保坂 景/太陽と水のホサカファーム
本業と農業は8:2。野菜セットの支払いは等価分を物々交換
■プロフィール
英ロンドン芸術大学に留学して彫刻を学んだのち、2003年外資系IT企業に入社。トレーナーやマーケティング部門を経て、2016年、医療ヘルスケア部門に就任。
業務上の必要から2017年、聖路加国際大学大学院に社会人入学し、 ITを医療機関で活用するテーマで公衆衛生学を研究。
従来より食への関心が高く、環境活動家の岡本よりたか氏の著書に出会ったことがきっかけで、ベランダ栽培を始める。
2019年、アグリイノベーション大学校に入学。1年後にはいかす平塚農場で有機農業を学びながら、横浜市内で元はネギ畑だった雑種地を取得し、開墾スタート。
2022年にはNPO法人「地球のしごと大學」で、岡本氏から循環型農業について教えを受ける。作った野菜の価格は現金ではなく、物々交換する取引で注目を集める。
食品表示診断士、日本農業技術検定、ヘルスフードカウンセラー1級取得。
■農業を職業にした理由
食や料理への興味から、不自然な加工食品や遺伝子組み換えの問題を勉強していた2017年、「たねのがっこう」を主宰する環境活動家、岡本よりたか氏の著書に出会って、プランター栽培を始めるようになる。
本で書かれていた通りに種まきから始めたが、超高層マンションのベランダだったこともあり、トマトが実らないことに疑問を感じるようになる。
そこで2019年にアグリイノベーション大学校に入学し、栽培の基礎を学ぶ。2020年には娘の小学校入学を機に、鎌倉に転居し、市民農園で栽培を開始。
2021年には神奈川県平塚市のいかす平塚農場で有機農法を学びながら、横浜市内に土地を購入し、開墾を始める。2022年からは「地球のしごと大學」に参加して、岡本氏から無肥料・循環型農業について教えを受ける。
現在は、本業と農業が8:2の割合で、固定種を中心とし、自家採種を行い、農薬を使わない野菜作りをしながら、作物に値段をつけず、等価分を物々交換するユニークなやり方で、年間60〜70件ほどの顧客を抱える。
■農業の魅力とは
全くの未経験から、3つの学校に通いました。同じ作物でも、異なる栽培方法を学べたので、3人の先生から学んだのは結果としてとても良かった。
例えばトマトなら、岡本先生の教えでは支柱を建てますが、アグリイノベーション大学校では吊り下げ、いかす平塚農場ではソバージュ栽培と異なります。
時間がなければシンプルに支柱を立てますし、準備に余裕がある時などは、アーチ型のソバージュにしたらトンネルみたいで子供が喜ぶな、という具合に選択の幅が広がりました。
農業を始めて2年になりますが、畑の様子をSNSで発信するうちに、知り合いのレストランや弁当屋から「仕入れたい」というリクエストを頂くようになったのですが、値付けの段階で困りました。
無肥料・無農薬栽培は手間がかかるので、コストに見合った価格にすると、とても高価になります。そこで生まれたのが物々交換。3,000円相当の野菜セットに対し、購入者からは、お金はいただかず、その方が選んだ等価品を貰うようにしています。
お菓子でも子供服でも、自身が愛用されている自然素材のシャンプーなどでも構いません。(今まで唯一断ったのは中古の指圧台だけ(笑))。こだわりの品には、「時間をかけて選んでくれた」という付加価値と、何が届くか分からないサプライズがあります。おかげで、さまざまな贈物が次々と自宅に届く、非常に新鮮な日々を過ごしております。
■今後の展望
本業を辞める気はありませんが、将来農業に舵を切る時があってもいいように、今は小さくても実績を積んでいきたいです。
物々交換なので、現金収入はありませんが、畑250㎡のうち、一部を貸し農園にして、その収入を購入した土地の固定資産税に充てています。
年間60〜70件の物々交換をしておりますが、野菜が足りなくなってきているので、生産面積を広げて、取引先を増やすことも視野に入れています。
就農1年目から、品目ごとの栽培管理表を作って、播種日や収穫日を記録しているのですが、野菜セットの中身を決めたり、端境期にも野菜がなくならないように、品目を決めるうえでも役立ちます。
毎日管理表を確認するのは、非常に楽しい作業です(笑)。また、自家採種にもこだわっているので、自身で種を取り、来年に繋ぐ野菜の数も増やしていきたいです。
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