ルイに英文字が書かれてるから【メタファー:リファンタジオ】の設定がまたエニアグラムを参考にしてる件
まずこれを見てほしい。
最終盤で覚醒したラスボス魔王ルイ・カラドリウスである。閣下を彷彿とさせるモチーフだが背負う翼のようなものは6枚ではなく全部で8枚だ。
この背中の羽、よく見るとそれぞれ何か『数字』と『英単語』が書いてある。メタファー世界で使われている数字・文字でもなければエスペラント語でもないことに留意したい。
弧を描くように右下から
1 Anger
5 greed
9 Sloth
8 Lust
左上から
6 Fear
2 Pride
7 gluttony
3 Deceit
LがŁに見えるがSとDにも入っているので特に意味のない文字装飾だと思われる。また5.7の頭文字g、1で小文字として使われているものより大きいのでこのフォントでは大文字なのだろう。攻撃する時は左右4枚ずつ使うこの羽は裏表ほぼ同様の模様があり、扇に開いた線対象時に見える右側(1.5.9.8)は裏で、数字のみを反転させている。
さて。なんだ、これは。七つの大罪かな?でも数が合わないな?まず何の数字かな?
――という疑問へ先に答えを。
『エニアグラム性格診断の9種類のタイプとそれにおける悪徳』です。
それぞれ悪徳を意味する単語と対応したタイプの数字までぴったりと合うので確定でしょう。
過去、ペルソナ3でもエニアグラム性格診断の書籍「9つの性格」を参考にしてキャラクターが制作されたと当時アトラスネットの橋野Dの開発通信などで語られていましたね。系譜です。
一応、エニアグラムの英版と日本語版のWikipediaを貼っておきます。性格タイプについての詳細は上記の書籍がとてもわかりやすいです。
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Enneagram_of_Personality
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/エニアグラム
右下からおおよその日本語訳※1を書き出すと、
タイプ1・Anger 『怒り』
タイプ5・greed(=Avarice) 『強欲』
タイプ9・Sloth 『怠惰・自己忘却』
タイプ8・Lust 『欲望・煩悩』
――
タイプ6・Fear 『恐れ』
タイプ2・Pride 『誇り』
タイプ7・gluttony 『暴食』
タイプ3・Deceit 『偽り』
となる。
また、英単語とアラビア数字のみならずその下には横顔が彫られているが、これらはそれぞれ『作中世界に住むエルダ族以外8つの種族』の顔だ。
右下から
1クレマール、5ムツタリ、9ユージフ、8ローグ
続き左上から
6イシュキア、2ニディア、7パリパス、3ルサント
これらの羽は、覚醒した『魔王ルイカラドリウス』では単に直接攻撃とビーム砲の役割を果たしていたが、その後の『破滅王カラドリウス』第1形態においては、冠した番号を装飾に引き継いで磔の贄としてマグラ人形にされている。ここは少し後で書くのでよければ覚えておいていただけるとうれしい。
振られた番号順に判明した【種族】を並べ直し、その数字を参考にエニアグラムの9つの性格タイプにおける役割※2を当てはめてみると、
タイプ1【クレマール族】改革者、完璧主義者
タイプ2【ニディア族】助力者、与える人
タイプ3【ルサント族】達成者、実行者
(4――)
タイプ5【ムツタリ族】調査員、観察者
タイプ6【イシュキア族】体制支持者、忠実で慎重な人
タイプ7【パリパス族】熱中する人、快楽主義者
タイプ8【ローグ族】挑戦者、庇護者
タイプ9【ユージフ族】調停者、まとめ役
作中描写に心当たりしかない。
先述の通り、ペルソナ3で既に参考にしてキャラクターの性格を決めたと明言されている上でのこのわかり易さは、セルフオマージュと気付かせるためか。その答えをラスボスの造形に落とし込むのはファンサービスとしては大胆だ。
さらに興味深いのが、根源的な欲求と誘惑の項※3を参考にそれぞれの種族のパーティメンバーに対応させると、
これも支援イベントとかで見覚えある文言……
過去、橋野Dの開発通信に参考書籍として紹介されていたエニアグラムの『9つの性格 著:鈴木秀子』を読んでみると、今作においてもタイプに応じたパーティメンバーの作中描写とかなり共通点が多い。
ペルソナ3から時を経たこのメタファー:リファンタジオというタイトルがまたいかにエニアグラムのタイプを参考にして登場キャラクターの多様性をモットーに作られているかがうかがえる。
