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「テラさんは筆を折った」と言ったのは誰か②

鈴木伸一

ラーメン大好き小池さんのモデル
寺田ヒロオ、藤子不二雄に続いて、漫画家を目指しトキワ荘の住人になるが、徐々に目指す道が漫画からアニメに移り、トキワ荘を出る。

「いくらテラさんが子どもたちにとってよくないと言ったって、編集部としては、そのマンガの連載をやめることなどできない。だったらば、自分がやめる、と筆を折ってしまったんです」

【下山進=2050年のメディア第9回】寺田ヒロオを探して トキワ荘 悲劇の漫画家 より

鈴木伸一がこう語ったと書かれているが、これはなんとも随分ふんわりしているというか、具体的な描写のない話だ。

しかもここで問題なのは、この筆者下山進自身が『テラさんは、30代で自ら筆を折ってマンガ家を廃業してしまう。』という前提ありきで話をすすめているところだ。

というか、鈴木伸一がここで語っているのはまさに「まんが道」のテラさんのストーリーそのままではないか。(「まんが道」のストーリーがそのまま事実ではないというのは以前に書いた

この文章の初出は週刊朝日 2022年9月16日号なので、その頃インタビューした内容だと思われる。

鈴木伸一は、2009年の寺田ヒロオ全集刊行の際に収録されたインタビューではもう少し具体的に述べている。

最後には描かなくなって部屋に閉じこもってしまった。寺さんは描きたいという気持ちは有ったらしいのですが、ずっと休んでいるとどう描いていいのか分からなくなったんじゃないのかな。

スポーツマン金太郎〔完全版〕 第一章【上】(マンガショップシリーズ 294)収録
「鈴木伸一インタビュー」より

描かなくなった」と言ってはいるものの、「描きたいという気持ちはあった」という風に寺田ヒロオの気持ちを慮っている。
決して「自ら筆を折った(絶筆した)」というようなニュアンスのことを言ってはいない。

ずっと休んでいるとどう描いていいのか分からなくなったんじゃ」という発言は、鈴木自身の実体験、実感のこもった言葉のような気がする。

鈴木自身、アニメーションの道を歩み、長いこと漫画を描いていなかったが、「まんが道」が連載され、トキワ荘ブームが起き、トキワ荘&新漫画党メンバーとして何十年ぶりかに漫画執筆を求められることが何度かあったことだろう。
久しぶりにいざ漫画を描くとなっても、どう描いたらいいのか苦戦した思いが鈴木にもあったのだろう。

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