真実の盗撮事件簿 二一 2006年盗撮現状調査の実施
盗撮ビデオを解析する中で、「どこの浴場施設なのか」というところまで特定が出来たが、活動費やスケジュールの関係で最終の確認が取れていないところがかなりある。
その為、私のパソコンに「未確認」というフォルダを作り、仕事で近くに行った時に特定する様にしていたのだが、それは中部~甲信越~関東の広範囲にわたり多数ある。
そんな状況から、梅雨が明けてから一気に回りたいと当時の相方のM探偵社のM氏に相談をしたところ、快く承諾してくれた。
まず最初に、私は過去特定した場所で遠方のため未確認の現場をピックアップした。あそこも行きたいし・ここも行きたいと言い出すと、数十軒以上ある。
その中で、最も酷い現場だけを確認に回ることにしたのだが、それだけでもかなりの軒数ある。
その結果が走行距離2221キロ、和歌山の事務所を出て帰社するまでの約一週間で走った距離だ。過去に草津温泉や東京都内のホテル盗撮の現場を特定して以来、中部・甲信越・関東地区の現場特定は一切公開していなかったのだが、関東地区には、盗撮で有名なJをはじめとして、多くの盗撮ビデオ販売会社がある。
盗撮は、関西だけで行われている犯罪ではない。そのことを確認するため、私はM氏の協力を得て一週間で十数ヶ所を調査する強行の旅に出発することにした。
平成18年7月21日(金)晴れ
調査車両のメンテナンスをし、後部座席をリクライニングにしてその上に特注の板を敷いてベッドにして布団を積み込み、パソコン・プリンター・盗撮資料などを積み込んだ。
午後3時、和歌山の事務所を出発し、国道二四号線を東に進路をとり、奈良県の天理より名阪を利用し、道中食事・風呂をとり、目的地である愛知県のN温泉に着いたのは深夜1時を回った頃だった。
7月22日(土)晴れ
その日は海岸沿いの漁港の駐車場に車を駐車して仮眠をとり、早朝、同所の外観を撮影して回った。外観から風呂の位置、窓ガラスの形状、外壁の壁。これらすべてが盗撮資料と一致している。「間違いない」そう睨んだ私は、泊まり客が帰路についた時間を見計らって同所を訪ねたのだった。
私達の応対をしたのが、ホテル総支配人М氏と支配人のI氏だった。私達は、N海岸を見渡せる2階ロビーにて簡単な挨拶の後、調査の目的・経緯、法整備の必要性を求めている活動していることを伝えたうえで、盗撮について過去問い合わせ等なかったかをお伺いしたところ、「過去に一度、当館をご利用頂く旅行会社の方から連絡があり、「当館で盗撮の被害にあった。」という内容でしたが、詳細な状況が分からなかったのです。そこで所轄の警察の方に相談し、外部からの盗撮が行えないように防止対策をしたのですが。」と答えたので、私は同所に関する資料を支配人に見て頂くことにした。そして再度、ここに間違いがないかを確認したところ、支配人の顔が一瞬強張った。「はい、これは間違いなく当社の浴場施設に間違いがありません。」と言葉少なく答えたのだった。
そこで支配人の方が立ち合いで盗撮された浴場施設を見学させて頂くこととしたのだが、わざわざ認めているものを見学するには訳がある。それは「警察が本当に現状を把握し、企業に対し的確な対応しているのか?」という疑問が私の中にあったからだ。
実際に企業は警察の指示の通りの対策をしているのだが、所詮目先の対応しか講じていないという自信があったし、実際の犯人の手口も見ないで盗撮の対策が出来ることがないからだ。
私達は支配人に説明を受けて確認している中で、警察が言う「犯人が盗撮しているだろう」という場所からでは、映像に映るあるシーンが撮影できないことに気がついた。そこで支配人さんに、ある換気口を指差して「あの場所に行くにはどうしたらいいのですか?」と尋ねたところ、「そこはボイラー室からしか入れませんし、従業員以外は進入出来ない」とのことだったのですが、そこをお願いしてボイラー室から内部へ入れて頂いた。
ボイラー室は浴場施設の横に位置し、出入りは自由な状態である。私は支配人に案内され、ボイラー室の奥に梯子をかけて頂き、天井から室外へ出た。そして換気口の窓からカメラを入れ撮影した結果、私が睨んだとおり、盗撮されているシーンと同じ風景がカメラに映し出された。
その場所は外部から盗撮されている姿をうかがい知ることができない場所であり、盗撮犯からして最も安全な場所である。では、盗撮犯はどうしてこの場所に入ることが出来たのだろうか?
