王冠の丸の上
いつかのために、櫛を洗います。いつかというのは、サムデイよりワンデイ、という感覚でしょうか。櫛は洗い終えた後、すぐに乾かさないと、水を含んでそのまま、汚くなってしまうので、無心でドライヤーを当てます。ドライヤーの音が、頭の奥に響いて、響いて、喉の奥にあるつっかえが、大きくなりました。喉の奥にあるつっかえとは、言えないことがある、とか、そういうことじゃなく、もっと物理的なもの、ボールのようなものです。その事を分かってもらわないと、私の威厳に関わりますから。そのボールを取り出して、向こう岸に投げたら、届かず届かず、そのまま流れていきました。流れていった先は、きっと、カントリーミュージックの流れる、そんな場所でしょうか。そうであってくれたら、きっと音と共に成仏してくれて、私の威厳も保たれるんでしょうか。爪が息をしてないことを、知っていますが、私の爪は、私の魂と同じようなものですから、少々の事は耐えられます。親から与えられた、いやむしろ、親というより、最悪な環境から与えられた忍耐力という名の、ボールでしょうか。唯一投げられないそれが、世界の向こう側まで飛んでいってくれたとき、それなら私は自由の女神の右手の上にそれを乗せる勇気すら、持ち合わせているのです。
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