懊悩タイムトラベル2-6
自分の人生は自分自身のためにある。
他人に合わせて変えることは後悔に繋がる。
僕がこの恋で学んだことの一つだ。
夏休み明けに進路変更をした2週間後くらいだったと思う。
いつものようにPCで彼女からのメールを読もうと開いて僕はしばらく理解ができない状態に陥った。
平たく言えば「別れてください」
丁寧に書くと
「浮気したら妊娠しました。だから中絶して今はまた別の人と付き合い始めています。」
とかそんな内容だった。
しばらくぽかーんとしてしまった。
正直、浮気されても仕方ないとは思っていた。
やっぱり僕はそばにいつもいられないし心が弱っている彼女にとってそれはしんどいだろうから。
もちろんそうなってほしくないとは思っていたけど
やっぱり直面すると頭の中は真っ白になった。
しかも妊娠、中絶となると大混乱だ。
おまけに新しい彼氏ができましたと謂われたら僕はどうするのが正解なのか全くわからなかった。
たぶん1時間くらいはそのままぼんやりPCの前に座っていた気がする。
浅い付き合いならともかく結婚に向けて動き始めた矢先にメールというのもダメージが大きかった。
なぜ電話じゃないんだろうか。
裏切ったことを詰られたくなかったからだろうか。
だとしたら僕の気持ちはもはやどうでもいいんだろう。
フツフツと怒りが湧いてきてかなり強い言葉で返した。
そのことが何だか惨めだった。
誰もが認める捨てられた男になっていた。
僕と彼女の濃密な時間は10ヶ月で終わりを迎えた。
こうして僕は彼女との未来も進学という未来も失った。
ついでに彼女のこと最優先にしていたから友だちも離れていた。
どうせ北海道行ったら遊べないし…とか。
だから少し大げさだけど高校3年生の秋に僕はひとりぼっちになってしまった。
誰が悪いとかそういうことは考えなかった。
そもそも僕が彼女に価値観を押し付けたり気配りができなかったことで彼女の心が壊れたのだとしたら悪いのは僕だけど全て僕のせいというわけでもない。
もし仮にあのまま付き合っていたとしたら僕は彼女に対して愛ではなく贖罪のために付き合っていたと思う。
これはこれで迷惑な話だと思う。
だから僕らの恋愛は終わるべくして終わった。
ただお互いが描いているファンタジーを追い続けているだけで現実的にはままごとレベルだったと思う。
でもさすがにこのときは声を上げて泣いた。
心配になったオカンが背中をさすってくれたことを思い出す。
ちょっと情けないような気もするけど一人だったら心が壊れていたと思う。
そして翌朝。
思いっきりすっきりしていた。
どこか重荷から解放された開放感すらあった。
僕も限界だったんだ。
このことが後の僕に関係あるかはわからない。
けれど遠距離恋愛のわりによく会っていたと思うからもっと長い時間を過ごしていたような気がする。
それでも心の奥底までは繋がることができなかった。
結局のところ時間の長さではなく密度なんだろう。
僕は彼女と付き合うことで人の心の脆さを学んだ。
数年後に僕も心がぶっ壊れるけれど本当にあっけなく壊れるのだ。
19歳で学ぶには少しばかり重かったけれど早い段階で学ぶことができたので僕の価値観や考え方を変えるきっかけに繋がっている。
彼女に感謝したほうが良いのかは分からないけれど
今の僕に至るスタート地点になったのは間違いない。
そう考えると無駄な恋ではなくて学びの多い恋だったように思える。
そしてこの恋の終わりから半年後に僕はカミさんと出会った。
冬になると彼女からもらったマフラーを今でも使っている。
単純に使えるものを捨てるのがもったいないだけで彼女に未練があるとかそういうわけじゃない。
それを巻いているとたまにうっすらと3月の札幌を思い出すことがあるけれど彼女の顔や声はすっかり忘れてしまった。
人は恋で成長することはないという言葉もあるけれど
僕は色んな意味で成長することができたからとても意味のある時間だったと今は思う。
僕があいりきプログラムに心血を注いでいるのはこんな経験があったから。
そのことをどこかに残しておきたくて綴りました。
この暗い話に最後までお付き合いいただきありがとうございます。
カミさんとの話は…
本を買ってくれたら分かります(笑)
それではまた近いうちに。
アディオス!