JP : ハヌマーン
舞台は大阪。
山田亮一というフォークシンガーが暮らしていた。
彼を中心にハヌマーンというスリーピースバンドを結成。
ハヌマーンでの彼の作詞作曲に出逢っていなければ、今現在の私は存在しない。それほどまでに影響をされたし、ルーツ的である。
常に愛を
常に希望を
常に涙を
常に笑顔を
常に音楽を
常にビートを
常に歌を
常に届くように
リボルバー - ハヌマーン
私は中高生の頃、群馬の実家にあったパソコンで、YouTubeから日本のインディーバンドを掘り漁っていた。
当時の私の着目点は、演奏力や歌唱力よりも、作詞だったから余計に刺さった。
息が詰まるほどの素晴らしい人間味を味わせてくれる歌詞がある。
昔から私は個人的に、歌詞において言い得て妙な比喩やスケール感の提示に興味を示した。
なんにせよ、ドンピシャだった。
彼女の寝息を確かめたあと
部屋を出て夜を吸い込んで
戦争が起きたらどうしようとか
脈絡のないこと 考えてた
誰も知らない所で
虚しく色を変える夜の信号は
まるで今の自分そのものだった
もたげる首の角度まで同じだった
古い人形抱いたまま眠って
目が覚めたら彼は部屋にいなくて
浴槽のお湯流したっけだとか
明日の朝食のこと考えてた
守られるか無視される以外には
用途のない夜の信号は
ああなりたくないと思う女子そのものだった不憫そうな姿まで同じだった。
この曲は、男性目線と女性目線で歌詞が書かれている。もはや、小説的であるのだ。
例えばその薄汚れた人形
ボタンの目でいつも君を見てる
君の薄汚れた人形
毛糸の唇で笑っているよ
所詮中身はスポンジと綿だし
涙ぬぐい取るそのオンボロみたいに
僕はなりたい
ハヌマーンは2000年代、日本ギターロックシーン界隈の中で、最も斜に構え、アンダーからオーバーを狙っていた人達だったような気がする。
liaroid cinema(大阪)
アルカラ(兵庫)
クリープハイプ(東京)
wienners
新世界リチウム
などなど、癖のある作曲家が多く活動していた時期であったし、バンド同士のぶつかり合いも見ものだった。
彼の皮肉な歌い回し、ジャキジャキのテレキャスター。爆音のファズ。
手数の多い、疾走感を巧みにコントロールするドラムス。
リッケンバッカーをピック弾きでゴリゴリに歪まし、フレーズを弾きまくるベース。
それに伴うかの様に、尖っていく歌詞、変拍子。
歌々しい曲が私は好みだが、彼らはエグ味のある鋭い演奏をする楽曲も多い。
その印象が異物の様に耳の奥底に残り、溜まっていく。
忘れられなくなる。
『Fever biliever Feedback』
彼らの渾身の一曲。 スロットの曲
ボウフラやアメンボの如く 誰もが夜を這いずる存在
CR人間模様 ABOで片付く人格
ライブ後半では強烈なバラードが顔を出す。
明日どれだけ面倒でも
部屋の掃除をきちんとするよ
たまった洗濯物も干して
あなたを思って言葉を書くよ
暮らしがどれだけみすぼらしくて
維持するだけで目が回っても
ただ受け容れるだけの掃除機と
回り続ける洗濯機のように
好きな歌など聴けなくても
会いたい人には会えなくても
行きたい場所には行けなくても
黙って全てを受け容れるから
そしたらまだ
人間でいられるんかなぁ?
母さん
ボブディラン的なマインドを感じる。
身体の奥、一人の感覚に近いところで、言葉をキャッチする。
彼らはどこの事務所にも所属せず、全国区のバンドになっていった。
注目が集まり、バンドが上昇気流に乗る頃の2012年、解散を発表。
メンバー間の不仲と噂が立ったが、本当のところはわからない。
同年大阪、天王寺Fireloopにて解散ライブを実施。
当時、高校生だった私は金銭的に行くことができず今もなお、後悔の念を覚えている。
踊れ文系男子、演奏ハヌマーンで『ワンナイトアルカホリック』
解散後、現在に至るまで、ハヌマーンというバンドの存在は日本のギターロック界に影響を与え続けている。
ナンバーガールから、ハヌマーンが産まれ、ハヌマーンからまた、たくさんの作曲家、シンガーが産まれている。
他人の人生を変えてしまう力がある。
山田亮一本人も、音楽に人生を変えられた人だと思う。
こうやって、音楽は繋がっていく。
解散同年に
山田亮一は、別メンバーとスリーピースバンド
バズマザーズを結成する。
が、この話はまたの機会で。
書きたいことがありすぎてまとめるのは無理。
最後に一つだけ。
1st albumの1曲目、革命にふさわしいファンファーレからラストの歌詞
明日は明日の突風が吹いて
砕け散った夢を吹き飛ばして
手相を晒す俺に言ってくれよ
「ご名答!時間は戻りゃしないよ。でも、そいつを浪費してんのはお前だろう?
中学の時の歌のテスト、女子の前走る50m、半端な自我の檻の中で
初めから本気じゃなかったみたいな面で、感動を遮断してんのもお前だろう?」
MK D