私はその状況を支配人に確認して頂き、その映像が意味することを伝え「企業努力」に期待することにし、12時30分、同所を後にしたのだった。なお、同所の映像は「N沢温泉盗撮露天風呂覗きませんか・他」の名称にて多数販売されている。
私達は、愛知県での現状確認を終え、次なる目的地である神奈川県の有名温泉地に向かった。
同所は、東海道の難所として有名な場所で、古くからの湯治場としても有名な場所である。私達は、道中本業の予定があった為、一旦富士山の外周を一周回るルートを使用し、H温泉Tに着いたのは、日が変わった深夜2時過ぎだった。駅近くのコンビニに車を停め、翌朝の取材準備をして就寝した。
7月23日(日)雨のち曇り
目覚めた私達は、コンビニで簡単な朝食を取りながら、公開情報と盗撮映像との違いがある為、事前に確認する必要があるのではないだろうか、とのことから取材前に下見調査を実施することにした。同所の開店時間を確認し、人の少ない時間を見計り、開店と同時に向かったのだが、入り口付近にはすでに数十人の客が開店を待っている状態であった。まず、私達はフロントで二人分の入泉料を支払い、店舗備え付けのパンフレットを入手し、脱衣所へと向かった。突然降り出した小雨の中、私達は別々に露天風呂内を回り、様々な角度から各自の視点で盗撮映像と類似するところを探し回った。その結果、盗撮シーンと類似するところを確認することができた為、盗撮現場と断定した。
その後、一旦車に戻ってスーツに着替え、再度責任者の方を訪ねた。私達の対応をしてくれたのは、女性の方で総括責任者のT氏だった。当初、フロントで名刺を出し、取材に参った主旨及び活動目的を伝えたうえで、盗撮資料を差し出した瞬間、Т氏が「ここでは何ですから。別の場所でお話をお伺いします。」と言い、近くにいた従業員へ指示し、泊まり客用のフロアーへ通された。しばらくして私達のところに来たT氏は、「これはうちで間違いはありませんね。」と言い、「過去、何度も盗撮している人物を捕まえました。また、悪質なモノについては警察に通報するなどしましたが、私達が捕まえ警察に引き渡しても、その数時間後には引き渡した犯人が、町を歩いているなどということもあり、今は従業員を指導するなどをして対応はしているのですが・・・」と困惑している表情だった。
実際現在の法律では、対応する法律がないのは確かだが、警察は現状を確認した後、軽犯罪や各都道府県条例や建造物侵入罪といった法律で対応する。その中で携帯やデジカメで撮影した犯人に対しては、映像を確認し、データが無ければ警告で済ますといったことも多いのは確かだ。しかし、例えば「女性が友達同士で入浴しているシーンを撮影している」フリをして他の女性を撮影していたとしても、実際分らないのが現状である。その中で、企業としは毅然とした対応をしなくてはいけないのだから、大変だとは思うのだが、顧客を守る為に努力するのは当たり前のこと。
私達は企業が盗撮犯罪防止に取り組む難しさを痛感すると共に、法整備の必要性を感じながら、「企業の前向きな姿勢が盗撮犯罪を抑止すると思います」と伝え、企業の努力する姿勢に期待し、同店を後にした。
都内「風のいたずら」
盗撮現場都内に入った私達を迎えてくれたのは、過去盗撮グループに潜入し、その手口を暴いてきた実績をもつ凄腕のプロデューサーS氏だった。S氏は一見大人しそうな感じの方だが、非常に行動力がある。盗撮犯罪に強い怒りを持ち、盗撮犯グループに潜入し、徹底的な追跡をする姿勢に、共感を持てる人物である。
今回、私達が関東県内の盗撮実態確認調査を実施するというと、某関東系盗撮メーカーJから発売されている「パンチラ盗撮」の手口と撮影場所を教えて頂けるとのこと。私は、ある意味期待していた。なぜなら過去、私達は池袋ラブホテル盗撮「JG」を元として様々な盗撮現場を暴いてきたが、パンチラ盗撮を含む衣類盗撮については、盗撮自体が他と比べると安易……普通の日常生活において写真を撮る素振りや携帯を操作するフリをして盗撮したりすることが可能であること、また場所特定が難しいことから手付かずだった。S氏と待ち合わせをしたのは、都内新宿区にある地方人の私でも知っている某ビルの裏手だった。