通常こういったものは発売から少し経ってインタビューなどが散見されるようになってから噛み砕くものだと思っていたが、ラスボスまで来れば『これ』をすぐ味わうことができるという点においてイースターエッグの意味は大きい。
少し余談ですが、浮いたタイプ4に挙げられるのは、個人主義者、空想的な人・憂鬱・起源・独自性や重要性がないことを恐れる・自分らしくありたい・自分探しに想像力を使いすぎる。悪徳は嫉妬、美徳は平静。※4
これモアだ! いや王子もありうる。
メタ的に、使わなかったタイプ4をどこかのキャラクターの要素に入れたというのは考えられる。いやクレマールちゃうんかいではありますが、もしそうなら面白い。あなた悪徳、嫉妬なんだ……
ペルソナ3ではタイプ4はタカヤが該当していました。
※1.2.3.4 これらは日本語版ウィキペディア『エニアグラム』(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/エニアグラム)の表を参考に当て嵌めたものです。出典について、またその解釈についてはリンク先を参照してください。
さて、メタファー:リファンタジオに登場する8つの種族の性格的特徴やパーティキャラクターのメインシナリオや支援イベントでの心情描写に至るまで『ルイの羽に記された番号通り、エニアグラム性格診断のタイプを参考にして作られている』ことがわかった。
ここまでは全て開発、メタ的な話である。
並べ直してみて、ふと思う。
0を人間とした場合、1〜9の種族ってもしかして人間から造り出された順に数字が振られているのではないか、と。
古仙女グルデアは種族が人間から分かたれた理由を二つ語ってくれた。この仮説は、戦争に勝つための人為的ではないもう一方である『焼け野原を生き抜くため自然に』という発言とは相対するものだ。
ちなみに見聞録には『自然に』との言及は特にない。
理由としてまず再度メタ的な部分を片付けよう。
第一に、英単語と数字と種族の横顔はエニアグラムのタイプを当てはめたという解答を記しただけのもの――それにしては流石にゲーム内で目立ち過ぎるという点だ。
『生身で戦ってきたルイが王笏の力を使い、まるで大天使バージョンの閣下のような覚醒を果たした』シリーズファンも新規プレイヤーも最終戦に向けてテンションを上げる、ラスボスたるルイ・カラドリウス最大の見せ場である。
これがゲーム内に隠した『イースターエッグ』のためだけに存在するのなら、モデリングして入れるにしても世界観を壊す英語アルファベットやアラビア数字ではなくエスペラント語に対応したメタファー世界の文字を採用するほうがずっと没入感があって自然だ。
ムービーでも何度もズームされ、プレイヤーが一見ですぐ理解できる文字であるがゆえに全てを容易に読むことができてしまう。
しかもこの数字に至っては、ここで完結せずあろうことか暴走恐化した次の『破滅王カラドリウス』第1形態までデカデカと引っ張っている。
いや、本当にデカくて主張が強いな。
この破滅王の第1形態ではもはやエニアグラムのタイプがどうとかではなく、振られた番号と種族の関係のみにフォーカスされている。
……これらにわざわざ使用されたアルファベットの英単語やアラビア数字が示唆するところとは。
それを考えるにはまずゲーム内で『リアルな現代の文字・数字』が使われていそうな所を見つけたい。
――当然ながら物語開始の1000年前に滅んだ旧世界である。
エルダ族――古の言葉で古きものを意味するEldaが、英elder(古英語で古いを意味するealdに由来する・oldと同じ語源)の音だけを残して綴りを変化させたものと考えると、古の言葉=旧世界の言葉に英単語も使われていたことは断言してよさそうだ。
また、メタファー:リファンタジオの歴史と世界観を構築する重要なダンジョンでありながら世界樹の迷宮Ⅰのセルフオマージュでもある遺都シンジュク=辰祝ノ都のイベントでも、ユーファが兄に習った古代の文字を読むシーンが何度かあった。ちなみに微妙にだが英語版は言ってることのニュアンスが違うので比べてみるのもいいかもしれない。
毎日見る暦盤を見ればわかるが、先述の通りこの世界は数字もアラビア数字でなく別の文字である。なのでアラビア数字が目の前をビュンビュン飛ぶ『破滅王カラドリウス』第1形態戦でどれだけ気が散ろうが新世界の住人である主人公たち(ユーファ以外)はそれが数字とは思えない。
