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Photo by
otatakahiko
透明な音【九首と一句】
深呼吸した息が澄んだ紅茶に溶けゆくきみのそのほほえみと
しろじろと吐く息の強さを真に受けてポッペンの音冬空に
豊かなる星(あなた)の中でちっぽけでいられる生命(いのち)の明瞭さかな
その空へストレートに放つだけ波に揺られ運ばれる雲隻
変化球にゆらめく波紋に年輪をみて倒木に腰を掛ける
冷たき風のただ中に点々と灯す行きさき椿のあかり
雪の蝶無口なままにホウトホト光と影の瞬きよ
その影に一握の命思うほどに積もる雪にかくれし涙
山頂までの白さを希んでは融けてくずれた鎖骨の湖に
沢の音、滝の音、岩の音、わたしの鼓動