真実の盗撮事件簿 第二章 十四 出会い 捜査するジャーナリスト黒木昭雄との出会い

※この章は過去発表したものより所々追記しています。

 私が尊敬し、師匠として選んだ人は、この41年の人生の中で3人しかいない。(制作当時の年齢で、今現在もその思いは変わっていない)

 その一人が、元警視庁警察官で現在「捜査するジャーナリスト・作家」として活躍している黒木昭雄氏なのだが、出会いは突然やってきた。

 この頃、盗撮抑止活動も強制休止状態であり、次なる目標も決まらない状態の中で次から次へと発売される盗撮ビデオにウンザリしていた8月のある日、出勤前に事務所近くの書店へ参考書を探す為に立ち寄った。

 その時、何気に書店の前に並べられた週刊誌が目に入った。
ピンクに白抜きの文字が視界に飛び込んできた。

タイトルは「実録盗撮ビデオはこうして作られる」

 男性なら若い頃一度は見たことがあるだろう「週刊プレイボーイ」の見出しのキャッチコピーだった。

 私自身、大衆受けを狙っただけの面白おかしく書かれた記事なら手に取ってまで見ることもないのだが「実録スクープ「盗撮ビデオ」はこうして作られる。」という見出しが妙に気になり、その本を手に取りそのページを開いてみると「衝撃の懺悔スクープ黒木昭雄の怒涛の追及事件簿実録盗撮ビデオはこうして作られる!」という見出しとそこに使用されている写真に目がいった。
 
 その写真が撮影された場所は、過去に私が調査した盗撮ビデオに納められていた大阪府の北部に位置する浴場施設の一場面だった。

 その記事の信憑性を裏付けるかの様に、警察の対応や盗撮方法など、どの部分を読んでも私が痛感してきたことがそのまま書かれている。

 私と同じ意志を感じ、それを世に問う人がいたこと初めて知った。
この時、本来の目的である参考書を購入することも忘れ、私は急いで事務所に戻り、インターネットを立ち上げ、その記事を書いた著者である「黒木昭雄」というジャーナリストについて調べてみた。

検索すると、「現場警察官への応援歌捜査するジャーナリスト黒木昭雄」というオフィシャルホームページが飛び込んできた。黒木氏のプロフィールをみたところ、元警視庁の巡査部長として23年間勤め、その間に23回も警視総監賞を受賞。その後、警視庁を退職し、「捜査するジャーナリスト」として活躍する人物であること、また代表作として、「栃木リンチ殺人事件」や「警察腐敗」など多数の書籍を書かれている人物であることを知った。
巡査部長は、警察組織の階級制度において「警部」の下、「警部補」の上にあたる階級で部下である巡査や巡査長の監督や指導を行う立場にあり、警視庁管轄でもかなりの人数が居る。その中で23年間に23回もの警視総監章を受賞という経歴を持った方が、関西の盗撮事件を記事として取上げたのならば……「この人だ!和歌山県盗撮事件に終止符を打てるのは」と思った瞬間、ホームページに掲載されているメールアドレスをクリックし、感情向き出しの殴り書きに近い文章で「和歌山県の盗撮事情」や「過去の経緯」を書き送信した。

 (以下、当時のメール文 ※誤字脱字あり)
前略 黒木先生はじめまして。私は、関西の地方都市にて探偵業を営む平松といいます。今週発売された、「週刊プレイボーイ八月三一日号」にて掲載の「怒濤の追及事件簿シリーズ 実録盗撮ビデオはこうして作られる!」を拝見致しました。

本文記載の「①問題はこうしたあからさまな不法行為に警察が手を出せないでいると言うことだ」「②警察は被害者がいなければ事件にならない」の二点について私自身馬鹿げた警察の怠慢な対応と同じ事態を感じた経緯がありましたのでメールをお送りいたします。

 なぜ私がこの様な事を書くのかといいますと、約二年前の話になるのですが、当時、ある警察官の方より個人的な相談として盗撮事件が持ち込まれました。その相談内容とは、和歌山県内の某温泉施設を利用したという女性の方から、「そちらで入浴した姿を盗撮されアダルトビデオとして街のビデオ店で販売されている」という内容だったことから、対応方法に困った企業の責任者の方が管轄する警察署へ相談に伺った様です。

