焼肉のこと
肉食系なのでかなりの頻度(数時間ぶり、あるいは数分ぶり)で「焼肉を食べたい」と考えて過ごしている。
それは誰かにとっては同情すべき精神状態なのかもしれないが、これが私にとっての常だからとっくに慣れてしまった。私という生き物はステーキ食べたいと焼肉食べたいを交互に考えるものだと受け入れているので、不便を感じる事もない。
そんな私の欲求に、大人になってから付加された要求がある。
「【○○さんと】焼肉が食べたい」
大人になってから、【誰と食事をするか】は、とても大切なことだと学んだ。それまでは食事なんて気心の知れた人としかしてこなかったが、社会人になると状況が変わってくる。
上司、友達が紹介したいって言って会わせてきた恋人(つまり知らん人)、友達の友達、気を遣いながら食事を口に運ぶ機会が増えた。
座る場所、頼むものの金額、喫煙者の有無、酒周りの気遣い、お会計の攻防、びゃんびゃんと運ばれてくる小食には厳しい量のコース料理、とにかく気にしなきゃいけないことだらけで、だけどそれが大人になるということだと思い、普段の私はそんな状況を社会人として受け入れている。
私の、この特定の誰かと食事をしたいという欲求について、きっと理解してくれる人もいるだろう。その人達の多くは、きっと大人だと思う。
妄想したことがある人もいると思う。
子供がヒーローになることを夢見て空想に耽るように。
中高生が恋に恋して想いを寄せる誰かを思い浮かべるように。
食の趣味と、気と、価値観と、金銭感覚が完全に合って、自然体でいれる飲み友達が欲しいな
と。
ちなみに私は飲めないのでほとんど飲まないが。
要は同じものを食べて同じレベルで美味しいねって思ってくれて、また一緒に来ようなって思える、そんな最強の食事仲間が欲しい、そんな風に考える疲れた社会人は結構いると思う。
私は焼肉が好き。そして、小食故に、わりと高いお店に行くのも怖くない。どうせすぐお腹いっぱいになるので。
相手がビールを飲むのはいいけど、お前も飲めと言われるのは大嫌い。タバコとコーラが大好き。焼肉食べるときに米を注文することにケチ付けてくる奴はカルビよりも先に焼きたくなる。
普通、こんな私と気の合う女なんて居ない。だけど、私は出会ってしまった。そして肉友として、たまに一緒に食事している(なお関西-関東)。個人的に、肉友を見つけるのは、恋人を作ることより難しいと思ってる。大人をやってからもう何年も経つけど、肉友なんてほとんど思いつかない。
だから、私は「○○さんと焼肉食べたい」と考えるようになった。
「だから僕は音楽を辞めた」みたいでちょっと笑ってしまったけど、事実だから仕方が無い。多分、考えたってわからないし、看板の下で君を待ってる(替え歌やめてね)
9割は本当に本能的にただ肉が食いたいだけなんだけど、というかもっと言ってしまえば美味い肉を無理やりコーラでグイと流し込みたいだけなんだけど、もう1割はそれをするなら○○さんと一緒じゃなきゃと思っている。
最近、コロナであまりにも会えないので(前は月1くらいで会ってた)、自分の気持ちを紐解いてみることにした。いや、そんな明確な意思を持ってやったことじゃない。
たとえば編み物をやっていて、「これを解して、あれにリメイクしてやろう」みたいなしっかりとした目標を持っていたわけではないというか。ただ、服の裾がほつれていたのでなんとなく引っ張ったみたいな、そんな気持ちで私は自分のこの欲求を見つめ直すことにしてみた。
天才なので数秒でそれは完了した。
私はその人に話を聞いて欲しいし、その人の話を聞きたいし、お互いに大好きなものを食べながら最近起こったことや感じたことを共有したいんだろうなと思った。
だから焼肉じゃなきゃ駄目だし、その人じゃなきゃ駄目なんだろうなって。
というわけでそろそろ限界です。
何頼むー?って訊いて「食べられる量の好きなものを頼めよ」って言われたいし、最後の一個になっても譲り合ったりなんてせずに「まだ食べたかったからまた頼みなね」って声をかけたいし、美味しそうに焼けた肉をタレの入った小皿の上にヒョイってやりたい。
ユッケの美味さに感動して「もう1個頼む」って決めたいし、なんなら最初から2つ注文してなかったことを後悔したいし、「いま何時!?」って時計見て「まだ終電全然大丈夫じゃーん」って安堵したいし、締めにホタテのバター焼き食って「人生」って呟き合いたい。
う……。
うおーーー!
サポートして下さったらそれは全て私の肉代に消えます。