……余談だが、モアが見せた『現実』は看板の文字がぐちゃぐちゃに歪んで、漢字を知っているプレイヤーですらそれが元が何の文字なのか一切認識できないような記号の見た目になっている。ビルガ島で黄ばんだ紙に書かれているものを『古代の文字』と認識した主人公だったが、あの状況でプレイヤー以上に文字だとはきっと答えられない。モアの幻≠旧世界なのでプレイヤーも読めてはいけない気がする。
しかし面白いことに、オブジェクトの道路標識や看板の一部は処理の穴だったのかアラビア数字・漢字・カタカナ・英アルファベットすべてガッツリ見えてしまう仕様だ。
また同じ看板でも、あるシーンは『ぐちゃぐちゃ』だが次のシーンになると「ヨンドラッグ」「GINKOU」になるなど抜けもある。同シーン別カットでは『ぐちゃぐちゃ』が徹底されているので、おそらくは読めなくする処理前の元データがこのカットに背景として使われただけだろう。
ややノイズはあるが、モアは旧世界の文字自体は読めないという示唆だろうか。いや、知的好奇心の人がエルダの古仙郷に女王と子をなすほど滞在してそれは考えにくい。現実を現実たらしめる決定を主人公に委ねているあたり例の『スクランブル交差点』は主人公のための主人公のもので、いきなり連れて来られた主人公がまだ文字として認識できないから『ぐちゃぐちゃ』な見え方になっていると考えるべきか。
作中世界で使われていたであろう、リアルな現代の文字や数字の話に戻ろう。
エルダの古仙郷とビルガ島には旧世界の文字を含めてその知識を受け継ぐものがいる。
前者の出自であるルイは旧世界の古代文字=『リアルな現代の文字』や旧世界自体に明るかっただろう。だが、種族がひとつであろうが理想ではなく既に幻想としても捨て去った滅びの旧世界の要素をラスボスのあの姿になってまで模倣するタイプには全く見えない。古臭い人間の世ではなく、新しいニンゲンの跋扈するボスの絵の世界観がお好みだ。
主人公らのアーキタイプを超えて名乗った『王』の姿にわざわざルイ自らが旧世界の数字や英単語を入れる意味はないように思う。
ではなぜこんなにも大きく入っているのか?
ルイの意図でないなら(そもそも破滅王の第1形態ではマグラが暴走してるので本人の意図も何もない)、悪徳の英単語もそれを関連付けて8つの種族に振ったアラビア数字も、その覚醒を叶えた王笏の仕業と考えていいだろう。
第二の理由が、これだ。旧世界でマグラを吸えるこの無類の王笏が振るわれたなら、戦争に勝つための種族だけでなく8つすべての人種をつくることも容易い。実際に見聞録では『望めばどんな事でも引き起こせる』と書かれているし滅亡戦争からの新世界の混乱期の世はマグラで溢れていて使い放題である。
だが出来ることと実際にしたかどうかは全くの別物だ。
ではここで、改めて古仙女グルデアが語った旧世界の情報を整理しよう。
現代のメタファー世界にいる、旧世界の生き残りである人間=エルダ族を除く8つの種族は、
①戦争に勝つため人為的に
②焼け野原を生き抜くため自然に
このふたつの理由で人間から分れたとの話だった。
一方の見聞録では以下のように書かれている。
こちらは、分化は2パターンのみでなくすべて自然に・あるいはすべて人為的になど一応その解釈には大きく幅が持てる表現だ。
また、古仙郷の最奥には壁画がある。
図のように人間から細分し進化していっているように見える。
新世界への転換期に人間から生まれた8つすべての生き物の特徴がしっかりと書かれている(ニディアも本来の姿である)ので当然ではあるが、旧世界の過ち共々伝えたこの壁画は新世界になってから描かれたものに間違いない。8つのみが枝分かれた個々の種として確立するまでの時間が経過しなければこの配置とバランスで壁に描けはしないだろう。
では、それはいつ頃の話だろうか。
エルダ族の見聞録にある通り、彼らは今の地下生活ほどではないが1000年前の戦後から既に長きを隠れて生きてきた。
仮に古仙女グルデアの語るよう戦争利用以外『自然発生的』に生まれた種族もあったとしよう。
だが、おかしい。戦争で役に立つことのないニディアはこの場合は戦後自然に種として生まれたことになるが、子どもの姿というハンデゆえに同じく故郷の里すら隠す彼らをどうやって本来の姿でここに描くというのだろう。壁画では木の実をとるユージフが自然発生側の場合もそうだ。彼らを初めて見たとして、途中経過も知らずなぜ人間から枝分かれた先だと思えるのか。どう頑張っても人語を話せるようになったシロコウモリにしか見えない。
同じく隠れ住んで外へ積極的に干渉せず当然ながら進化をそばで見守っていたはずもないエルダ族には見分け、知る機会などない。
