的機能“直感(intuition)が重要な資質の一つであると説明していた。それは、ユングによれば、

「直感はより大きな可能性を捉えようとする」

[3]p395

からだ。その伸ばし方についてはまたの機会に書いてみたい。

2.5心的機能;「思考(T; Thinking)」

「それ固有の法則に即して、与えられた表象内容を(概念的に)関連付ける心的機能」

[3]p452

これについては説明する必要はあまりなかろう。最も客観的に意識内容を整理・分析・評価・判断する機能のことだ。

2.6心的機能;「感情(F; Feeling)」

「自我と与えられた内容との間に生じる活動であり、しかもその内容に対して受け容れるか拒むか(「快」か「不快」か)という意味で、一定の価値を付与する活動」

[3]p462

ユングは、感情も一種の判断と見做している。
 
自我という言葉が入っている。ユングは自我と自己をしっかり分けて使っている。次回、ユングの定義を整理したい。
(私の解釈では、たった今、自分が意識している狭い範囲での自分とイメージ。CPUと演算に使っているデータといったらわかるだろうか。自己というといつでも取り出して意識下に持って来られる記憶などを含む自分とでもいいたらいいか。SDDとかHDDにデータが入っているような感じ。)
 
感情と激情は区別すると説明されている。激情とは感情の強さが高まった神経性身体現象(表情が変わったり顔色が変わったりとかだろう)を伴った状態。
 
思考が意識内容を概念によって整理するように、感情は意識内容をその価値(受け容れるか否かの判断という意味で)に即して整理する。
 
感情と思考は、互いに共通項のない範疇に属しているとされる。感情を概念で説明することはできないとしている。

2.7タイプをまとめる

「タイプとは一群の人々の性格や多くの人々に共通する性格を特徴的に再現する類例あるいは類型のことである。本書(「タイプ論」)ではタイプを多くの個性的な形態の中に見られる共通の“構え”の特徴的な範型という狭い意味で用いる。」

[3]P517

それらが、
一般的態度;「外向(E; Extraversion)⇔内向(I; Introversion)」
心的機能;「感覚(S; Sensation)⇔直観(N; iNtution)」
                  「思考(T; Thinking)⇔感情(F; Feeling)」
 
というわけである。

おまけ:

リビドー(Libido); 私(ユング)はリビドーを心的エネルギーと理解する.
心的エネルギーとは心的な出来事の強さであり、その心理的価値である。心理的価値は、道徳的・審美的・知的な価値のように他から与えられる価値と理解されるべきではなく、むしろその価値は自らの決定力によってのみ定まってくるものであり、この決定力は特定の心的作用(「仕事」)として表現される、批評家はしばしばリビドーを心的な力と誤解したが、私はそのように理解していない。私はエネルギー概念を実体化しておらず、それを強さないし価を表す概念として用いる。特殊な心的能力というものが存在するか否かという問題はリビドーの概念とは何の関係もない。私はリビドーという表現の代わりにしばしば「エネルギー」という言葉を使う。(以下略)

補償 (Compensation):
 私(ユング)は補償という概念を広く機能間の相殺として・心的器官の自己制御として・理解する。この意味で私は無意識の活動を、意識機能によって生じる構え全体の偏りを相殺することと理解する。心理学者はよく意識を眼に例え、意識の視野とか視点という言い方をする。この例えによって意識機能の本質が的確に特徴付けられる。すなわち最もよく意識されるようになる内容はごく僅かだし、意識野の中に同時に留まれる数も限られている。意識の活動は選択的なのである。選択は方向付けを必要とする。しかし方向付けのためには関係のないものは全て排除することが必要である。このためにその都度必ず意識の方向付けにある種の偏りが生じる。選択された方向づけによって排除され阻止された内容は差し当たって無意識に沈むが、しかし依然としてその作用が存在するため、意識的な方向づけに対する反作用を形成し、その反作用は意識の偏りが増すにつれて増大し、ついには苦しい緊張をもたらすことになる。この緊張は意識の活動をある程度阻害するように働くが、しかし当面のあいだは意識の努力を増すことによってこれを打破できる。
しかし持続的にこの緊張が高まると、阻止された無意識内容や夢が「勝手に浮かんでくる」イメージを通して意識に伝えられる。意識の構えの偏りがひどくなるにつれて無意識に由来する内容はより対立的になるため、意識と無意識はそもそも対立的なのだと言えるほどである。
こうした場合になると補償が対立する機能の形をとって現れてくる。これは極端な場合である。普通は無意識による補償は対立的なものではなく、意識の方向づけを相殺したり補ったりするものである。
例えば夢の中で無意識は、意識の状況に対して布置されながら意識の選択によって抑圧されている内容を全て示しているのであり、意識が十分に適応するためにはこれらの内容を知ることが不可欠であろう。
正常な状態では補償は無意識的である。すなわち意識の活動を無意識的に制御する働きをしている。神経症においては無意識が意識と激しく対立するため、補償が損なわれてしまう。したがって分析的治療は無意識内容の意識化を目的とし、その方法によって補償を回復させようとするのである。

[3]

今回はここまで。
 
次回は、タイプ論の続きの予定。
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参考文献[1] MBTIタイプ入門(第6版)https://amzn.asia/d/gYIF9uL
 
参考文献[2] MBTIタイプ入門 タイプダイナミクスとタイプ発達編https://amzn.asia/d/70n8tG2
 
参考文献[3] 『タイプ論』https://amzn.asia/d/2t5symt
 
参考文献[4] ユングのタイプ論に関する研究: 「こころの羅針盤」としての現代的意義 (箱庭療法学モノグラフ第21巻) https://amzn.asia/d/aAROzTI
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ユングは読むの骨が折れる。
ユングの本丸は、「元型論」のように感じる。そっちを早く読みたいな。

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こころざし創研 代表
ティール・コーチ 小河節生
E-mail: info@teal-coach.com
URL: 工事中
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