知らず知らずの二面性

昨年に引き続き、中野HOPEにて観劇。

とある町の憩いの場、銭湯・咲くら湯での一面。
基本みんながコメディチックに描かれており、おそらく初見の人でも身構えずに観劇することができると思います。ベースとなる演技力も申し分なく、清涼飲料水のようにセリフも入ってくる。ノアノオモチャバコさんをオススメしやすい理由の一つかも知れません。

板の上での人物たちを観て、人それぞれ「あ、このキャラ好きだな」と思うシーンは多々あると思います。癒しのオヅちゃん、真っ直ぐなジュン、真っ直ぐだけど騙されやすいタイチ、様々な事情を抱えたカスミなど、どの人たちも「普段隣にいるだろうな」という自然な姿でした。ちなみに私はニノミヤが好きです(あのツッコミといじられのハイブリッドな感じね)

今作、最後のシーンは少しモヤッとした。というのが最初の感想。なんか変な着地の仕方をしたというか、1人取り残されたミヤオカがどんな状態だったのか「これ!」という根拠が見当たらなかった。ただ、それが不完全な脚本かというとそうではない(という信頼はある)ので、きっと何か理由があるのかな?とは思いました。

私の思うさくらんぼ畑

ここからは私の勝手な推測です。

まず、ミヤオカ自身を振り返ってみると、確かにあの雰囲気の中にいるから楽しそうではあるのですが、劇中で触れられているように話を聞いて貰えない、カスミへの妄想癖、1人だけ無職といった「唯一違う要素」がいくつかありました。

そして振り返って気づいた点が3つ

前述の通り、皆様すごく自然な姿でした。ただ、ミヤオカだけは1人だけリラックスして話していないような違和感を感じました。なんというか、会話じゃなくて発言と言った感じ。対話ができてない。面と向かって話してても目の焦点が合わない印象(これ、去年の野鴨でも書いたね)でした。

そして1人だけ銭湯に入った描写がないし牛乳も飲んでない。けど、咲くら湯には来ている点。もしかしたら、深く仲良くなることはしたくないけど孤独になりたくない。クラスでたまにいる大人しい系の子(誰も連絡先知らないけど、学校行事はちょこんといる感じ)な存在にみえました。
となると、話しかけてくれただけのヤアコに好意を抱くのも分かります。(これもまた伏線ですが)

そして最後に取り残されたシーン。あれだけみんな仲良く、裏表なさそうな人達が「ミヤオカも来いよ」という言葉なくみんなで記念写真を撮りに行ってしまった。おそらくみんな「悪意」はないものの、ミヤオカにはそう写ってしまったのではないだろうか。普段通り皆が過ごせば過ごすほど、ミヤオカの孤独感が増幅されているんではないだろうかと思いました。だから最後に話しかけられているのは、しがらみが唯一ないオズちゃんだけだったのかも。

ヤアコが少しだけ接触したのは、劇中で語られてた「さくらんぼに粉をかけておく」の一環だったと考えると納得いきますね。


つまりは、あの明るい咲くら湯の中に、ミヤオカだけが感じる疎外感があったのではないでしょうか。その原因はもう少し奥まっているのかもしれませんが、白昼夢の「自分の成果を認められたい」のようなところには「なんで自分は仲間に入れてくれない」「なんでみんな気づいてくれない」のようなメッセージ性があったように思います。反面、前述のような積極的なコミュニケーションや協調性が欠けているようなところに、上手く入り込めない要因があったようにも思います。
よく言われる「いじめられる方にも原因がある」というやつ。子供はストレートに距離を置く理由を言うので学校では厳しく言われる言葉ですが、大人になって言葉には出さずとも距離を置く理由のように思います。
実際、各人物の「実はこんな人間臭い裏側があるんだぞ」のような描写はありません。強いて言えばハゲノ…失礼タケノウチくらいですかね。

なので、あの裏表のない「すぐ横にいそうな人達」を演じれば演じるほど、ミヤオカの孤独に気がついたときに「ズーン」と沈む気持ちになるのではないでしょうか。

そうなると、あのラストシーンは自分が孤独で、周りのみんなから認識されてないんだ。と自暴自棄になったミヤオカの白昼夢で、優しいオヅちゃんだけは気がついてくれてる。と思っているのかもしれませんね。
もしかしたら、同様の理由で仕事を辞めて、その時も声をかけてたのはオヅちゃんだけだったのかもしれません。


ミヤオカの視点の物語としてみる

私自身が感じた疑問なども「孤独なミヤオカ」の視点でみると、いくつか合点がいきました

・さくらんぼと、浴場の絵について伝聞だけ
「素敵なさくらんぼ畑」がテーマなら、その印象として残すであろうビジュアルが実際にはない。(写真の一つでも飾っていそうですが)

・あまりにもあっさりとした、タイチの権利書を手放す決断
サブスクや農薬などで浅はかで騙されやすい。という部分でも普通はもうちょい考えると思うがあまりにもあっさりしすぎている。
ミヤオカ視点の妄想ならシンプルで「俺の案は聞き入れてくれないのに、どうしてあいつのは!」という嫉妬のバイアス


と、色々と都市伝説のように辻褄があっていきました。把握漏れもあると思いますが、もしかしたら…なんて考えてしまいました。

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