――それを成した側が里に訪れて聞かせる以外は。
分かたれた種族について壁画が描けるだけの知見を与えたのは全ての種族変化が人為的である仮説の場合、王笏を持つ一族の者であったはずで、それはくしくも作中で語られた王笏の所持者ユークロニア王家の人間である探究者ユトロダイウス5世が郷を訪れたのと同じ状況だったのではないか。
エルダ族に摩訶不思議なお告げパワーやら謎の接触した妖精乗っ取り魔法技術があったとしても、自ら決めて戦後からは外へ干渉したがらないというのなら混乱期の世界のどこでどう起こるかがわからない種の変化という叡智は集められない。ストーリー内で大陸全土どこでもガリカをスピーカーにして響かせる謎の声がそうしたのは世界に興味があったのではなく広義に幽体離脱的な我が子のストーカーをするためである。
つまるところエルダの古仙郷にある種族が分たれた壁画は滅亡戦争から数百年単位のかなり後世になって、しかも伝聞で描かれたものだと推察する。大陸暦が始まった頃だろうか。
もしこれが人種の設計図なら仮説を裏付けるものとして正直話が早いのだが、そうなると滅亡戦争から逃れた一部の人たちであるエルダ族の先祖が『破格の力を持つ王笏と王のしもべの神器を使って人間をベースに別の種族へと変化させた』ということになる。当然ながらそうは考えられない。
王笏は、滅亡戦争当時エルダ族の祖先とは異なる貴人の手によって戦火から逃れ持ち出され、長きのちユークロニア王家の祖となる慈悲王・初代ユークロニア王の持ち物となるのだから。過去エルダ族の祖がこの神器を振るうことはない。
まあ、描かれている順番も違うので……
ちなみに王笏の見聞録から、初代ユークロニア王(約300年前の併合戦争に勝利したユークロニア初代連合国王であるユトロダイウス1世ではなくドラゴンを封印した慈悲王のほう)は旧世界の滅亡戦争という壊滅的な惨事を認識していたとわかる。
大陸暦から見て約800年ほど前か、おそらく種の変化は完了している頃はまだユークロニア王家は古仙郷のエルダ族と同等程度には旧世界の知識を有していたようだ。現代から見ると新古今和歌集くらい遡る時代……もうちょっと伝言ゲームを頑張ってほしかった。
さて、この壁画は一見するとこの流れに似ている。
しかしこれらthe March of Progress のよう、直列になることで誤解を生むことがないように壁画では蔓で枝分かれが強調されてはいる。では『中央の人間からの並び順に生まれ、遠くなればなるほど大きく変化した』という表現なのだろうか。
個人的にはそうは思わない。
この絵にどう正しく順の数字を付けろとという話ではあるが、ルイの羽にあった並びと違うのは一目でわかるだろう。仮説を立てた手前、これが種族誕生の順番では困るのだが一応ちゃんとした否定の理由もある。
成長が抑制されて虹彩が広がったニディア族が、頭蓋骨に穴が空いて脳を押しやりもうひとつ眼球と筋肉に眼力不思議パワーまで授かった『ムツタリ族より人間から遠い』……つまり反対側のユージフと、人間から同じ距離の扱いとは流石に考えにくい。
ユージフと並べて大きさが合っていたから端に配置されただけのように見える。後の時代になって描いたからね、バランスよく並べられるね。
ではここで、推したい説である1〜9の種族は人間から造り出された順に数字が振られているのではないかという仮定のもと、人間をベースにそれぞれの種族に起こった変化を考えてみよう。
0人間=エルダ族 なし
1クレマール族 【皮角形成】
2ニディア族 【成長抑制】
3ルサント族 【肉体強化】
(4――)
5ムツタリ族 【マグラの流れが見える多眼】
6イシュキア族 【有翼(?)】
7パリパス族 【食肉目キメラ化】
8ローグ族 【寿命を劇的に伸ばす】
9ユージフ族 【霊長目ベースをやめる】
まず最初に『角以外は身体がエルダと同じクレマール』が、最後に『プレイヤーからすると全く別の生き物に見えるユージフ』が据えられているあたり数が増えるといじくりがエスカレートしているように思える。
エニアグラムのタイプである数字の話をメタ的なものとして外に置いて考えると『4』の空白も開発はしたが全く生き残らずに記録から消えた種族なのだろうか。
ところで、イシュキアの横には(?)をつけました。
ここで、王笏のデザインをよく見てみる。
なんかすごく……人体ですね……
特に翼の形状や腰に沿う下段の生え方からイシュキア族を彷彿とさせる。では王笏はイシュキア族を模しているのだろうか?
