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こだま「ずっと、おしまいの地」|なみなみのモノ#79

お店のモノを紹介する #なみなみのモノ #79は #なみなみ選書 より『こだま「ずっと、おしまいの地」』です。

エッセイスト・作家であるこだまさんの、生まれ育った場所や、その後の人生で移り住んだ、娯楽などがなにもない辺境の地を「おしまいの地」と表現し、そこでの出来事などをエッセイと日記とにまとめた作品です。これまでに発行されている『ここは、おしまいの地』『いまだ、おしまいの地』とあわせて三部作になっていて、シリーズの完結編となっています。(完結編とはなっていますが、どの本からでも読み始められる内容だと思います)

「おしまいの地」で起きた、当時は恥ずかしくて忘れたかったこと・誰にも言えない秘密のようであり、少しおかしくて苦い記憶として残っているエピソードたち。誰もがいくつかは胸の内に抱えていそうなことですが、こだまさんの身に起きることは、なんでもないような些細なことから、どうしてそんなおもしろいことばかりが・・・というような、人によっては墓まで持って行きたくなりそうな出来事までが、とても読みやすい言葉で綴られています。中には覆面作家だから書けるのかもしれないと感じるようなエピソードもありますが、日記の章には「書けない」日々のことも記されていて、書くことと読むことでは大きく違うけれど、本を読むことから遠ざかっていた私を引き戻してくれたエッセイ集でもあります。
きっと自分自身のために書かれている文章なのに、一部がふいに自分の苦い記憶と重なってきて「もしかすると大丈夫なのかもしれない」と寄り添われているような、勝手にそんな気持ちになります。
どこかの「おしまいの地」に実在し、暮らしているであろうこだまさんに思いを馳せながら、紙の本を読む楽しさも思い出させてくれた一冊です。一編ずつ、大事に読み進めたいのに、開くと手が止まらないくらいに引き込まれてしまっています。

本書の特設サイトでは、連載5作の試し読みもできるのでぜひ。

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