見出し画像

【短歌】私とおばけと灯籠

短歌っていいな、と長いこと思っていた。
俳句より物語性があって、詩よりも短くダイレクトに伝わってくる。
総文字数31文字で、こんなに豊かな世界を表せる短歌ってすごい、と。
何度か詠んでみようと挑戦した。
そしてその度に挫折した。
57577の最後の7でいつも止まってしまう。
最後の7でそれまでの5757をひっくり返してやろうとか、読んでいる人が驚く仕掛けを入れようとか、出来もしないのに何か技を使おうと思っていた。
私がいいな、と思っていた短歌はそうなっていたから。
身勝手な挫折を繰り返し、いつの間にか歌作への興味は薄れてしまっていた。



あるとき、短歌を詠んでいる人に出会った。
身近に出会ったのは初めてだった。
仕事でご一緒した際に、その方は短歌にまつわる講演をされていた。
そのすぐ後、短歌についてお話をする機会があった。
「短歌、やってみませんか。楽しいですよ」
と言われて、挫折の話をした。すると、
「難しく考えなくていいんです。57577になっていればそれはもう短歌。自由です!」
そう言われて、音がした。
目から落ちた鱗の音だったかもしれないし、腑に落ちた音だったかもしれない。
57577になっていれば、それはもう短歌。そっか。そうか。
その次の日から、歌作は再びスタートした。


57577になっていれば短歌、自由。
その言葉はガソリンになって私を走らせた。
季節も良かったのだろう、あれは夏に入ったばかりの時だった。
夏は五感も鋭くなる。
思ったこと、感じたこと、考えたこと、気づいたことを31文字に収めるのが楽しくて楽しくて仕方なかった。
自分の頭の中にしかないものを言い表せた時の快感は何物にも代えがたく、その夏はひたすらに31文字を追いかけていたように思う。
そうして50を超える歌ができた頃、誰かに読んでもらいたいと思った。
インスタに投稿しようと思ったのは、だいぶ昔に作ったアカウントがあったから、登録の手順は踏まなくていいなと思ったのと、短歌に写真を合わせたいと思ったから。
短歌を外に出すなら、写真と一緒と決めていた。
写真を見て詠むことが多かったし、日常に特化した歌は写真で追いかけることも容易にできた。
何より、私の歌にはインパクトや華が足りず、文字だけでは誰にも見てもらえないと思った。
これが意外と性に合っていたらしく、写真と短歌を合わせて投稿することを、かれこれ1年半ほど続けている。


「灯籠の灯り背にして」の歌は、初めて31文字目まで詠めた歌だ。
自由のガソリンをもらった後、仕事帰りに近くの神社を通っているときに灯籠の前で枝が揺れている場面に遭遇した。
最初は鳥かと思い立ち止まり、よくよく見るとただの枝だった。
この令和の時代だからおばけを疑うことはないかもしれないが、昔であればおばけと思う人がいたかもしれない。
むしろ、おばけだと驚かれていたものはこういう枝や草を見て勘違いしていただけかもしれない。
そんなことを考えながら、詠んだ歌だ。


そんなこんなで、今日まで続いている短歌と写真。
いつまで続くかわからないけれど、今でも「楽しい!」という気持ちは変わらない。
今後は詠んだ短歌にまつわる話をnoteに書いていきたい。
どうぞ、ゆるーくお見守りください。

灯籠の灯り背にして揺れる枝おばけはきっとこんな感じだ


#短歌 #散文 #短歌フォト #写真

いいなと思ったら応援しよう!