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一眼レフのレンズのカビ取り

しばらく放置していた一眼レフですが、使う機会もめっきり減ったので売ってしまおうかと思い、動作確認のために持ち出して、晴天の中で空の青が映る写真を撮ってみた所、微妙なシミのようなものが幾つか写っている事に気が付きました。レンズにライトを照らしてみると、曇りのような形でレンズ内に点々と薄くカビ発生していることが発覚しました。

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購入した頃は、使用したらドライボックスに入れて乾燥させるという事をこまめに行い大切にしていましたが、だんだん面倒になりカメラバッグの中で放置することが多くなっていたので、起こるべくして起こったということになります。

|カビ取り修理の方針

ズームレンズなので、どうしても空気の出入りがあるので湿気も入ることから、きちんとケアをすべきだったのですが、最近のスマホに代表される電子機器は防水性能がしっかりしているのと、湿気が入った程度では動かなくなることも少ないので無頓着になっていました。などと言い訳してもあとの祭りなので、対処法を色々と考えてみました。

1. カビ取り修理に出す                   - 3万円くらい
2. 中古業者に引き取ってもらう   - 3,000円くらい
3. 修理してから売る                      - 修理金額3万円,販売金額3万円
4. 自分で直して使い続ける          - 治せるのか?

どうせ二束三文なのと、自分で直せば愛着湧いてまた使い続けるかなとも思い4.を選択しました。振り返るととても活躍してくれたレンズなので、プロに修理してもらって使い続けるというのが最善だろうと思いますが、こういう機会でも無いと、レンズを開けることなどしないだろうと思い、好奇心の方が勝ってしまいました。

|修理情報の収集

一眼レンズのカビ取りを自分で行っている人はそれなりにいるようで、Youtubeやブログで幾つか調べてみましたが、レンズによってかなり構造が違うらしく、いまいちピンと来ませんでしたので、同じレンズで開けている人がいないか調べた所、先人者がおりました。公開感謝です。

一眼レフレンズのカビ取り(分解清掃、前玉外し方)を自力でやってみました

上記のブログ情報では、一番外側にあるレンズを前玉と呼んで、それが2枚レンズとのこと。カビがその2枚レンズの外側であれば、ネジを外す程度の分解で済むが、2枚レンズの内側となった場合は、レンズを固定しているコーキング剤を削って合わせレンズを分解する必要があるようです。
外から見た限りでは内側なのか外側なのかわからないので、腹をくくってひとまず開けることにしました。

|修理の準備

先人の知恵を借りつつ、以下のアイテムを準備しました。

1. 精密ドライバー
2.ピンセット
3.ブロアー
4.マイクロクロス
5.エタノール(本当は無水がよい)
6.カメラレンズクリーナー

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|レンズの分解

レンズを分解していきます。まずレンズを止めているネジを外すために、ネジの目隠し板としてはめられている、銘版プレートを外していきます。このプレートは、両面テープ3箇所で止まっているので、薄いプラスチックの板などを隙間に入れて少しずつ剥がしていきます。

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あまりきれいではないですが、うまく剥がすとレンズ側に両面テーブが残るので、再組立時にはそのまま使用できます。
次に、6箇所のネジを外していきます。ネジを外すとレンズを押さえているモールドが簡単に取り外すことが出来ます。

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レンズを押さえていたモールドを取り外すと、レンズが見えてきます。

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レンズをよく清掃する人は、レンズに吸盤をつけて取り外すらしいのですが、このレンズは端を持って持ち上げると外れました。

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外したあとのにはスペーサがあります。

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金色に見えているのがスペーサですが、この3箇所のスペーサパーツはそれぞれ薄い板が3枚重なっていて、計9枚で構成されています。

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なぜこうしているかはわからないのですが、1枚がとても薄いので、レンズの量産時にレンズごとに距離を調整しているのかもしれません。こんなにシビアなのかと関心してましたが、逆に開けて良かったのかという疑問少々。

さて問題はここからで、外したレンズは2枚レンズとなっており、その内側にカビの曇があるのでこの2枚レンズを外さなくてはならないです。

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レンズは3箇所でシーリング材によって固定されているので、このシーリグ剤を除去していく必要があります。

