真実の盗撮事件簿 第三章 二十三盗撮統計
週刊朝日編集部の協力により、1995年以降に朝日新聞にて掲載された盗撮事件を提供頂き、その情報を元に、当会にて集計した。結果、様々な状況が判明した。
別紙添付の資料のとおり。私達は1995年から2008年までの633件の盗撮事件を「年代別」「都道府県」「盗撮種別」「職業」「年齢」「盗撮場所」「逮捕理由」別に集計した。
・都道府県別
第一位 神奈川県 51人
第二位 東京都 41人
第三位 埼玉県 37人
第四位 北海道 34人
第五位 福岡県 33人
第六位 愛知県 31人
第七位 大阪府 30人
第八位 兵庫県 25人
第九位 千葉県 24人
第十位 長野県・滋賀県 16人
・職業別
第一位 教育関係 148人
第二位 会社員 94人
第三位 地方公務員 80人
第四位 警察・検事 43人
第五位 無職 40人
第六位 自営業者 30人
第七位 自衛隊 28人
第八位 店員・職人 25人
第九位 国家公務員 23人
第十位 大学・高校生 21人
・年齢別
第一位 30代 241人
第二位 20代 171人
第三位 40代 137人
第四位 50代 45人
第五位 不明 3人
・盗撮行為別
第一位 衣類盗撮 432人
第二位 トイレ盗撮 76人
第三位 その他盗撮 55人
第四位 着替え盗撮 34人
第五位 浴場盗撮 32人
・盗撮場所
第一位 駅構内 69人
第二位 列車・バス車内 66人
第三位 スーパー・量販店 59人
第四位 学校 50人
第五位 百貨店・SC 47人
第六位 路上 33人
第七位 その他店舗 32人
第八位 民家 31人
第九位 浴場 20人
第〃位 職場(官公庁)20人
第十位 公園・イベント会場 18人
・検挙理由
第一位 都道府県条例 397人
第二位 建造物侵入 63人
第三位 軽犯罪法違反 32人
第四位 強制猥褻 10人
第五位 児童ポルノ禁止法 9人
・年代別
第一位 2007年 149件
第二位 2005年 87件
第三位 2003年 80件
第四位 2004年 71件
第五位 2006年 64件
統計資料の実数については、一メディアが報じた内容を集計した事件だけでこれだけの盗撮犯罪が行われている。分別のつく大人、それも公務員が盗撮犯罪に走る傾向が見られたのが驚きである。 では、なぜ分別のつくはずの大人が盗撮犯罪に手を染めるのだろうか。私は大型書店で、盗撮、性犯罪をキーワードに探した結果、「宝島社発行 図解精神分析今すぐ使える精神分析キーワード 六五」にて、「窃視症」という言葉を知った。
インターネットにて検索した結果、精神科医杏野丈氏の論文「別冊日本臨床領域別症候群シリーズNo.39精神医学症候群・291-293P2003」にたどり着いた。杏野氏の論文には、次のように書かれている。
「窃視症(voyeurism)とは、通常は見知らぬ、警戒してない人の裸、衣服を脱ぐ行為、性行為を見ることに強い性嗜好を有することを意味する。日本語では、のぞき見、出歯亀などとよばれ、英語では、peepers、inspectionalism、mixoscopiaなどともよばれる。窃視症を分類すると、Scoptlagnia他者の性行動を見ることで性的に興奮すること。Scopophili他者が衣服を脱ぐのを見ることで性的に興奮すること。Scoptophilia同意のある他者の性器や性行動を見て性的に興奮すること。
Troilism自分のパートナーが他者と性行動をしているのを見て性的に興奮すること。Pictophilia性的な画像やビデオを見ることで性的に興奮すること。
窃視症の病因のひとつとして現代の科学技術が与える影響について、筆者の考えを記す。現在、典型的な窃視症を臨床の場で経験することはまれである。
実際に経験するのは、いわゆる盗撮である。
盗撮行為に関しての精神医学的位置付けに関して、これまで議論はほとんどなされていないと思われるが、筆者は窃視症に含まれると考える。
知られぬように他人の性に関することを見ることに強く性的嗜好があるという、窃視症の本質的特徴を盗撮行為は有しているからである。いわば窃視症の現代版が盗撮である。盗撮が行われる背景のひとつとしては、カメラ、ビデオカメラ、ビデオの発明および機能向上である。実際に相手にわからないように撮影可能であるからこそ、盗撮は増加する。また撮影のあとで、写真、ビデオ表示、パソコン画面表示なので、再生可能なことにより、性的刺激が増大する。もう一点、インターネットについて指摘する。
インターネット上には、盗撮をはじめとする性犯罪に関するホームページが多数存在する。
そこには掲示板や投稿写真コーナーがある。このようなページ上で、同じ性嗜好を有するものとのやりとりにより、性的空想は増大し、具体性を増すと思われる。
性嗜好異常を有するものに特徴的な認知の歪みもこのやり取りにより強化されると思われる。
また、性的空想と実際の行動化には大きな開きがあるが、インターネット上の掲示板等への性的空想の書き込みという行動により、その大きな開きを縮める橋渡し役になるとも思われる。(以上、精神科医杏野丈氏のホームページ私的図書室、性嗜好より抜粋。)
盗撮犯・盗撮マニアが「なぜ、のぞき見たいのか?」という素朴な疑問があったのだが、私にとってこの論文は衝撃的だった。杏野氏の論文を拝見し、性犯罪として位置づけしている盗撮犯・盗撮マニアの性的思考を改善される方法が医学的にあるのならば、犯罪者の更生の為、法整備の中に取り入れて頂きたいものだと強く思った。
追記
統計資料は2007年代のものです。
2024年度の統計資料等は、警察庁発表の令和5年中の痴漢・盗撮事犯に係る検挙状況の調査結果と比較してご覧ください。
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/bouhan/chikan/R05-1chikan.tousatsu.pdf
現在、ICD-11・DSM-5TR(ICD は世界水準で公表されているこの世のほぼすべての疾病の診断分類、DSM はアメリカ精神医学会の出した精神障害のみの診断分類)でパラフィリア症候群 窃視症(F65.3 窃視症 人が性行動や脱衣のような私的な行動をしているところを見たいという反復又は持続する 傾向。 見られている人が気づかないように遂行され, 通常は性的興奮と自慰に発展す る。)として記載されているが、診断基準についてはDSM-5MR 精神疾患の診断・統計マニュアルやMSDマニュアルをご覧ください。
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