![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/171129833/rectangle_large_type_2_f6877c35d9435ca7a163523b3987921a.jpeg?width=1200)
【アジア本】鉄道ビジネスから世界を読む
ビジネスパーソンにおすすめのアジア関連書籍を、新刊を中心にNNA編集スタッフがセレクト。今号は、鉄道事業から世界の潮流に迫る新書を紹介。
![](https://assets.st-note.com/img/1737449798-i5TY0auovGpNjhMy46FefXZs.jpg?width=1200)
爆走中国が生んだ新機軸
各国の鉄道事業を通じて、現在のビジネストレンドを読み解く経済本。著者は住友商事を経て独立し、世界各地でニッチな商材を見つけて事業展開する自称「旅するビジネスマン」。専門分野ではない鉄道事業を主題にしたのは、「世界のリアル」を知るための最適な切り口であるからと説明する。
そのリアルとは、西側先進国や日本が準拠するグローバルスタンダード(世界標準)の外側で、中国による「新スタンダード」が普遍性を持ちつつあることだと述べる。その新潮流の中で日本企業が生き残るためのヒントを、自身の経験を踏まえながら伝える。
例として紹介するのが中国によるアフリカでの鉄道事業。1950年代から途上国同士が支援を行う「南南協力」をアフリカで展開してきたが、近年は圧倒的な資金力で続々と新路線を開通させている。
その1つ、ケニアで2017年に開通したモンバサ・ナイロビ標準軌鉄道(総延長490キロメートル)の高架橋を、野生動物が行き交う国立公園から眺めたという著者。「雄大な大地を横断するように中国製の鉄道が走る様を想像し、大きなショックを受けた」と吐露。中国経済の「力」を物語る光景だったと回想する。
相手の資源や国土を担保とする中国のやり方は「債務のわな」と呼ばれ、スリランカのように借金漬けになり破綻するケースが散発しているが、「西側諸国は援助の時に『政治を浄化しろ』など注文が多い。対して中国は『欲しい』といえばすぐ応えてくれる」という声を、アフリカ人の代表的意見として紹介。著者も「もっともだ」と否定しない。
他にもインドネシアの高速鉄道事業の入札で日本が中国に負けた事例などを取り上げ、中国的な「太く短く」の勢いに押され、日本的な「細く長い」ビジネスが魅力を失いつつある現状を指摘。妄想的な「メード・イン・ジャパン神話」から脱却し、中国経済の圧倒的な力や世界の現実を直視した上でビジネスの仕方を転換する必要があると訴える。
ビジネスパーソンとしての心得など、鉄道の話から「脱線」したトピックスも豊富。海外事業に携わる人なら、本書から多くの気付きが得られるはずだ。
鉄道ビジネスから世界を読む
小林邦宏(著)
2022年8月5日 集英社インターナショナル 858円 電子版あり