しかし時系列を考えてみてほしい。
・種族が8つに分たれたのは旧世界の滅亡戦争勃発以降である
・王笏は他の神器同様、滅亡戦争より以前から存在する
これが現在の確定情報だ。
つまり王笏がイシュキア族をモデルに生み出されたのではない。
覆らない時間の流れから考えて、旧世界の頃から凄まじい力を持つ一級品であった王笏を模してイシュキア族が造られたのだ。
鎧戦車の日記の追記には「イシュキア族は翼を持ちながらも、空など飛べない…だが翼の形を取るのは、イシュキアの祖先が、地上のしがらみから逃れたいと望み、空への憧れを秘めた形なのではないか」とある。また見聞録にも進化で得たはずの翼についてはかなり異様なことが書かれている。
肉と骨が通ってない以上『多少動かすことはできる』とはつまり、背中や肩甲骨を動かすとそこにまるで翼のようにくっ付いているだけの羽毛のかたまりの末端まで『揺れる』程度の動きにしかならないはずだ。
古仙女グルデアの語る種族が生まれた要因を思い返してみよう。
そう、イシュキア族は
・戦争で勝つため
・焼け野原を生き抜くため
そのどちらにも哀しいほど当てはまらない。
旧世界の人間様方はドラゴンが生み出せるので空中戦はもっとコスパが良いワイバーン的なものを操ればいい。ユニコーンオーバーロードのドラケンガルドではお世話になった。
羽を動かすカロリーを自ら負担するより騎乗スタイルが戦場に向いているのは言うまでもないので、戦争のためにイシュキア族は造らない。思惑の失敗作だったとしたら、今度は逆に種族として確立するほどは増やさない。
まあ、というかそもそも旧世界には翼なんか重くて邪魔なものを生やさなくても人が空を自由に飛べる魔法があるので……戦争に使うメリットがあるかはともかくそちらを科学技術に応用させればいい。
では日記の通り、戦後自然発生的に願いで種として進化したのか。
いや、なら飛べるようになりなさいよ。
なんで羽毛布団とハンデを背負ってるんだ。
願いは力。マグラは不可能を可能にする。種族が分たれた時代、滅亡戦争の名残で大陸全土に満ちるマグラは膨大なものだっただろう。それらに影響されながら真に空へ憧れていたなら、種族の変化として叶わない道理はない。一応この仮説の上ではイシュキアの後に造り出されることになるバカほど寿命伸びてるヤツらとの差があんまりだろう。
事実としてイシュキア族は王笏をモチーフにして生まれている……もうこれ、旧世界の人間の道楽では?
すっごい王笏を昔作った時、鳥みたいな飾りを付けたけどこんなふうに翼『みたいなもの』生えた種族いたら格好良くない!? の実行例では。
似せるのが目的だから翼は骨もない肉もないただのハリボテ。羽毛。身体を飛ばせるかどうとかいう以前の設計である。
メタ的な話、プレイヤー側から見てムツタリの第三の目が動かないのもイシュキアの翼がニセモノで飛べないのも妖精が羽ばたきで浮いているわけではないのも、それらゲーム準拠の説明がしっかり見聞録に書かれているあたり、全ては『ゲーム容量の都合上』の整合性を取るためだと察せられた。
そうして丁寧に違和感のないよう理由付けがされているからこそ作中様々な設定に反映されていそうだなと個人的には思える。
さて、こうなってくるといよいよ疑わしいですね。グルデア様。
飛べない力も強くない戦争のためにも使えないイシュキア族はマグラの影響と願いにより人体から鳥類骨格ありきの実用的な翼を生やそうとしてキメラ的に変化した環境適応種『ではない』という前提において、
古仙女グルデアが8つの種族誕生秘話として語った、
戦争利用の人工種 or 自然発生的な種、という二択の振り分けでは成り立たない。
戦争利用の人為的誕生で説明のつく種もある。しかし自然発生した種がいる合理的な説明が個人的には見つけられなかった。何でもは知らない見聞録には『分化』したと説明があるのみだ。へっぽこ考察勢にやさしい。