近隣にある駐車場に車を止め、待ち合わせの場所から少し離れたところでS氏は足を止め突然「平松さん、この場所なにか感じませんか?」と言ったのだった。「何がですか?」と聞き返すと「この場所は都内でも有数の風の通りのいい場所なんです。」と。都内にて居住している方なら、風通りのよい場所かどうかを感じるかと思うのだが、日頃から自然を感じるところで暮らしている私にとって、ピンと来なかった。S氏によると、「付近には地下鉄の通気口があり、風通りもいいことから絶好のパンチラに適したスポットだ」という。又近隣には、アニメマニアが集まる店もあることから、多くの若い女の子が集まるのだという。そして何よりも驚いたのが、一台の放置単車の前で立ち止まり、「これで撮影しているのです」と指をさした。それは50㏄の黒色の原動付き自転車なのだが、ナンバーは突いているものの、見るからにボロボロであり、荷台にはフルフェイスのヘルメットが余裕で入る大きさでしかも左右穴が開いている蓋付きボックスがあった。中を覗くと、ステ(台)らしいモノが見えた。「もしかしてここからピンホールで撮っていたのですか?」と尋ねると、「そうですよ」との返事だった。ボックスの穴の高さは、人がしゃがみ込んだときの目線の高さであり、大きさからいえばカメラ2台と電源などは十分に入る大きさでもある。また、人がカメラを持って長時間いたとしたら、不審者として通報される危険性もあるが、放置単車なら誰も警戒はしないだろうし、放置車両の反則金を支払ったとしても痛くもない。この目で見た当時、撮影方法に大きなショックを受けたのは言うまでもない。私は「今後の資料に!」と人目を気にせず写真を撮り、S氏にお礼を言うと、「実はこの近くにもう一つ、別の盗撮現場があるのですが行きますか」とのこと。
続いて案内されたのは、先程S氏と待ち合わせた場所だ。S氏は言う。「この場所はここから見ただけでも分かるように、カップルが階段のところに座っていますよね。」その一言で、パンチラ盗撮のスポットであることが分かったが、「実はここの階段から左側が公園なんですが「暗視系の盗撮メーカーR」のホームグランドなんです。それとこの場所を仕切っている重鎮がいて、一部のモノから所場代を取っているんですよ。」とのこと。都会の真ん中に、そんな手の込んだ罠があることに驚いた。その事を聞いた後、公園を一人散歩しながら見て回ると、うまい具合に木の陰に隠れたベンチがあったりと、盗撮犯の力の入れように驚いた。
その後、S氏と簡単な夜食を取り、盗撮メーカーJが経営する直営ショップ・Jの本社ビルなどを見て回り、夜9時に都内を出発した。その日、私達は黒木氏の自宅に宿泊させてもらった。(黒木氏とのエピソードもたくさんあって書きたいが・・・長くなるのでがまん、がまん。)
7月24日(月)曇りのち晴れ
午前11時頃、黒木宅を出発した私達は、次の目的地であり折り返し地点でもある茨城県の某自治体が運営管理するS湯へ向かった。同所は、民話の里の美人の湯として知られ、山間の静かな日帰り入浴施設だ。同所で撮影された映像は、小窓らしいところから脱衣所を撮影したモノが多く、詳細な手持ち情報がなかったことから、現状を確認したかったのだが、不自然な場所に防犯セキュリティーが施されていることから、盗撮防止対策の一環であることが分かった。私達はそれ以上何もすることなく、同所を後にした。 ここからが本当に大変だった。
山あり谷あり、車両トラブルは起こるわ、食事を取れないはと。今から考えれば笑い話なのだが。東北道宇都宮インターから高速に乗り、次なる目的地へ向かったのだが、途中今市市で給油し付近のコンビニ駐車場で就寝とした。
7月25日(火)小雨のち曇り
午前8時、コンビニ駐車場を出発した。険しい山道を抜け秘湯といわれる栃木県のM温泉へ向かった。同所は、渓谷が深く、谷の両側は切り立った崖になっており、清流脇に大小様々な露天風呂を並べている。十数個ある露天風呂のうち、2箇所は女性専用で、それ以外は混浴になっている。また、この場所はオリンピックメダリストが盗撮された場所として、マニアの間では有名なところである。
M温泉は、民間のホテルが経営しているので、先に現場を確認することにした。ホテル建物の横を抜け、自動券売機で入浴料を支払い、プール様な脱衣所で着替えると、目の前は盗撮映像で何度も見た場所であり、確信を得たのは言うまでもなかった。そこで一度服を着て施設のフロントに向かい、調査の主旨を伝え「責任者の方に話をしたいのですが。」と尋ねたところ、出張のため不在とのことだった。仕方ないので、盗撮犯罪についての冊子と名刺を渡し、その従業員の方に盗撮についてお伺いしたところ、「盗撮騒ぎは過去何度かあったとは聞きましたが、私が来る前のことなので」という回答だけ。それ以上の情報はないだろうと判断し、同所を後にした。