 その時、対応した警察は、「相談相手がどこの誰かわからない。」「その盗撮ビデオのタイトルもわからない」のでは仕方がないと相談の域に止めそれ以上対応をしなかった様です。その後、その施設を巡回に訪れた警察官の新屋氏に再度相談した結果、その事実について私の所に問い合わせが来たのでした。
 私自身、和歌山の盗撮実態に興味があり、独自の実態調査ということで調査を開始したところ、私の想像の範囲を越えた数々の事実が判明したのでした。

 その事実とは、浴場施設での盗撮の発祥の地が和歌山県であり、約数百本の盗撮ビデオが、和歌山と近郊の都市にて撮影され市場に流通している事実が判明したのでした。

 約半年を掛け市販されている盗撮ビデオを解析し「盗撮場所」・「犯罪手口」・「発売元」を割り出し、又その他情報として、犯人の氏名・入金に使用している口座と犯罪に関するありとあらゆる情報を収集した。

 本当に酷い現実を目の前にした私は、その事実を持ってS警察官 を通じ和歌山県警本部へ相談に行ったのですが県警の対応は本当に酷いものでした。

 窓口として対応した県警本部生活安全企画課のSAと言う警察官は、当初「この様な卑劣な行為は許せないので犯人検挙のため捜査には協力する」と言う返答でしたがその数日後態度は豹変し、「警察は一業者の営利の為に協力は出来ない。盗撮は被害者が居ない限り犯罪ではないので平松さんの自由にして下さい。」という信じられない回答でした。

 私はその警察官の態度に驚いただけでなく掌を返した警察の対応に不振を感じていたところ、某浴場施設へ出入りしている当社の関係者を通じ施設関係者より自分の耳を疑いたくなる様な話が飛び込んできたのでした。

 当社関係者が、浴場施設の管理責任者の方に、盗撮の実態の話をしたところ、その企業の責任者の方は「最近某所轄の課長さんが来て聞きましたよ。悪徳な興信所が、自社で撮ったビデオをあたかも盗撮犯が撮ったかの様に見せかけて、セキュリティーを売りに回っているので気を付けて下さい。近日中にはその興信所を捕まえますから・・・」と言った内容でしたから私はS警察官にその状況を伝えたのでした。

 その後事実についてS警察官が調べた結果も同様の事実が判明したのでした。 この時点で、私が盗撮の現状をお話した企業は2社その一つは、和歌山県の第三セクターでもあり、М興産が運営する、県下最大のテーマパーク内にあるKK温泉と知り合いを通じて話をしたZだけだったことから想定しKK温泉の関係者を調べたところW県警のOBが数名在籍している事が判明したのでした。

 当時の状況から、多分そのOBの地位保護の為圧力が掛かったのだと思い、私達は企業への対策防止講習という営業を中止し私らの活動に理解のある市会議員のT氏を先頭に、営利を目的とするのではない「盗撮防止条例制定」の為の署名運動展開している中で同年十月、大阪府警がW県の盗撮犯二名を検挙し、メディアを通し全国に知れ渡ることになりました。

 私は、その報道された紙面を持参しT市会議員と共に県警本部生活安全課へ出向き、「悪徳な興信所が云々の・・・」等の指示を行ったのは誰か?を確認する為、隠しカメラを持って伺ったのでした。

 私らの対応に応じた二名の役職者の内の一人が私の問いに対して「私が指示した。」等の自白したのでした。

 その言葉を聞いた私は、警察に対しての信用は完全に破綻し声を荒げてしまったのでした。 警察はなんの根拠も無く犯人を特定する証拠まで提示し告発した者を犯人扱いし、意味不明の悪態を付く態度に憤りを感じるだけでした。

 ①②にある様に、警察は本当に盗撮について被害者がいないと捜査に着手出来ないのでしょうか?現法では軽犯罪法の中である透視の刑により1万円以下の罰金以外は各都道府県条例により定められている処罰だけしかありませんが、視点を変えれば風呂場などの盗撮行為は、建造物不法侵入に該当する犯罪では無いのでしょうか?