これらの人種は『滅亡戦争開始〜滅亡・新世界となって数百年』のうちにすべてが変化を完了している。
この番号が王笏に記録されていたことを考えるに、それを振るった創造主は素養があった特別な者だろうが人間ならばただ一人きりではないはずだ。王笏があのバカでかい王のしもべと揃いの神器であり今日に至るまで分かたれていないということは主人公や歴代ユトロダイウス、また慈悲王たる初代ユークロニア王の直系の祖、旧世界でも貴人であった者たちの仕業だろう。
ちなみに初代ユークロニア王はアートブックの金貨を見るに『クレマール族』である。
本来、約800年後に造られている金貨だけでは信憑性に欠けるのだが同じく隣に描かれているアグリカの姿が髪型や羽、服装に至るまでサブイベントで登場した姿としっかり合致するのでユークロニア王も正しく再現できていると考えることができる。
仮にユークロニアの王家がクレマールとのみ交配し続けたのが初代からだとすると、モア=ユトロダイウス5世の恋の障害はかなり年季の入ったものと言えるかもしれない。
さてここからは種族変化が人為的なものとして、それぞれの経緯はどんなものだったと考えられるかについて書きたい。
⒈クレマール族 【皮角形成】
人間から最も変化に乏しい、現実にもある『症状』である。この残念仕様で種族として確立するほど増えたのは、マグラの影響で遺伝情報変わるの使えるくない!?の第一段階ゆえか。
⒉ニディア族 【成長抑制】
二番目にこの無害な生き物をつくってルサントを生む順番が怖い。対人特化の鑑賞に耐える愛玩の意図が見える。ティーカッププードル的な。赤ん坊は守られるために微笑むからね。
⒊ルサント族 【肉体強化】
シンプルに戦争に利用できる。外見からわかりやすい長い耳は兵士の識別用だったのか?
⒋――
5.ムツタリ族 【マグラの流れが見える多眼】
最も作為的なものを感じる。神器の使い手の用途としてが妥当だろう。神器も使い手も、戦争の盤面をひっくり返す兵器として大量投入されたドラゴンの数だけなくてはならない存在なのであればあるだけいい。貴重な王笏に記録され番号が振られている以上、開発が戦争時ならムツタリの特徴を持つ者はこの王笏を有する国しか量産できなかったのだろう。
⒍イシュキア族 【有翼もどき・キメラ化】
上記の通り、道楽である。王笏が戦争の表舞台に登場したかはさておき、その圧倒的な力から姿だけでも鼓舞になるのだとしたらそれを模したイシュキアも人間と違った神々しい見た目で旗手やプロパガンダなどに使えたのだろうか。
⒎パリパス族 【食肉目キメラ化】
自然に、がまだあり得なくもない。ただおそらく自分の耳を退化させてまで食肉目の真似をしたいならじゃあ四足歩行も願えよという話ではある。メリットが中途半端だ。
⒏ローグ族 【寿命を劇的に伸ばす】
種の生き残りではなく個の生き残りを願うとこうなる。なんで増えた。だが、旧世界で科学と魔法が極まり栄華を誇っても現在のエルダ族がそうであるように人間全体を長命化しなかった理由を考えると当事者以外から手が加わった実験的な種の可能性が大きい。火の鳥読んだかい。
⒐ユージフ族 【霊長目ベースをやめる】
普通にひどい。願って人間からコウモリになって種になるほど産んで増やしてしかし人みたいに生きるのが数百年単位だろうが自然でたまるか。翼手種の多くは単胎性では。
やっぱり数字が増えるたび強度が上がってんだよ……生命冒涜のバリエーションのよぉ……
加えて、願いが力だとして、滅亡戦争に対する不安感情に起因する作中終盤とは比べ物にならない大量のマグラが世にありながら事態の平定のために王笏は使われなかったのだから驚きだ。さて、他の何に使ったんだい?
