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ただそばに居てほしいだけよわかる? 『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』(ネタバレ)

名探偵コナン 100万ドルの五稜星

監督:永岡智佳
2024年 
111分

北海道・函館にある斧江財閥の収蔵庫に、怪盗キッドからの予告状が届いた。今回キッドが狙うのは、幕末を生きた新選組副長・土方歳三にまつわる日本刀だという。
ビッグジュエルを追い求めるキッドが、なぜ刀を狙うのか…?
一方、西の名探偵・服部平次とコナン達も、函館で開催される剣道大会の為に現地を訪れており、犯行予告当日、平次がキッドの変装を見事見破り追い詰めるが…

公式HP

毎年の恒例行事であり、特にここ数年は日本映画にとって特大コンテンツとなりつつある劇場版名探偵コナン。
コナン映画は毎回オリジナル脚本の物語で、基本的に原作で描かれていること以上は物語を進めない、というのがルールになっているものの、この「基本的に」のラインがだんだん曖昧になってきている気がする。
コナン好きで原作追ってて、劇場版を観ない人なんていないよね?という作り手のファンへの信頼と自信の大きさも分かる。

今年は公式が「怪盗キッドの真実が明らかになる」とはっきり言っていたので、言われなくても観るけどそりゃあ気になるというのがファン心。と同時に、散々引っ張ってからのしょうもない内容だったら怒るぞという気持ちもあったり。

結果として、今回のいわゆるサプライズ部分はファンだけでなく、「コナンは追ってないけどなんとなく主要キャラクターの名前は知ってる」くらいの人でもおそらく「えっ!?」となる内容だったと思うので、試写会を行わないという厳戒態勢が取られていたのも納得。


事件自体は本編を一度しか観ていないのもあり、登場人物も多いので結構あやふやな部分もあるが歴史と絡めた財宝を巡る物語、という点では『迷宮の十字路』も思い出すような内容。
あと、今回結構描かれる血の量が多い気がした。
子供相手に発砲したり、ターゲットに覆い被さった刑事にも発砲したり、なかなか容赦のない描写も目立つ。

殺人事件のようなミステリーと、誰と誰がくっつくか、告白が成功するかというラブコメが同じレベル、同列で扱われる、というのは名探偵コナンシリーズの面白いところなのかもしれない。
特に今作は、欲にまみれた大人たちと、恋(と事件)にまっすぐな高校生たちという対比が象徴的だった。
まっすぐすぎるがあまり、誤った方へと走ってしまう若者の姿も描かれる。それも大人がまいた種のような部分はあるのだが。
やってしまったことは大変なことだが、それでもきっと彼の未来は大丈夫だという予感は残されている。

アクション要素も楽しい。
イーサン・ハント並のバイクアクションを見せてくれた平次。
『迷宮の十字路』でも平次のバイクチェイスがあったが、あのシーンだけCGでちょっと浮いていた印象があった。今回は技術の進歩を感じることができる。
平次とキッドが剣で闘うところ、「えっ、予告で見たこのシーン、めっちゃ序盤だったんだ!」はどことなく『ミッション・インポッシブル』、とりわけローグネイション感があった。


映画ならではの、キャラクター達のアンサンブルも魅力。
いきなり小五郎と園子のZoom?で話が始まっていくところがなんだか面白いし、名探偵コナンシリーズ二大お嬢様、鈴木園子と大岡紅葉は今回二人とも事件解決に繋がるファインプレーを見せている。
紅葉と執事・伊織のアホ二人組の珍道中はそれだけでスピンオフを作って欲しいくらい良かったし、移動がてら襲われているコナンの援護も忘れない抜かりの無さ。(援護の仕方がえげつない上にコナンも誰がやったのか分かっていないはずなのに普通に受け入れているのが笑える)
挙句ラストの「「あっ」」である。
元公安の超エリートである伊織、あれもこれも全て計算の上…なのかもしれない。
もともと好きだった紅葉&伊織、今作でさらに好きになった。

さらに頼もしいのが名探偵コナンのメインヒロイン・毛利蘭。
新一との恋がめでたく成就したこともあり、最近の蘭はくよくよすることがない、可愛くて楽しいコメディエンヌになっている。
意識が戻りかけた聖君を手刀?でまた気絶させたり、平次と和葉のためにひとり奮闘する今回の蘭は相当面白い。
いつだって彼女が行動する動機は、困っている誰かを助けたいという気持ち。
それこそが王道ヒロインだろう。
個人的に、蘭姉ちゃんを髪型や戦闘力でネタにするみたいなネットのノリがあまり好きじゃないのもある。

