カメレオンの眼*38

文字を綴る。ラスクとコーヒーと。
「バター香る」と記されたパッケージの通り、容器を開けたその瞬間から、バターの香りが鼻を通っていった。
ラスクは好物の一つである。

日が暮れた頃、暗い水色の空の下、買い物に出かけた。
最近買ったパンツに黒いロングTシャツを合わせて。初めての試みであったコーディネートは、即座にお気に入りの組み合わせとなった。

夜道では誰の目にも触れない。暗闇に溶け込むような色だから尚更のこと。
それでも、お気に入りを身に纏うだけで、私の気分は上々だった。

初めての道を歩いた。
スーパーへ買い物に行く、ただそれだけのことだが指輪もはめて。

偶然、目に留まったのだと思うが。
道に面した住宅の玄関前に、犬の置物が座っているのを見た。それも一軒だけではなく三軒も。10分もかからない間に。
偶然、目に留まったのだと思う、が。

犬たちは見てくれていたのだろうか。
また出かけよう、このお気に入りを身に纏って。

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