入りたいを叶える舞台 #ホンジツ島のマジックアワー
2025年最初の観劇でした。ほんの少しだけストーリーに関わることが書いてありますがご容赦ください。
まだ観てないけどこのnoteにたどり着いたというSSRな方は是非あらすじ+最初の2項目だけでもお読みください
あらすじ
あなたも物語の登場人物!?
体験型ミュージカルがついに舞台化!
がんばるあなたに贈る、勇気と絆の物語
友達ができなくて悩んでいる少年バード。
ある日父の転勤で“なんにもないがある” とうたう
南の島『ホンジツ島』にやってきた。
そこで、砂浜に埋まっていた頭が星の形をした
ヘンテコなロボット、エビンと出会う。
徐々に意気投合する2人だが、
エビンはその楽しい思い出も夕日が沈むのと共に
全部忘れてしまうのでした。
どうしたらエビンと思い出を重ねることができるのか。
その方法は島に伝わる神話にまつわるものだった。
「星の砂」「まじないの本」「団結の証」
これらを揃えたときに何かが起こる。
これは人に向き合う勇気と
マジックアワーが起こした絆の物語。
きみならできる—-
観客を巻き込む「体験型ミュージカル」
基本的にはあまり情報を入れないで観劇することが多いのですが、「体験型」というところが何なのか。という点。この作品を知らない人はここだけでも「マジか!」と思って欲しいです。
普段ミュージカルなどで楽しそうな空間が作り上げられている時、「あの中に入りたい」と少しでも思った人は多いでしょう。それを叶える作品が本作かなと思います。
まず、舞台の作りですが、囲い型になっています。過去最大級に近い。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/169969037/picture_pc_9afe77035b2389aecd3a826b1a5e491d.jpg?width=1200)
そして最前列は「島人席」や「島の神席」という形で実際にステージに入ったり、音を鳴らすなどの一部演出に参加することができます。僅かながらでも、キャラクターとコミュニケーションを取れます。
所謂「最前いじり」はよくありますが、最前以外も普通にいじる。ジロジロ観てくるキャラクターもいれば、全員起立なんてイベントもあります。これは多分劇団四季のようなエンタメでは逆に作り出せない。
こういった形で、「舞台デビュー」を飾った方が沢山いたのではないでしょうか。正直最前と2列目の位置関係でお値段の差を出すほどではないと思いますが、そのチケット代の差には大きな「経験」があることは言うまでもありません。もちろん価値観はそれぞれで、知らぬ団体の舞台に立つなんて…と思う人もいると思いますが、個人的にはリピートで島の一員になろうと思う人はいるだろうな。という印象です。
とにかく「楽しそう」
お客さんがその場に立ちたいと思うには、やはり演者の方々自身が「楽しむ」ことだと思います。お客さんとの絡みもすごく自然。まるで島人が友達や観光客に話しかけるようでした。
また、帰り道でチラッと他のお客さんが話していた「内輪な舞台と思ったけど違った」と言う内容。確かに、常連さんやその役者さんのお客さんのための舞台。という感覚は全くありませんでした。(細かいファンサはあると思いますが)
全員を楽しませて、最前列の人はさらに楽しませる。そういう舞台に感じました。
舞台によっては、なかなか没入感がなかったり、「ステージの上と客席」のような隔たりを感じることがあります。特に私は「外様」のような立場で観劇をするため、その感覚になることが多いです。
おそらく本作も、役者さんのファンもいるでしょうがコンセプトやチケットの売り方的にも所謂「界隈外」のお客さんを意識した部分は強いでしょう。多分演者さんの大半が初めましてというお客さんは私以外にも沢山いるはずです。
そういった「アウェー」なお客さんも楽しませるというのはなかなか大変。その根底はやはり自分たちが楽しむこと。それをお客さんに伝播させることでしょう。
特に本作は元劇団四季の方もいる。私が年末に観た劇団四季のイズム、ノウハウが伝わっているのであれば来た人を楽しませる空気感は抜群だったのだろうなと思います。ミュージカルを志すキャストさんで座組に関われたことは幸せでしょう。
ストーリーのターゲットはやや年齢低めか
物語的には少しディズニーのようなシンプルさがあり、若干年齢層低めな相手向けなストーリーに思えました。難しめの熟語を、例えや言い換えなどを用いているシーンもあったのでそれ意識かな?とも。