今回、コロコロと多分4~5人くらいに変装していた怪盗キッド。
コナンに変装が暴かれるの前提で、もはやそれも楽しんでいるようなトリックスター感が楽しい。
平次からはキスの恨み(ただの逆恨み)を買っている。

平次と和葉の恋模様。
ここでついに告白成功かと思いきや、それは上記のアホ二人組のやらかし(?)により残念ながら失敗に。
私たちだけは君の勇気ある言葉を知っているからね、と観終わった後は思わず平次の肩をポンポンしたくなった。
楽しみはもう少し後にお預け。なんか、最終的に平次or和葉の告白は絶景とかじゃなく、意外となんてことない場所(でも二人にとっては特別な場所になる)みたいな感じになりそうな気がする。

友達よりイケてる場所で告白したい男子高校生、可愛い


物語のラストで明かされた事実。
端的に言うと、江戸川コナン=工藤新一の父親である工藤優作と、怪盗キッド=黒羽快斗の父親である黒羽盗一が双子の兄弟、つまり工藤新一と黒羽快斗がいとこ同士であるということが判明した。
ちなみに、これは工藤優作と妻・由希子の会話中で明らかになったことなので、コナン本人に伝えたというわけではない。

それと同時に、長年死亡したとされていた黒羽盗一が生きている…だろうということも判明。
快斗は父親が死んだと思っており、その死にまつわる宝石=ビッグジュエルを探し続けているということだったので、お父さん実は生きてて良かったね!…いや、確か黒羽快斗を「怪盗KID」と名づけたのは工藤優作だと思うんだが、なぜ父親が本当は生きていることを快斗に教えないのだろうか。
優作も盗一は死んだと思っている?
快斗を危険に巻き込まないために黙ってる??(すでに快斗も立派な怪盗になっており危険な目にはあってる)
怪盗キッド=黒羽快斗であることに気付いていない???(そんな馬鹿な)
壮大なドッキリ????
自分の小さな脳みそでは考えれば考えるほど分からなくなってきた。

こういう、誰かと誰かが実は血縁関係がありました!みたいなサプライズって個人的にはそこまで盛り上がらないかも。
いや、そこまで何でもかんでも繋げなくていいよと思ってしまうし。
もちろん、この設定は後付けとかじゃないんだろうけどさ。

新一とキッドって似てる〜というようなことは前からずっと言われていたから、ある意味「やっぱり!」的なことだろうけど、漫画におけるキャラの顔が似てるって、同じ作者が描いた人間の顔ってそもそもどことなく似るよね問題もある気がする。
だからこそ、「声も似てる(同じ)」ということが強調されていたんだろう。

それを言ったら青子と蘭も似てるやないか


長期連載作品の宿命みたいなものもあるけれど、実はココとココがつながっていました!というキャラクターにまつわるネタや種明かし(="伏線回収")だけでなく、面白いストーリーがまず第一にあって、その中でキャラクターが動いてくれる、物語自体に吸引力がある作品を自分は好むんだなということが最近分かってきた気がする。

…と思っていたら、映画のラストで2025年のコナン映画のメインキャラクターはあの長野県警になることが判明。
ある意味、コナンとキッドの真実以上の驚きというか、攻めるなあ…という印象。
『黒鉄の魚影』が念願の100億越え、今作で大ネタを出して(今作もおそらく大ヒットだろう)、このあたりでちょっとチャレンジしてみようという流れなのだろうか。
特報では、雪道を車で走るPOVの映像で、諸伏高明、毛利小五郎、大和敢助の三人の声が聞こえる。
長野県警といえば、コナン史上でも屈指の残虐事件『県警の黒い闇』も印象的なので、来年の映画では大人キャラクターがメインの本格ミステリー(雪山にある山荘での連続殺人事件とか…)が観られるのか?と期待する気持ちがありつつ、それだと子供が観ても楽しくないだろうし、単なる自分の好みを押し付けるのも良くないし…なんて考えてるうちにまた1年あっという間に経つんだろうな。


今回、キッド関係なら推しの白馬探さんがもしかして出てきてくれないかなーなんて思ったけど出てこなかった。
でも最近久しぶりにコナンの原作に出てきてくれたから良し。
出てくるの50巻ぶりくらいで笑う。

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