見出し画像

インフォーマルな科学教育


■□□はじめに

本記事は 2020年7月24日に行われたScience Education Book Club in Japan の活動をまとめたものです。

今回私が担当したのは、「Values in Science Education: The Shifting Sandsの「Changing Values in Science Education and Emergence of Science Galleryについてです。簡単な本章の説明と読書会のメンバーで議論を重ねたことについてを紹介していきます。


■□■Science Galleyについて

スクリーンショット 2020-08-14 9.27.02

 本章の著者やその関係者達が、アイルランドにあるダブリン 大学の敷地内にサイエンスギャラリーという施設を立ち上げ、科学芸術を組み合わせた展示を行っているそうです。

 サイエンスギャラリーの展示物は、数ヶ月ごとに変わり常設展示がありません。また、15~25歳の若者をターゲットにしており、とてもおしゃれ (映え)で洗練されています。そして、Twitter、Instagram、YouTubeなどのさまざまなメディアを通して若者にアプローチしています。このように、科学と芸術を組み合わせることによって、若者のインフォーマルな学習への参加を拡大する方法に取り組んでいます。

詳しくはサイエンスギャラリーのHPを参照ください。過去の展示物や取り組みを見ることができます。


■□■「科学と芸術」のSTEM分野への可能性

 STEM分野へ進む人を増やすことは、日本だけでなく世界的に重要な課題とされています。このため、もともとSTEM分野に興味がある層だけでなく、興味が無い層にもアプローチする必要があるといえるでしょう。

 科学芸術には「美しさ」に対する感性創造性、コミュニケーションといった共通点があります。この両者を組み合わせるねらいとして、STEM分野に対する関心の低い若者に興味を持ってもらうきっかけを作ることが挙げられます。

スクリーンショット 2020-08-15 12.50.57

 科学芸術を組み合わせたサイエンスギャラリーの取り組みは有益な示唆を与えてくれます。例えば、サイエンスギャラリーは「Science Learning+」の共同研究を通してインフォーマルな科学教育の研究を行っています。また、Science Learning+は国際的に学校内外でのインフォーマルな学習体験に力を入れています。このような取り組みは、STEM分野へ進む若者を増やすことやSTEM分野に興味が無い層にもアプローチする方法として期待されることでしょう。さらに、このような取り組みを行うことにより、科学に興味・関心をもつ学習者を育てることにも繋がり、これから様々な職業に就くであろう若者にとっても知識やそれに付随するスキルを身に付けることが期待されています。

 サイエンスギャラリーのような取り組みは、若者の「科学」に対する興味のきっかけとして有益な示唆を与えてくれます。しかし、今回の議論において、サイエンスギャラリーの取り組みに関わらず、たとえ若者が「科学」に対して興味をもったとしても、そこから「学習」へ繋げるにはまだまだ課題がある、といった指摘も出ました。この指摘についてはまだまだ議論の余地がありそうです。


■□■今後のインフォーマルな科学教育を考える

 さらに、読書会の参加者の議論では、日本におけるインフォーマルな科学教育は今後どうあるべきかについて意見が交わされました。

 インフォーマルな科学教育として、科学館や博物館などの公共の施設の利用はもちろん、youtuberのような発信力のあるクリエーターや漫画、アニメもこれらから含まれてくるのではないかといった指摘もありました。科学教育の学習の場として公平性を考えたとき、クリエーターの活動や漫画、アニメは地域や場所を問わないため、新たな方法の一つとしてなり得るかもしれません。

 また、これからの社会はインターネット上で誰もが発信者になれる時代になりつつあります。このため、フォーマルとインフォーマル教育の境界線が薄くなってきているといった意見も出てきました。


■□■まとめ

 今回の読書会では、インフォーマルな科学教育について読書会のメンバーと議論を行いました。

 今回の議論において、インフォーマルな科学教育の学の場として、アイルランドのサイエンスギャラリーの取り組みや、科学館や博物館などの公共の施設の利用はもちろん、今後期待される方法として、クリエータの活動や漫画、アニメなどが挙げられました。また、このような既存の方法と今後期待される新たな方法の共通の課題として、たとえ若者が「科学」に対して興味をもったとしても、そこから「学習」へ繋げるにはまだまだ課題があることが挙げられました。


 ここまで読んでくださりありがとうございました。今後さらにこのような議論を進めていくためにもコメント等くださればと思います。


□□■謝辞

議論に参加していだいた中村大輝さん、雲財寛さん、小林和雄先生、渡辺理文先生、ありがとうございました。


□■■付記
画像について:Designed by Freepik

いいなと思ったら応援しよう!