深い考察要素などはないのですが、その部分を評価するのは若干野暮ですかね。むしろミュージカルなのだから、考察のドツボにハマられても困るのかなと。そういった部分も合わせて、お子様が観れるようにとか、童心に帰ることが出来るような舞台のように思います。
メッセージ性も、あらすじの通りシンプルでストレートなものてす。現代社会の人間への凝りに凝ったメッセージというよりも、現代社会に染まってない純粋な気持ち向けでしょう。
細かい所作にも注目
これは自称演劇好きだから目につくところですが、本作は「死角」となる部分が多々あります。中には、観えるのかおそらく数人だけと思われるほどのシーンもあります。その僅かなお客さん相手でも、決して気を抜かない。その細かい部分の完成度は個人的に素敵だと思いました。
例を挙げると、島の娘・リベルが授業終わりに少年バードに話しかけるシーンの表情の変化でそこに気が付きました。
また、私の席がちょうど出捌けの通路に面してる状態だったのですが、おそらく私の周り数人にしか聞こえないくらいのセリフをアンサンブルキャラクターが喋ります。(「どこだ?」とか)
島人席のお客さんへの話しかけもその一環でしょう。
そういった細かい部分、本当に気を抜かずにキャラクターに入り込んでいると感じました。
こういうコンセプト重視だとどうしても「その役者個人」が出やすかったり、細かい演出に目を瞑ることはあるのですがそれがないのもお見事でした。体験型というアイデアが先走りして肝心の中身が。。。となっていないのはさすがです。
情報を入れることの難しさ
本作は、通常の観劇だけでなく様々な支援チケットや企画があったようです。
ざっと見ても
・クラウドファンディング
・チケット手売り
・制作過程等のYouTube公開
・島の神、島人チケット
・打ち上げ参加
こういった通常チケット以外のプラスアルファは、当然ながら先に情報を入れた方が得です。というのも、やはりこれだけのものなので早い段階で「仲間」に入った方が「これだけのものを最初から応援してきた」という気持ちが入るのだと思います。楽しみ方も当日入った人よりは何倍も分かってると思いますし。そこに関しては何でもかんでも情報を入れないスタイルは裏目に出たかなと思います。
物販の手ぬぐいも売り切れてしまって追加はないそう(1/13時点)なので、これからチケット買う新規やリピートしようという人は手遅れ感が出てしまった。
個人的には、これだけ良いものをどうやってバイアスなく最初から応援できたかな。と少し考えてしまいました。(今作だけでなく、色んな情報が溢れすぎてるという外的要因も大きい)
懸念材料
完全にお節介なのですが、若干の懸念材料。それは、今は無い「内輪感」が今後出てしまわないか。という部分。
今回、企画の最初から応援している方は、予算の調節などもして打ち上げに参加されたでしょう。そうなると段々と「顔見知り」が増えます。それ自身は何も悪くないのですが、ゆくゆくは「沢山団体にお金を落とした人」だけが楽しめるようなコンテンツにならないか。という不安です。
例えば、「打ち上げの参加費」の対価は「打ち上げ」のはずだけども、それが「打ち上げにも参加したのに当日の優遇はないのか」みたいな気持ちが芽生えてもおかしくないのです。同じ島人席でも、昨日打ち上げに参加してくれた島人、今回だけの島人、前回公演から応援している島人といった様々な島人を同列に扱うべきか。という懸念に今後悩まされるのではないでしょうか。
小演劇でも、その人のファンが役者を独り占め…ということはなんだかんだであります。(それで色んな機会を奪うことも)
もちろん、様々なコンテンツを楽しむのにはお金がかかります。今後、同団体が企画を動かしたなら、しっかりと予算やスケジュールを調節したいなと感じました。今作のような空気感は、一部の人だけが楽しむようになったら廃れてしまうと思いますので。
私は、今作を観て演劇を知らない人でも「呼びたい」と思える場所。その人が「演劇って楽しそうだね」と思える場所であって欲しいと思いました。それが、「ファンの人たちが楽しんでしまって輪に入れない」となると勿体ないです。
まだ見えぬ楽しさ
さて、偉そうなことを書きましたが、私自身はまだ一般席に1度だけ座っただけの人です。開演前の島人たちの様子は知りません。どういった形でキャラクター達とコミュニケーションを取り、どういった形で作品に参加出来るようになっているのか。そういった楽しみ方をまだまだ知りません。どれだけ楽しめるかの部分は、今後色んな感想を読んで学んで、作品的にも私の気持ち的にも「次」があれば是非とも思います。