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販売の経験で見えてきた、コミュニケーションデザイナーの役割

こんにちは!
Timee Product Advent Calendar 202411日目担当のコミュニケーションデザイナーのyashikiです。

私は今年の3月にタイミーへ入社したタイミングで、制作会社のデザイナーから事業会社のデザイナーにキャリアチェンジしました。そして肩書きもグラフィックデザイナーからコミュニケーションデザイナーに変わり「事業会社におけるコミュニケーションデザイナーの役割って何だろう?」と日々考えてきました。

アドベントカレンダーの記事を書くにあたり、これまでのデザイナーとしてのキャリアを振り返る中で、デザイナーになるさらに前のキャリアまで遡り気づいたことがあります。

デザイナーになる以前、私はアパレル企業で販売員として働いていた経験があります。その際に身につけた接客のコツやスキルは、今のコミュニケーションデザイナーの役割と共通する部分があるのでは?ということです。


販売員がブランドの顔だった時代

私が勤めていたのは新宿の一等地にある百貨店。百貨店という環境柄、目的のものを買うために来店される方よりも「心地の良い接客や販売員の提案を楽しみに来店される方」が多くいた印象です。
それは販売員の視点で捉えると「商品やブランドの価値に魅力を感じてくだされば、目的以外の商品も購入してもらえる」という接客のスキルを磨くにはとても恵まれた環境でした。

当時、EC販売もあったものの今ほどネット販売が当たり前ではありませんでした。「販売員はブランドの顔」と言われるほど、店頭での売り上げが重視され、会社からは単発的な売り上げを追うのではなく新規顧客を獲得する、すなわち「ブランドのファンを一人でも多く作る」ことが求められていました。

振り返ると、この経験はブランディングを担うコミュニケーションデザインそのものだったと感じます。


接客とコミュニケーションデザインの共通点

販売員としてお客さまの心を掴むには「短い時間でニーズを引き出し、信頼関係を築くこと」が欠かせません。これはいわば心理戦です。

一方コミュニケーションデザインも「伝えたい相手やシーンを深く理解し、感情を動かし行動に促す」という点で人の心理を理解する必要があり、接客との共通点があることに気がつきました。

今回は大きく3つの共通点とデザイナーとしての気づきを紹介します。


1.言葉にも宿るブランドの世界観

・接客では
「ブランドのファンを増やす」という使命を持って店頭に立つ販売員は、服を販売するだけが仕事ではありません。スタイリングやメイクだけでなく、言葉遣いや話し方まですべてがブランドの世界観を作ります。ファン作りのために、販売員が服の魅力・ブランドの魅力を体現することが求められます。

そんな中でも、大学を卒業してすぐの当時の私には言葉遣いや話し方には特に意識が必要でした。百貨店のお客さまは様々で、富裕層の方も少なくありません。ブランドだけでなく百貨店全体の世界観を体現する存在としての立ち居振る舞いが求められます。

その一方で、例えば、娘のように接してくれる年の離れたお客さまや、逆に同世代のお客さまに対して過剰に丁寧な振る舞いをすることで距離感を作ってしまい、会話が弾まなくなるということもしばしばありました。
同じ丁寧な振る舞いの中でも、相手によって言葉遣いや話し方のグラデーションをつけ適切なコミュニケーションスタイルを選ぶことは、関係性の構築やブランド全体の印象に大きく影響することをその時学びました。


・コミュニケーションデザインでは
これは、コミュニケーションデザインでいうところのライティングやフォントの要素と同じだと感じます。

タイミーのワーカーは10〜60代以上まで幅広く、学生、正社員の副業、主婦などライフスタイルは様々です。伝える相手や伝えたいメッセージによって、言葉遣いやトーンを変える必要があります。
また、グラフィックにおける言葉遣いとは単にライティングのことだけではなく、フォント選びやそのフォントのカラーも言葉遣いを表す要素の一つです。

言葉遣いもユーザーの体験に直結する役割を担っており、ブランドの印象を大きく左右するもの。一貫したブランドアイデンティティの中で、グラデーションをつけることの重要性を改めて感じました。


2.顧客体験をデザインする力

・接客では
接客で特に重要なのは、お客さまの観察とニーズの引き出しです。
何か目的のアイテムを求めて来店されているのか、もしくは何も目的はないけど良いものがあれば買うつもりで来店されているのか。仕事の話や休日の話などを交えながら、会話の中でお客さまのライフスタイルを引き出す、といった会話のテクニックが販売員には欠かせません。

