『ツノがある東館』(毎週ショートショートnote)
「東館に鬼のツノがあるらしいぞ」
あの日僕らは授業が終わった教室にいた。
「マジで?」
「・・・」
誰ひとり見に行こうなんて言い出せなかった
小学6年の夏の終わり。
あれから十数年。すっかり大人になった僕らは
懐かしいこの校舎でのクラス会で久しぶりに顔を合わせた。
各々の近況報告が終わり、当時の思い出話に花が咲いた。
「そういえば覚えてるか?」
「なにを?」
「東館に鬼のツノがあるって」
「今から行ってみようか」
東館は施錠されていなかった。
広い空間にキャビネットがずらりと並び
ガラス扉越しに小さな箱がいくつも見えた。
[〇〇年度]と書かれたプレートが一定の間隔で置かれている。
「これ、入学した年じゃないか?」
僕らの入学した年のプレートを捜した。
「あった!」
収められた小さな箱を手に取ると
ひとつひとつ名前が書かれていることが分かった。
自分の名前の箱を見つけて開けてみると
小さなツノのようなものが。
僕らの手は無意識に額の小さな傷あとに触れていた。
(410文字)
<あとがき>
東館にあるツノは実は自分のもので、
ここは鬼の子供たちが人になるための学校だった。
ってな話を考えてみました。