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「ラストリコール」について
初めまして!NMMと書いてねみみです。
遅れながらも昨年11/29に公開した「ラストリコール」について、語るノートです。良ければ読んでってください!
↓「ラストリコール」youtubeリンク↓
https://youtu.be/47pnxl9uHS0?si=FWCw9lYoEVP6gDKT
少女は泣き縋り、隕石は落ちる
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夕暮れに、呑まれた世界の果てで
謗る空の轟音に負けた彼らが、こう言った。
「畏れた裁きがきた」と。
いないと思いますが、MVを細かく見た人ならわかると思います。「あれ、漢字違くね?」と。
そう、読んでる皆さんの出鼻を挫くようで申し訳ないのですが実はNMMさんここで重大な誤植をしてしまっています!!本当は「畏れた」です。なんてこった…この誤植、実は結構物語の核心に関わってくるので、本当はMV作り直して上げ直したいくらいなんですけど….まぁそれは一旦さておき。
この「畏れた裁き」とは、キリスト教をはじめゾロアスター教、イスラーム教などの宗教が共有する「最後の審判」という価値観をモチーフとしています。「最後の審判」とは、「世界の終わりに、歴史上の全ての人間が神によってその生前の行いを審判され、天国送りか、地獄送りかが決まる。それによって本当の意味での終焉が世界に訪れ、本当の意味で全ての人が死ぬ」という内容です。
ある意味とても神話的ですよね。現代科学からしたら、とくに。宇宙はビッグバンによって始まり、46億年前に地球が誕生し、数十万年前に新人が出現し…この世界における現象は例外を除いて物理法則によって説明できるものが多い。
ではなぜ、このような概念が淘汰されず、現代にも伝わっているのか。
私はカトリックの高校に通ってるとはいえ、キリスト教徒でもムスリムでもゾロアスター教徒でもありません。ですので、はっきりと「最後の審判の考え方と、それを信奉する教徒たちの理念はこうだ」と言うことはできませんし、解釈は人それぞれです。
そうは言っても、少なくとも一昔前までは、西洋・イスラーム教圏の人たちにとってはこの「最後の審判」を最終到達点としたパラダイムを基礎に持つ社会のなかで暮らしていたと言って差し障りはないでしょう。この宗教観を礎に持つ社会構造の中で、近代科学も発展してきた。それ故、近代科学によって神話性が否定されても、まだ多くの人がこの「最後の審判」の概念を信奉する、というわけです。
細かい説明は長くなるので省きますが、とりあえず日本人はあまり馴染みがない、この「最後の審判」という概念に近いものが、「ラストリコール」をはじめとする私の作品群の一つの裏のテーマとなってきますので、頭に入れておいていただければ、作品が更に楽しめるかと思います。
急に長ったらしい宗教観・哲学観を綴って、申し訳ないです…次項からいよいよ解説に入ります!
これ結局なんなの?
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「ラストリコール、なんか曲中で難しい言葉がごちゃごちゃ並べられてたけど、結局何が言いたいの?」
こう思っていらっしゃる方、結構多いかと思います。色々世界観を突き詰めていった結果歌詞やら言い回しやらが難解になってしまったのは反省点ですね…トホホ…
一言でこの曲を表すとしたら。それは、曲の主人公「らずり」の「覚悟」です。
「一度シタ選択ハ取リ消セマセン」
ラスサビで一瞬映るこの一節。これが実は曲中のターニングポイントです。
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それまで、終末の恐怖に立ち向かうという試練、受難を美学としていた「らずり」が、失われるものの大きさに気づき、時間を戻そうとするものの失敗し、受け入れる覚悟を決める。
細かい部分を全部削ると曲自体はこんな感じに纏められます。
物語は今後シリーズ形式で続いていくのであえて深掘りはしませんが、歌詞やMV中の文章を少しずつピックアップして、この世界の住民に対する僕なりの解釈の説明をさせていただきます。
作品の基本形
今後投稿していく作品に共通する作品の舞台装置は、
「どう抗っても止めることができない、理不尽な現実の変動 vs それを止めることはできないということがわかっていても、僅かながらの抵抗を美学とするキャラクター」
という対立構造になります。
私は勝手にこれを「それでもなお構造」と呼んでいます。なす術がない状況でも、「それでもなお」と立ち向かっていくキャラクターの姿が描きたい。そういう発想の末生まれた作品が「ラストリコール」になります。
歌詞について
歌詞とMV中にチラッと映る文章については、前半は基本的に言葉通りの意味となっております。ただ、サビがちょっとだけわかりにくく伝わりにくいかと思いますので、少し補足させてください。
「逆さに落ちる星と鐘と」
「逆さに落ちる星」は、ここではキリスト教において「ベツレヘムの星」と呼ばれ、イエス=キリストの誕生時に集った人が見たとされる流星(諸説あり)をイメージしています。
(「鐘」はあくまでも終末感を演出するための舞台装置にすぎません。)
「宙吊りに裂いた碧い夜空」
はい。ここ、恐らく全歌詞中で一番伝わらなかったところだと思います。
前提から解説すると、この曲において「最後の審判」的な終末は、隕石落下と、「ビッグ・リップ」と呼ばれる、宇宙の終わりをモチーフとしています。
らずりちゃん間違いなくオーバーキルですね。
「ビッグ・リップ」とはなんなのかについて簡潔に説明すると、「宇宙はビッグバンという爆発で一気に膨張してできたのだから、終わる時はその反対で膨張に耐えきれず引き裂かれて終わっていくのではないか」という仮説です。細かい理論の説明は、理系の皆さん、任せた!!
