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田口 明香/きりり農園
法人名/農園名:きりり農園
農園所在地:東京都西多摩郡瑞穂町
就農年数:7年
生産品目:野菜100種類以上(25種以上のじゃがいも、10種以上のさつまいも、菊芋などといった伝統種・在来種中心 )、70種類以上のハーブ、ブルー ベリー
HP:http://www.biogartenkiriri.com/
「農家の子供じゃないと無理」その言葉への反発が就農意欲に
■プロフィール
9歳で腹膜炎の手術・入院を経験した影響で、体育の授業はもっぱら見学の「本が友達」タイプだったが、中学校の園芸の授業で、作物を人に食べてもらう喜びを知る。
中学3年生の時に生態系について学んだことがきっかけで、有機農業に興味を持つ。高校時代には山形県へ研修に行くなど自主的に農業体験の機会を重ねた末、 東京農業大学農学部に進学する。
生態系保全型農業の研究をするうちに、オーストリア・ドイツで生まれた「バイオダイナミック有機農法」に出会う。卒業後は国際農業者交流協会(JAEC)の海外研修に参加。
ドイツの野菜農家で 1年間の研修を経て、帰国後はJAECの職員として、多くの先輩農家と出会ううちに就農意欲が高まる。5年後、埼玉県農業大学校で職業訓練を受けたのち、都内の農家で2年間の研修をおくる。
2015年12月、瑞穂町で独立就農。2017年に第一子、2020年に第二子を出産し、子育てしながら農業との両立を模索する毎日を過ごす。
東京エコ100(26 品目)、東京都GAP、有機JAS認証取得。ブルーベリーは 2022年野菜ソムリエサミット金賞、食べチョクアワード2020野菜部門 TOP30。
■農業を職業にした理由
中学時代から環境保全型の農業への関心が高かったが、高校進学時に担任教師から 「農業高校は農家の子が行くところ」と反対されて普通科高校へ進学する。
高校在学中から、自主的に多くの農家を訪ねて農作業の体験や交流を重ねるうちに就農意欲が募り、東京農業大学へ。 卒業後は、世界で最も厳しい有機認証といわれるデメター認証を受けたドイツの有機農家で研修。
帰国後、「公益社団法人国際農業者交流協会(JAEC)」で約5年間の勤務を経て、埼玉県農業大学校の職業訓練コースに進学し、農機具の操作や基礎を学び直す。
研修中に東京都瑞穂町で梅林だった農地を紹介されたことで、休日は梅の木の抜根など畑の整備を続けながら、2015年12月30日に独立。
直後に妊娠が明らかになったことで「子供か畑かどちらかを選ばなければならないかもしれない」と悩んだ時期もあったが、 地域の人たちの温かい励ましを受けて、育児と農業の両立を目差して、現在も奮闘中だ。
■農業の魅力とは
自然と人間が相手なので、当たり前といえば当たり前ですが、就農して7年が過ぎても、次から次へと未知の領域が現れることが農業の魅力だと思います。毎日、好奇心と向上心が刺激される生活です。
今までは3工程、4工程でこなしていた作業を2工程に省力化する工夫を編み出した時には、一気に先に進んだと実感したことがありました。改善して進化するのが楽しいし、経験を重ねることでレベルが着実に上がるのが嬉しい…。天井が見えないのが農業の面白さですね。
2017年と2020年に子供を出産し、コロナ禍で保育園が休園するなど、育児に時間を取られることも多いのですが、自分次第・工夫次第で少しずつでも効率化できると思っています。これから困難にあっても、工夫して克服していきたい!
また、人の温かさを実感できることも魅力のひとつです。就農準備期間中、一緒に歩んでくださった東京都農業会議や瑞穂町の農政係の方々をはじめ、研修先の農家さんや農地を貸してくれた地主の皆さんには、感謝しかありません。
最初の子を妊娠した時は、就農を応援してくれた皆さんに申し訳なく、「就農計画が守れないじゃないか」と非難されることも覚悟していましたが、瑞穂町の人たちが「子育てしながら自分らしい農業をやればいいじゃない」と肩を押してくれたことが救いになりました。
多くの人の支えがなければ、非農家出身の私が営農することはできませんでした。今後は同じ夢を持つ後輩を支えられる先輩になりたい。ずっと農業を続けることが、恩返しになると思っています。
■今後の展望
「小さい畑」を強みにしていきたい。これまでは「農地が38アールしかなく狭いから…」とか、子育て中なので規模を拡大できないとか、常にジレンマを感じていたのですが、最近では逆手にとって、小規模だからこそできることを目指しています。
たくさんの種類のじゃがいもやさつまいもを栽培しているのも、そのひとつ。効率を考えたら、単一品目を大量に生産する方が有利ですが、狭い畑だからこそ、手間がかかる多品目多品種を栽培をして「食べ比べる楽しみ」を提供しています。
ドイツの研修で好きになったハーブも70種類以上育てていますが、詰め合わせセットを作る時に、じゃがいもにローズマリーを添えることで、一皿の料理を豊かにする提案を心がけています。
「食べ比べる楽しみ」「掛け合わせる楽しみ」を付加価値にして、お客さんの顔が見える直接販売や個人宅配、産直ECなどを展開しています。
またCSA(地域支援型農業)と言って、サポーターになってくださった会員には、定期的に季節の野菜の詰め合わせの宅配も2017年から始めています。そして食品ロス解消に貢献すべく、虫食いなどで規格外になった野菜の販売も行っています。
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