「テラさんは筆を折った」と言ったのは誰か③ 石森章太郎の場合

石森章太郎

本名 小野寺章太郎
宮城県出身。出身地の石森(いしのもり)から石森章太郎と名乗るが、「いしのもり」ではなく「いしもり」と読まれてばかりのため、のちに石ノ森章太郎にペンネームを変更。
地元宮城にいた頃から若くして漫画の天才と言われ、高校在学中に漫画家デビュー。
寺田ヒロオに誘われて上京し、トキワ荘入居、新漫画党に加入する。
代表作は「サイボーグ009」「さるとびエッちゃん」「仮面ライダー」など

寺サンの“絶筆宣言”は、ショックだった。漫画が、段々ひどくなる。もう描きたくない。それが理由だった。

「章説・トキワ荘・春」(1996.4.1)より

藤子不二雄A(安孫子素雄)は、『突然のリタイヤについて寺さんは、ぼくたちに一言もいいませんでした』と書いていたのに、石森はまるで本人から“絶筆宣言”を聞かされたかのように書いている。

果たしてそんなことがあるだろうか。
藤子不二雄の二人は石森よりも先にトキワ荘に入居し、その分少しだけ付き合いもながい。
安孫子の言う“ぼくたち”というのも、藤子不二雄の二人というより、石森や赤塚も含むトキワ荘のメンバーのことだと考えた方が自然な気がする。

もしかするとだが、石森は寺田ヒロオのもらした愚痴のようなひとこと、「もう描きたくない」といったニュアンスの言葉を聞いて、それを“絶筆宣言”と受け取ってしまった。
そういう風には考えられないだろうか。

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