冒涜というと、そもそも種族に1から番号を振っていることがまずあの物語が完結を見て進んでいく先を考えると業腹である。消えてよかったあの王笏。
この人為的を推す仮説においては生き残らせなかったか生き残れなかったか、ともかく記録は消された4番をわざわざ欠番にしてその失敗を踏まえて5から9を数えているのもごく実験的だ。
そんな情報たちが、正気を失うラスボスの姿へも出力されたように王笏の中にだけ残っていたことを思うとそこに克明に記されていた8つの種族は、
『不可能を可能にする大量のマグラの影響を無意識に受けながら適応を願った結果自然といくつかの新しい種族が生まれた』のではない。
『王笏という神器を受け継ぎ用いた旧世界の何者からによって、滅亡戦争開始から新世界の始まりの時代に継続的に、その混乱期のマグラを吸って順に利用と実験をかねて新しい種族を人間から生み出す魔法が行使された』と考えるには至らないだろうか。ニンゲンになるよりマシだろマインドで。
つまり歴史を伝えるグルデア様には大変申し訳ないのだが、語られたことが種族誕生の一つきりの真実ではない可能性があると個人的には言いたい。
0である旧世界人類の思惑と観点で誕生した種族に番号が振られている。
8つすべての種族それぞれの祖は人間により人間を変化させて造られた生き物であることもあり得なくはない。
という結論でこの考察を締めようと思う。
では、まとめ。
①ラスボス『魔王ルイカラドリウス』の8枚の羽に書かれている英アルファベットと数字は、エニアグラム性格診断の9種類のタイプとそれにおける悪徳のことである。
②メタファー・リファンタジオの種族・キャラクターの性格設定は、このエニアグラム性格診断のタイプを参考にして作られている可能性が非常に高い。
③これら番号はメタ的な意味を表すだけでなく『1〜9の種族は王笏の魔法によって人間から造り出された順に数字が振られている』ことを示しているのかもしれない。
橋野Dの開発話が待たれるところですね。
RPGのつくりかた——橋野桂と『メタファー:リファンタジオ』 さやわか著 アトラス監修
絶賛予約受付中!!!!!!!
完
©ATLUS. ©SEGA.
オマケの余談は二本立てです。
もしよろしけばそのままどうぞ。
①『旧世界人滅ぶべし』
②『ルイの破滅王は第2形態もいいぞ』
オマケの余談 その1
『旧世界人滅ぶべし』
イシュキア族が、王笏が助け生み出した覚醒ルイの羽に描かれた悪徳『6 Fear』=恐れを冠している点も少し興味深いですね。
8つの英単語の中で唯一、マグラの優良発生条件の感情だ。
王笏は新世界つまり滅亡戦争から200年ほど後か、初代ユークロニア王の手に渡って初めて人々から恐れと不安によるマグラを吸い取ることを目的として使用されたような記述が見聞録にある。
つまりそれまでの旧世界では、マグラは満ちていて然るべき。なければ自然に干渉する魔法や魔法科学が使えないのだから心の動き、特に不安感情はあるだけ良いという認識だったと考えられないだろうか。マグラは有用だ。意図的にそういう状況を調節しながら国家の側が作っていたというのはありそう。
メタ的な性格決定以外、ゲームの世界観でそれら悪徳が当て嵌められた理由については考察のしようがないのが残念です。
イシュキア族を創造したのが戦時中なら、魔法発動のためには集めておきたいマグラを効率よく生む恐れを悪徳とするイシュキア族は有用だった……というのもあり得なくはないかも。『王笏に似せてカッコイイの作っちゃった』以外の理由もあればいいなと思った次第です。拷問施設とか作った方が話が早そうだけど。
ただイシュキア族が恐れを生みやすいという描写は『ニューラスが怖がり』くらいしか思い当たらない。scaryだ、これ。
グルデア様は旧世界は『正しさの母』と呼ばれていた『恐れ』によって滅んだという。それはゲーム最終盤でこの新世界をルイが壊そうとした手段が自然に起きた、つまり『不安や恐れのマグラで世界のあらゆるものが全て完璧に恐化の影響を受けてほぼニンゲン化、獣の世界になった』ような滅亡の状況ではなかったことは、新世界の文明の立て直しの速さでわかる。ニンゲンは生まれたけれど暴れ回ったのは別の奴だし、実際に元にして種の変化が起きるほどそれなりの数の人間が戦火を逃れたはず。
つまり『恐れ』によって滅んだ、とはシンプルに『この世に生きているのが間違いすぎるやつの存在が理解できなくて恐いから、戦い仕掛けてもうクソ強ドラゴンとかどんどん投入して街襲わせてさっさと戦争終わらせようぜしね』という感情的な短慮のせいであったというニュアンスに思えます。
実際に見聞録でも、つまるところ敵味方共の想定外も外の暴れっぷりで街も国も世界すら蹂躙しぶち壊した人間文明の滅亡の直接原因はドラゴンであると書かれていた。
仮に暴走したエトのようニンゲンが乗っ取ったとして、元人間であるニンゲン程度のレベル上限なら旧世界の魔法で倒せるな……作品の隠しボスがドラゴン単体である時点でニンゲンよりドラゴンの方が脅威である。
元々が凶暴なマグラの集合体であるドラゴンが、壊れずに次の世まで受け継がれている神器の支配下にあっても何らかの影響を受けて暴れたこと、またニンゲンを生んだ魔法暴走の恐化を考えれば、それが戦争の長期間が増やし過ぎたマグラによるものだと断定するのは旧世界人にも難しいことではない。
しかし、その手痛いどころではない失敗を現在進行形で知りながらも戦中も戦直後も、魔法の源たるマグラ惜しさに恐れや不安を排除した人形のような心を持つ種族への変化を先述した仮説抜きにしても誰も望まなかった。
それどころか、マグラは投入された数多くのドラゴンを狂わせるほどそこかしこに溢れているのに『望めばどんな事でも引き起こせる』といわれる王笏のあまねく力で大陸全土全ての暴走を止めることを願わなかった。おそらくは利害を理由に。
このゲームのああいうエンディングを迎えておいてなんだけれど――滅んで然るべきでは?