MV中に出てくるひび割れみたいなのも、これをモチーフとしています。
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「方舟に乗った彼らが残した電波時計」
こちらは続く作品で深掘りしていこうと思いますので、よければ次々回作くらいを待っていただければとても嬉しいです!
残りはほとんど言葉通りの意味となっております。神話への喩え等もありますが、解説するほどのものでもないかと思いますので。皆さんがそれぞれの解釈をしてもらえれば、それだけでもこの上なく嬉しいです。
「避けられなかった」未来
結論を先に言ってしまうと、「ラストリコール」は今後展開していくシリーズの中で、時系列的に一番最後にくる作品となっています。
どうしてこうなってしまったのか、どうして「らずり」は終末の訪れを嘆いているのか。ここら辺は敢えてまだ触れないようにしておきますが、最後に少し、結局「ラストリコール」(曲中に登場する、後世に伝わった2枚のフィルム)とはなんだったのかについて、説明させてください。
フィルム一つ目は、「らずり」が終末の様子を後世に伝えるために、曲中で撮ったフィルムです(フィルムを撮っている場面では画面四隅に白い「」が映っています)。
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問題は二つ目。通信機を開けた「らずり」が再生する、『予言』が含まれているものです。
これはとある人物が、「終末に立ち向かう」という試練を受けるであろう未来の「らずり」に宛てたものです。
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『空高く飛んだ鷲も鳶も
やがては命尽きて落ちる。
宛先のない迷子の手紙(=このフィルム)が
届くその日(=作品におけるこの終末の日)、
互いを紐で結んだ魚(=神様的な存在)が
形を変えお救いくださる。』
と言って、未来の「らずり」に呼びかけます。
それに応えるように、過ぎたこれまでの日々を想起(=recall)する「らずり」。「ラストリコール」です。
『やっぱり終わりたくなんかない』と呟きます。
しかし、とある人物による予言は外れ、呼びかけも虚しく、更には時間を巻き戻す機能と過去と通信する機能が備わっている通信機にも「一度した選択は取り消せない」と言われる始末。
「らずり」は受難を覚悟し、世界の輪廻の終わりを告げる空の轟音に飲み込まれていく。
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おまけ
「らずり」初期デザイン
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ボツラフ
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(「らずり」のキャラクターデザインと通信機のデザインには元ネタがあって、それぞれ1960年台の電話交換手、電話交換機をモチーフに描きました)
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(「らずり」の名前の由来
「ラストリコール」は英語で”Last Recall “. これを早口言葉みたいに繰り返して発音すると「らずりこー」みたいに聞こえることから「らずり」と名付けました。作中では夕日に照らされ少し紫色っぽく見えますが、らずりの髪色は元々濃い青(=ラピスラズリの色)です。)
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(全身デザインは需要があれば出します。)
(作中に出てくる花はチョコレートコスモスという花です。)
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さいごに
以上が「ラストリコール」の解説になります!ここまで読んでいただいた方、長いにも関わらずお付き合いいただき本当に本当にありがとうございます!!
初めてのオリジナルストーリーを含む曲ということで、まだまだ表現力が足りなかったところや稚拙なところもあったかと存じます。100%自分の表現したい世界が表現できるようになる日まで、全力を尽くして作品作りと向き合いたいと思いますので、引き続きご応援いただければ嬉しいです!
次回作でお会いしましょう!では!