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その背中を追い続けてChapter4

日本武道館で布袋さんのパフォーマンスを見たことがきっかけとなり僕はようやく念願のエレキギターを手に入れた。

レフティなので選択肢がなくフェンダージャパンのストラトキャスターになってしまったけれど

僕にとって魔法の杖だ。

しかしである。

僕はアンプを買っていなかった。

何となくアコギみたいに繋がなくても音くらいなるでしょみたいな感覚だった。

だから買ってきて早々に鳴らしてみると「ペーン」ってな薄ーい音しか出ない。

ありゃと思ってコードを弾いても「シャラーン」くらいのもの。

これはアンプを買わねばとギターの残金で安ーいアンプとシールドを慌てて買ってきた。

が、しかしである。

アンプには電源がいる。

小型のものなら9Vの四角い電池。

一般的にはパワーサプライ、つまりACアダプターがいる。

どっちもないぞ、おい…

部屋にはゲーム用のアダプターがゴロゴロ寝ていたので片っ端から規格を調べるとメガドライブというゲーム機のアダプターが使えそうだった。

物は試しで使ってみる。

さすがに爆発とかはしないだろうけど火花が出るくらいは覚悟しておいた。

恐る恐るスイッチをひねるとめでたくメインランプが点灯してホワイトノイズが聞こえてきた。

僕は飛び上がるような気持ちでギターを手に取り、ついにあの歪んだディストーションサウンドが手元から流れてくるんだなと期待に胸を膨らませまくった。

そして買ったばかりの布袋さんモデルのピックでコードを鳴らした。

「ポローン…」

あれぇ?「ギャーン!」っていわない…

試しにトーンなどのツマミをいじってみるものの聞こえてくるのは至ってクリーンな音だった。

試しに音を大きくしてみたものの「ポローン」が大きくなるばかりで一向に音が変わらない。

衝撃でしかない。

あの歪んだ音は相当に練習を積むか爆音で鳴らさないと出ないらしい。

これは予想以上に苦労するかもしれないと僕はめげそうになった。

今のようにインターネットで何でも調べられる時代ではなかったので何もわからないまま僕は毎日ポローンと鳴らしては頭をひねっていた。

どんなに頑張っても力を入れてみてもポローンがボーンになったりペーンになるくらいで気づけばロックというよりもムード歌謡でも弾いているような気分になってきて何とも言えないわびしい気持ちを抱えていた。

「いやいや、そんなの楽器屋のお兄ちゃんに聞きなさいよ」と思われただろう。

実際、僕もそう思う。

ただこの頃の僕は人とコミュニケーションを取ることをできるだけ避けたかったし極度の人見知りだったのでそれができなかった。

あとはかなりの自意識過剰。

何の臆面もなく「布袋さんみたいに歪んだ音が出ません」なんて聞けたらどんなに楽だったろうか。

そんなこと聞いて笑われたら嫌だなとか考えたって始まらないことをずーっと考えているような時期だったからひたすら自分で解決しようと悪戦苦闘していた。

そんなある日。

布袋さんのライブビデオを見ていたら今まで気づかなかったことに気づいた。

なにやら足元にある何かを踏むと音色が変わっていたのである。

あれは何だろう?

何かのスイッチみたいだけど。

少し個人のHPで調べるとエフェクターと呼ばれる機材の一つでギターの音色を変える必須アイテムらしいことが分かってきた。

そう。

ギターの歪んだ音は鍛錬の問題ではなくて機材によって出るものだった。

ならば買うしかない。

しかし売っている場所が分からない…。

こういう時は有名なところに行けば何とかなる。

ということで僕は銀座にある山野楽器を目指して家を出たのだった…

つづく




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