その後、次なる目的地である群馬県の某自治体が運営管理するTへ向かったのだった。最初に、同所の盗撮映像を発見した時、そのシーンは雪の降る中を20代前半と思われる女性が階段を下りてくるシーンから始まった。その後、カメラは雪のちらつく中を湯船に浸かる女性達を追った。その時だった。施設のタオルを広げ、体に当てた瞬間施設の名前がハッキリと見えたことから特定に繋がったのだが、公開されている情報と少し違った為、先日の神奈川のH温泉の時と同様に、先に入浴し現状確認をすることにした。
脱衣所で服を脱ぎ、現場特定用のカメラを持ち浴室を通り抜け露天風呂に向かうと、階段を下りたところに露天風呂がある。裏は、山間の斜面であることから隠れて撮影するにはもってこいの場所だ。露天風呂に浸かり、装備品らの位置関係を確認していくと、若干違ったのだが、盗撮現場にはよくあることだが気にせず、責任者に会いに行った。
何時ものように身分を明かし、主旨を説明したところ、管理人のご夫婦は盗撮の事実を認め、「この写真の場所はここで間違いはありません。」とあっさり認めた。また「盗撮の被害については警察にも相談しているのですが、本当に対策は難しいです」と心境を語った上で現状行っている対応等の説明をして頂いた。その中で、「法律がない中で管理する側の苦悩」と「観光地という場所柄、景観を崩すことなく対策を取るための方法を管理者と町が一体となって協議している」とのことから、草津温泉の例を交えて対策についてお話をさせて頂き、同所を後にした。
午後3時、同所を出発した私達が次に向かったのは、伊香保町が運営管理する町営の露天風呂だ。先に記載した中に伊香保温泉と同じく行政が運営する施設があったが、盗撮犯罪対策に前向きな姿勢を感じたことから特定できる名称や人物名等は伏せてはいる。だが、伊香保は別だ。
私達が伊香保町に着いたのは夕方5時45分頃だったことから、入浴をせず、直接施設の方に声をかけ、私達が訪ねた主旨を伝えたところ、「その様な話は町に言ってほしい」との事だった。時間も時間だったことから、伊香保大露天風呂から運営管理する町へ電話をかけて頂き、担当者に替わって頂くことにした。その電話に出た観光協会主任の田中という男性は、「盗撮がどうかは知らないが関係ないことだし、時間的に誰も連絡が取れない中で応対は一切出来ない」とのことだった。こんな対応の施設は過去沢山見てきただけに、食い下がって話をしたが、一向に取り合おうとしないばかりか、「もう私も就業時間を過ぎていますので。」というもの言いに、呆れてしまった。
埒が明かない電話を延々と続けているほどこちらも暇を持てあましている訳ではない。そこで一度電話を切り、施設関係者の男性に映像を見せ、同所かどうか確認したところ、「このロッカーキー・浴場の形状のどれをとってもここだとは思いますが、私の立場がありますので。お答えできませんので、ここから一度見て、自身の目でご確認ください」と、管理事務所の窓から露天風呂を見せて頂いた。100%間違いのない。その後、私達の主旨を伝え、アンケート用紙と盗撮の現状等について書き留めた冊子を渡し、施設の責任者の方から連絡を頂けるよう頼んだのだが、伊香保町からの連絡はその後一度もない。
午後6時20分、伊香保町を出発した私達は草津町へ向かった。午後9時、草津町着。食事を取り、外湯を数件周り、草津町内のコンビニの駐車場で仮眠を取った。
7月26日(水)晴れ
朝早くに起き、西の川原大露天風呂にて入浴しながら、M氏に以前取材に訪れた時の状況を説明した。
その後、施設の管理者の方に「以前取材の時に撮れなかった防犯機器の映像を撮らせて下さい」と申し出たところ、快く了承を頂き、係の方と共に裏山を撮影させて頂いた。その後、小林 支配人を訪ねた。
突然の訪問だったのだが、私達を気持ちよく迎え入れて頂き、約30分程だったが、盗撮犯罪について意見交換をさせて頂き、同所を後にした。
その後、晴天の中、草津温泉から次の目的地である長野市内にあるH温泉へ向かう途中突然車内に焦げ臭い臭いが立ち込めた。