滅亡を知っているお人好しで青臭い慈悲の王だった初代ユークロニア王が『不安を吸い上げる』選択をしたのもわかる。
主人公たちのような『不安や恐れをそう大きくは生まず皆が泣かないで生きていける世界をつくる』というのはその取り返しのつかない壊滅的な段階では荒唐無稽でも、変化や魔法の行使が良いか悪いかはさておき、やれたことをやらなかったのが時代の転換期の人々である。寿命伸ばしとる場合か。
完全に妄想ですが空白の4を冠する種族が『不安感情でマグラを生まない』我々異邦の旅人のように変化した人々だったら面白いですね。その種が増えて世界全体で魔法が使えなくなる前に神器持ちに淘汰された、とか。まあその場合、記録消してるところを見るに王笏関係者の仕業でしょうね。業~
オマケの余談 その2
『ルイの破滅王は第2形態もいいぞ』
ラスボス戦の第2形態では見ればわかるよう翼についた目がそれぞれの種族を表しています。
←左上から
青(瞳孔薄) ルサント族
紫(下瞼) イシュキア族
赤(赤目) ユージフ族
→右上から
灰(化粧) ローグ族
黄(縦瞳孔) パリパス族
緑(多眼) ムツタリ族
ふたつ、種族が足りなくない?
大丈夫です、ちゃんと居ます。普段は画角で隠れているものの、まだ下には左右それぞれ1枚、計2枚の羽がある。各種攻撃モーションで瞬間的に見ることができます。
それがこちら。
橙(特徴無) クレマール
虹(プリズム) ニディア
瞳孔薄と特徴無の二つについては、クレマール/ルサントのサンプルであるストロール/ヒュルケンベルグを比較した際、①ムービーシーンのモデルでは両者ガッツリ色の濃い瞳孔有り ②キャラの立ち絵だと瞳孔の描かれ方が同じ、と表現が揃わない。
ただ、上記のパーティ編成画面のみを参考にするとどちらが似ているかは一目瞭然ですのでそれぞれをクレマール/ルサントと確定させました。
画像のようにカラドリウスの第1形態は露悪的なシャドウのようなものなのか、種族を指に引っ掛けてぞんざいに扱い、贄だ何だと好き勝手どこぞの城主のようマグラを人形を食ってました。磔にされてはいますが裏は十字架ではありません。配慮ですね。
続くこの第2形態では、全員の目が虚ろなところは気になるものの、とはいえ欠けなく等しく背に負う待遇で扱われている。ルイの理念において数多の人の価値観とは異なりどこまでも種族平等の想いが揺るぎないものであったことは間違いないでしょう。
ガリカが最終盤に言ったこのセリフ。
種族平等を当たり前の価値観として掲げる両者、主人公になったキャラクターとラスボスになったキャラクターの差はひとえに信じる信じない以前の話、
平等に好いているか・平等に嫌っているかの決定的な違いによるものなのだという印象を受けました。戦闘中に名指しで滅せよとか言われればなおのこと。
立派な翼を持てど飛べず、ただ浮かせた鎧戦車に乗るだけの破滅王カラドリウス。
自らの翼と力で空を堂々と飛ぶ救国のアーキタイプ・キング。
両者の対比と当然の行く末が最後まで味わえるゲームでした。
ありがとう、メタファー:リファンタジオ。アトラスの新たなる挑戦、素晴らしいタイトルです。
©ATLUS. ©SEGA