会話の中で得られたお客さまのニーズに合わせて、コーディネートの提案や類似商品の提案などいくつかの選択肢を提供することで、お客さまにとって豊かな買い物体験になる。そして、その体験が信頼関係を構築し、ブランドのファンへとつながります。

まさに「ユーザーにとってのより良い体験をデザインし、ブランドのファンになってもらう」という点は、コミュニケーションデザイナーの大きな役割です。


・コミュニケーションデザインでは
タイミーは、「物流・飲食・小売・ホテル」といった多様な業界の事業者に利用されています。そして、規模感やタイミーを利用する環境や抱えている問題は個社ごとにそれぞれ異なります。そして事業者の抱えている問題は顕在的なものであり、課題の本質は別のところにある可能性があります。

事業者や担当営業の方から依頼されたものをそのまま作るのではなく「事業者が抱えている問題の本質は何か?」と一度立ち止まることがデザイナーにとっては必要不可欠です。
事業者の話を伺ったり現場に行き環境を知ること、事業者側だけでなくそこではたらくワーカーの視点に立つことで、本質的な課題が浮き上がってくるものだと思います。


3.感情を動かし、行動を促す

・接客では
アパレル販売ではお客さまに「試着してもらう」というのが購入につながる大きな一歩です。

「試着する」という行動一つをとってもポイントになるのが、販売員から試着を促すのではなく、お客さまが「試着したい」と自ら行動してもらうことが大切になってきます。
販売員に促されて試着するのではなく、自分から試着することにより購入意欲が高まり最終的な購入につながりやすくなるという点があります。さらに、試着をお客さまが意思決定してくれることで、販売員に促されて試着するよりも自ら選んだことが心地良さにつながり、より良い買い物体験になるのです。このスキルは一番難しいところですが、一番接客のおもしろみを感じられるところです。

接客の際に試着に促す方法と、その時のお客さま心理(自分の買い物体験)を思い返しながら言語化してみました。

お客さまが気になるシャツを自身に合わせて鏡で見ている際、販売員はラックからボトムスを取り、シャツを合わせて鏡を見ているお客さまにボトムスを合わせます。その際、お客さまが着ているボトムスとは違うアイテムを合わせるのがポイント。(スカートを履いていればパンツかシルエットや色味の全く違うスカート)
すると、お客さまは自分が似たようなボトムスを持っていることを思い出します。さらにそれ以外にクローゼットの中にあるアイテムの想像が膨らみ、コーディネートを思い浮かべ、着用シーンが想像できてくると「試着してみたい!」となります。

この「感情にアプローチすることで、ユーザーの行動を促す」という点がコミュニケーションデザイナーの本質なのでは?と以前からぼんやりと考えていましたが、自身の経験を思い出したことでその考えがより明確になりました。


・コミュニケーションデザインでは

コミュニケーションデザインでもアパレル販売における試着と同じように「ユーザーの心理に働きかけることでユーザーが自ら意思決定し行動する」ことが重要だと思っています。

アパレル販売では「アイテムを合わせてコーディネートを想像させる」ことが「試着」という行動につながります。それをタイミーに置き換えると例えば「自分のライフスタイルに合う働き方を想像させる」ことで「タイミーではたらく」という行動につながります。

「行動に促すためのコミュニケーション」が接客とコミュニケーションデザインの大きな共通点であり、タイミーに愛着を持ってくれるファンを増やすためにも、とても大切なポイントだと私は思っています。


まとめ

キャリアを振り返る中でふと思い出したアパレル販売員の経験が、コミュニケーションデザイナーの役割への理解を深めてくれました。

ブランドやサービスとユーザーが接するすべてのシーンで、「ユーザーにとって良い体験につながるよう、体験全体をデザイン設計していくこと」が、コミュニケーションデザイナーの役割だということが、より明確になりました。

そしてタイミーに置き換えてみると、その体験のデザイン設計がされることで以下のような循環を生むことができます。

1.本質的な課題を捉えることで「事業者の課題が解決される」
2.ワーカーの良いはたらく体験につながり、また「働きに来てくれる」
3.その結果、事業者の「人手不足が解消される」
4.タイミーでの求人が増え、「働き手が増える」

事業者とワーカーの双方にタイミーの体験価値を届けこの良い循環を生む。タイミーのコミュニケーションデザイナーとして、この循環を日本中に広めていきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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