和歌山を出る前に車検を出ししてからのツアーだったため、不良箇所はすべて交換している。山道続きだったからかは知れないが、白い煙が車内から確認が出来た。急いで車を止め確認するが煙の元が確認できず、場所は山の中で携帯は圏外。仕方ないので「走行が出来る限り走ろう」という事になり、内心ビクビクしながらの走行となった。
途中、ピットに電話を入れるため絶景の景色で有名なMホテルで休憩を取り、ピットに電話で状況を説明したが、「その様な不具合が出るような事はないんだけど……」との事だった。万が一停車したときのことを頼み、引き続き確認調査を続行することにした。
「せっかくだから、インターネットの掲示板で盗撮場所として名前が上がっていたMホテルで入浴し、今後の資料としよう」と決め入浴料を支払い、露天風呂に向かったところ、浴室へ続くドアに「露天風呂でのカメラの使用を禁止します。」との張り紙を確認した。露天風呂へ出た途端、私の目に飛び込んできたのは、海抜1800メートルから見渡す絶景。晴天の中、全身で感じる爽快感は言葉では言い表すことが出来ない。この開放感に旅の疲れを忘れ、湯に浸かった。ただ本当に悲しいことに、それはこの気持ちをぶち壊しにする猥褻な犯罪が存在するという事実を確認するために、私達がここにいるという現実だった。そこで、意を決してMホテルにもお話をお伺いすることとした。
私達の対応をしたのは、宿泊課長代理のY氏という方だった。私達は、簡単な活動主旨を伝え、なぜこの場所に来たかなど当たり障りのない話から、浴場施設へ向かう途中見たカメラお断りのポップへと話を替えたところ、「盗撮はいつ起こるか分からない犯罪ですし、当館を利用して頂けるお客様同士が安心して利用して頂けるよう貼っているのですが。」とのこと。私は「盗撮犯罪を守る最善の方法は、管理する方が、絶えず意識を持ち盗撮犯罪に背を向けることがないことが一番だと思います。」と言った話をし、同所を後にした。
その後、長野市入りした私達は、本日の最終目的地であるH温泉Kの湯についたのは、午後4時30分頃だった。H温泉Kの湯は、民間の日帰り入浴施設なのだが、同所での盗撮映像は大量にある。また、少し前の話でもあるが、芸能人のSが盗撮されたのもここである。私達は、自動券売機で入泉料を支払うと500円玉ぐらいのコインを受け取り、ゲートに入れて中へ入った。
男風呂の暖簾をくぐると、洗い場があり、その奥に露天風呂がある。その風景は、盗撮映像で見たそのまんまの状態が私の視界に飛び込んできた。同所は、関東系盗撮グループ・東海系盗撮グループが撮影している場所である。
私達は入浴を終えて一度車に戻り、同所の資料を持って再度訪れた。
責任者という初老の男性に活動の主旨を伝え、同所での盗撮の実態を告げると「うちは関係ない。盗撮された者が悪いんだし、文句があるなら販売しているところへ言え!」という言葉が返ってきた。カチンときた私は、「この施設を利用した多くの子どもも被害に遭っているんですよ!」と強い口調で言うと「そんなの関係ない。お前らにとやかく言われる筋合いはない。文句があるなら警察でもどこでも行け」という呆れた対応にはらわたが煮えくりかえる思いで同所を後にした。
管理能力ゼロが生んだ結果がこの膨大な量の盗撮であることを痛感した。過去、和歌山のKK温泉・スーパー銭湯Uと本当に寝ぼけた施設は多数あったが、ここの施設ほど頭に来たところはない!同所を後にした私達は、夕方から降り出した小雨の中、最後の目的地である岐阜県奥飛騨にある数件の露天風呂へ向かった。
奥飛騨に着いたのは、夜11時前だった。近隣には飲食店すらなく、一旦穂高まで出てコンビニで食料を買い込み再度、目的地の近くに車を止め就寝した。
7月27日(木)
早朝、寒さから目が覚めたのが6時頃だったと思う。閨のかかった山が何とも言えない心地良さを感じながら、露天風呂2件写真撮影する為、カメラを手に現場を確認し、写真・映像を数十枚撮影し、近隣にあるもう1件の露天風呂へ向かった。そこでも先と同様に、写真だけを撮影した。
午前7時半頃だったかな。約一週間をかけて調査取材をすべて終了。その後、ご褒美に飛騨牛のステーキを食べ、打球高山市内を観光し、午前11時頃高速に乗り一気に和歌山へ向かった。午後4時10分事務所着。私達が約一週間がかりで実施した「2006年現場確認調査」の走行距離は2221キロ。無事終了したのだった。