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ここから先は後戻りができないので、意を決してエイヤで剥がします。
レンズの側面にも光漏れを防止する黒い塗装があるので、それを傷つけないように慎重に剥がしていきます。

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少し粘りのある柔らかめの素材なので、端の方から少しずつめくりあげていくようにすると剥がれていきます。

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違いが判り難いですが、きれいに剥がれました。

|内側のレンズ外し

先人さんの記録から内側のレンズを外すには、シーリングをとった後に間にピンセットを差し込みテコの原理でエイッってやるとありましたので、やってみると、レンズが欠けてしまいました。

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内側のレンズ自体は強化処理も入っていないと思いますので、結構柔らかい感じです。なので、テコの原理とかで持ち上げようとすると割れます。
いやいや、これは本当に無傷で外れるのでしょうか・・・

テコの原理で上げるのは危険だと判断して、急遽吸盤を100円ショップで購入してきました。4cmのものでレンズには丁度よい大きさです。

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レンズに乗っけるとこんな感じです。

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この吸盤を引っ張って、なんとかレンズが外れると思いきや、全く外れる気配はありません。そこでレンズの固定状況をよくよくみた所、どうもレンズ周りに固定するための短い爪が周囲を囲んでいて、それががっしり掴んでいる感じです。

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はめ殺しに近い感じでの設計なので、これメンテナンスの時はレンズごと交換なんじゃないかと思ってしまいます。とはいえ交換レンズもなくシーリングを取ってしまったので先に進むしかありません。

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無理やり引っ張ってレンズを外す方法もあるんでしょうが、現在の環境ではどうにもならないので、レンズを固定している爪をカッターで削ることにしました。レンズを傷つけないように慎重に行わなくてはならず、かなり根気のいる作業です。

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ようやく2枚のレンズに分離することが出来ました。分離したレンズをレンズクリーナで拭いていきます。レンズクリーナの不織布(ナノワイパー)を綿棒に巻き、それに消毒用エタノールを染み込ませて、全体をまんべんなく拭いていくと、ナノワイパー側に薄く黒くススのようなものが付いていたので、拭き取れているようです。

単にアルコールで拭くだけでは、表面に油膜のようなものが残り、光に照らすとうっすら干渉縞が見えます。このため、カメラレンズクリーナを一回乾かし、乾燥したナノワイパーで拭き取って行きます。これによって油膜も除去されます。

|再組み立て

次に分離したペアガラスを戻す作業ですが、レンズを固定していた枠とシーリング剤を取ってしまったので、代わりに固定する何かが必要です。色々考えたのですが、お手軽にレジンで代用することにしました。

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2枚の合わせレンズを組み立て、レジンで固定してきます。もともとシーリングが入ってた溝にもレジンを流し込んでと思ったのですが、レンズの裏側にレジンが入り込むことの懸念と、次にメンテナンスするときにもう取れなくなってしまうので、レンズの枠のところにレジンを入れて固定することにしました。

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レジンを初めて使ったのですが、UVを照射して数秒で固まります。驚きです。ただ長期信頼性を考えるとおすすめ出来ない方法です。レジン自体に少し粘度があるので振動等には耐えられそうですが、レジンが今回の素材の接着に対して適したものなのかもわからないまま使っているので、剥がれる可能性があります。また、レジンからの揮発物質がレンズを劣化させる可能性もあります。なので向こう3年位持てば良いかなと思っています。

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周辺の何点かにレジンを塗布して固定し、きれいに止まりました。
この掃除されたレンズをもう一度分解と逆のプロセスで組み立てを行い、元のレンズの形に戻りました。

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光に写して曇りを確認すると、きれいに除去されているようです。また油膜による干渉縞も起こっておらず、油膜も拭き取れています。最後にカメラに取り付けて無事に動くことも、曇りの映り込みも無いことが確認出来ました。

|さいごに

今回初めてレンズを分解して掃除ができ、確かにきれいになったのですが、準備から含めかなりの時間を要したこと、細かな作業やホコリが入らないように細心の注意を続けなくてはならず精神が削られた事、モールドを削ったりレジンを添付したりし元通りとはならなかったことなどから、このレンズの掃除は自分で行うべきではなくプロに任せるべきと思いました。

ただ、レンズの機能としては元に戻ったので、せっかくなのでまた少し持ち歩いてみようかと思います。

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