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【アジア本】フィリピンパブ嬢の経済学
ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心にNNA編集スタッフがセレクト。大学院でフィリピンパブを研究するうちにホステスと交際し、その後さらに地方都市で結婚生活を送るに至った一風変わった体験記を紹介する。
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国際カップルのリアルなお金事情
のどかな光景が広がる愛知県春日井市。地元の大学院で、在日フィリピン人女性の研究にいそしむ男子学生がいた。ある日、調査のため訪れたのが客引きに教えてもらったフィリピンパブ。偶然テーブルについたホステスの明るい人柄に引かれ、通ううちに恋愛関係に発展する。
彼が仰天したのが、ホステスたちの劣悪な生活環境。住まいは逃亡防止のために監視付きで、ゴキブリも同居。休暇は月たった2日で月給6万円。加えて、ビザのために偽装結婚をしている状況だった。恋人を助け出そうと、男子学生は暴力団の元に乗り込むが‥‥。
こんなまさかの実体験を、社会学の視点で執筆した『フィリピンパブ嬢の社会学』の出版から6年。無事結婚した2人の、その後の暮らしをつづった続編が登場した。
今作は「経済学」とあるが、妊娠を機にホステスを辞め、文化の違いに戸惑いながらも子育てをする妻の奮闘記が中心で、国際結婚を主題にしたエッセー風。そんな中、とりわけ興味を引くのがフィリピンへの送金にまつわる話だ。
国民の10人に1人が海外に移住し、出稼ぎ労働者からの送金額は国内総生産(GDP)の1割に相当するフィリピン。「日本はお金持ちの国」と思い込んでいる妻の家族や親戚が、あの手この手で送金をねだる様子を赤裸々に紹介。妻は自身の貯金を切り崩し、月に20万円以上も送っていたこともあるという。「家族の絆」とは何なのか。お金が絡むと、文化の違いといったきれい事ではくくれないと実感する。
前作『フィリピンパブ嬢の社会学』を原作にした同名映画が、11月10日から愛知県で先行上映が決定。詳細は公式サイト〈https://mabuhay.jp/〉でご確認を。
フィリピンパブ嬢の経済学
中島弘象(著)
2023年6月20日 新潮社 902円 電子版あり