 又この場合企業も被害者になるわけですから、警察の対応一つで正当に胸を張って被害者として警察の捜査に協力する事も可能だと思いますし企業側も裸の空間を提供する関係上、防止策をとる必要と責任もあると思うのです。でも現状の警察は目先の事件・世間の注目度の高い事件ばかりに目を向け、警察本来の姿勢を忘れている様な気がしますよね。

 最後になりますが和歌山県は先般、世界遺産に選ばれ大自然と温泉の多い町として注目を浴びる中、二年前の盗撮犯逮捕は、和歌山盗撮犯の一部にしか過ぎず、日々発売される和歌山県を舞台とした盗撮ビデオについて様々な事実を知るものとして嫌気がさしています。
 長々となりましたがもし機会があれば先生の今後の執筆活動の資料として私の持っている警察の悪態の数々(ビデオテープを含む)をお見せしたいと思いますので良ければご連絡をください。では長くなりましたが乱筆乱文をお許し下さい。追伸今後の先生のご活躍をお祈りしております。

総合調査機関 平松総合調査事務所
代表 平松直哉
和歌山県和歌山市……

 私の感情むき出しのメールを見た黒木昭雄氏から返事が来たのは、その二日後だった。

  平松直哉様
このたびは貴重な情報を賜りありがとうございました。
 盗撮取材のために何度も現場を踏みましたが、私自身いまだに驚きが覚めやらない状況です。
犯人らの驚くべき手口もさることながら、被害者が続出しているにもかかわらず、警察がいっこうに動かない消極的な態度には別の意味で強い憤りを感じます。
とくに今回お寄せ頂いた情報は被害の拡大を防止する意味で極めて重要であるのに、企業の利益を優先するために、それを握りつぶしたのですから、それだけで警察の存在意義を失うことになります。

 もし、盗撮第二段が成立するなら、私はこの部分をクローズアップして社会に問いたいと思うのですが如何でしょうか?もし週刊プレイボーイが動かないというのなら、別の媒体に話を持ちかけることも可能です。

 ともかく平松さんと直接お会いし、当時の様子を交えご意見を賜りたく考えております。
 
 お手すきの日時お時間などは如何でしょうか?
後ほどご連絡しますがご一考頂ければ幸いです。
ちなみに私の連絡先は〇九〇‐××××‐××××番になっております。
取り急ぎ用件のみの返信となりますが、今後ともご指導宜しくお願い申し上げます。

黒木昭雄拝

この時、私自身「大きな岩が動くかも・・・警察ジャーナリストとして活躍されている黒木昭雄が本当に来る」

 和歌山盗撮事件にもがき苦しんでいた時期だったこともあり、メールを頂いた翌日、私はさっそく黒木氏の番号に電話をかけた。

 電話での黒木氏は落ち着いた口調で「一度お会いしましょう。予定を立ててまた電話します。」と言って電話を切った。

 私は過去の資料を再度引っ張り出し、情報を整理した。盗撮ビデオからのキャプチャーを再度行い、自社資料と照らし合わせ一目で解る資料を作成し、和歌山県警でのふざけた対応の映像を再度確認し、私は黒木氏からの電話を待った。

 2004年9月1日、黒木氏から私の携帯に電話があり「明日和歌山に行きます。」との連絡をもらった。
私がプレイボーイを見てからたった半月で、この大きな岩が動く。そんなことを考えていると、不安と緊張からか、寝れなかった。

  そして9月2日、羽田発のANAにて関西国際空港に降り立った黒木氏と国内線二階出口にて初対面を果たした。

  緊張と込み上げる思いで待っていると、黒木氏は現れた。
黒木昭雄氏の第一印象は、雑誌やインターネットで見た写真と少し違った優しい面立ちの方であり、彼は右手を差し出し「平松さんですか、黒木昭雄です。」と。私自身、緊張の余りまともな挨拶が出来たのかも覚えていない中での対面だった。

 関空を出発した後、和歌山市内の某所にて遅い食事をとり事務所へと向かった。
 私はいつもの様に資料を出し、過去の経緯を説明し、和歌山県警内で撮影されたビデオを見せた。黒木氏は「本当、よくここまで調べましたね。大変でしたでしょう。平松さんが調査した結果はすべて正解ですよ。」と言った。

 黒木氏が、何を元として正解といったのか理解できなかった為、「すべて正解って?」と聞いてみると、私が調査した和歌山の盗撮事件と私が読んだ記事との接点について、黒木氏はすべて確認した上で会いに来たのを知ったのだった。



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