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清野 友之/マスニ農園

法人名/農園名:マスニ農園
農園所在地:長野県中野市
就農年数:15年
生産品目:リンゴ「つがる」「シナノドルチェ」など各種、ブドウ「シャインマスカット」「巨峰」、白桃「あかつき」、プラムなどと、果物を使ったジュース、ジュレ、ドライフルーツなどの6次加工品
HP:http://masuni.juno.bindsite.jp/

no.196

リンゴを作るだけじゃダメ。基本はホスピタリティー。客に訴求するブランディングに力を入れる

■プロフィール

 材木業を営んでいた祖父・清野恭平氏が農業に魅力を感じて始めた果樹園の3代目として生まれ、中学時代には就農を決意。園芸高校から千葉大学園芸学部に進学して、種苗技術などを学ぶ。

 卒業後は首都圏に展開するスーパーマーケットチェーン「コモディイイダ」で青果担当として働きながら、消費者の購買行動を観察。

 結婚を機に1年で退社し、帰郷後は山ノ内町の果樹園で剪定や摘果などの研修を受けながら、実家に就農。研修先のリンゴ作りの名人農家からは、収量を増やさずとも、1個あたりの品質を高めることで、収益増を目指すという経営姿勢を学ぶ。

 2013年、マスニ農園の経営を継承。同時にターゲットとする顧客像を掘り下げ、リンゴの品質の高さを消費者に一目で理解してもらうために、プロのデザイナーと一緒に、屋号のロゴやパッケージ、販促チラシ、名刺、ホームページなどのデザインを刷新。

 2014年と2015年には、地元の経営セミナーへの参加がきっかけで、香港で国産リンゴの出張販売を経験した。

 2017年4月には、農園の出荷場内にアートを取り入れたボルダリング用のクライミングウォールを設置し、婚活パーティの会場として使われるなど、地域の新たなコミュニケーションの場として注目される。

 リンゴ以外にもブドウや白桃、プラムのほか、受粉用に飼育しているミツバチから採った非加熱ハチミツなど「面白そうだなと思ったらなんでも挑戦する」ことをポリシーとしている。

■農業を職業にした理由

 祖父が創業した果樹園を若くして継いだ父からは、幼い頃より先祖や家を大事にする考えを教えられて育てられたこともあって、農家の長男としての自覚が自然と培われ、中学時代には「将来は農業の道に進もう」と決意。

 地元の園芸高校を卒業後は、父から「良い結婚相手を見つけるつもりで」と送り出されて千葉大学園芸学部に進学した。

 卒業後は、農作物がどのように選ばれて、最終的に購買されていくのか消費者目線を学ぶために、首都圏に展開するスーパーマーケットチェーンに勤務し、青果部を担当。

 帰郷後は山ノ内町のリンゴ名人と言われる農家で、栽培技術を学びながら、父の下で働くようになる。まずは農園のブランディングのために、歴史ある「マスニ(枡+二=ますます良くしていく)」のロゴのデザインや、自社ブランディングに着手。

 経営を継承した2013年以降、香港での出張販売にも挑戦し、日本産のリンゴの品質の高さを富裕層にアピール。

 さらにジュースのほか、収穫当日に加工するジュレやドライフルーツなど六次産業化にも積極的に取り組むなど、常に消費者の目線に立ったブランドイメージの確立を目指す。

■農業の魅力とは

 スーパーの青果部で働いていた時に、お客さまの購買行動を観察していて、品質が良いものを作っていても無条件に売れるわけではないと痛感しました。

 さらに、日頃から一流の旅館やホテル、レストランを訪ねて、彼らのサービスのどんな部分がリピーターと言われるファン獲得につながっているのかを考えました。

 一流のサービスの根本には、「お客さまを楽しませたい」「喜ばせたい」という"ホスピタリティー”があります。こういった考えから、お客さまがパッと見て、農園や地域の魅力が伝わるデザインが必要だとして、屋号のロゴや販促アイテムをプロのデザイナーと一緒に考えました。

 品質の良い美味しいリンゴを作っているだけではダメなんです。マスニ農園の果物を好きそうなお客さまに訴求するデザインやストーリーを提供することがブランディングにつながるのです。

 そのためにも農業の魅力や楽しさを伝えていきたい。それも地域貢献のひとつのあり方だと思います。2023年10月には「おてつたび」を通じて募集した一般の方々に、収穫や葉摘の体験をしてもらいましたが、それもただ働いてもらうだけでなく、楽しんで行ってほしい、この経験を通じて、長野の食材の魅力を知ってほしいと思いました。

 「面白い、楽しい」は、どんな仕事であっても成長につながる本質です。出荷場にアートを組み合わせたボルダリングウォールを設置したのも「面白そうだし、楽しそうだから」。

 これは僕一人で取り組むことではなく、周囲の若い農家の仲間たちと一緒に取り組んでいくこと。これからも、いろいろな人を巻き込んでいくことで、ふるさと信州中野の農業の魅力を発信していきたいのです。

■今後の展望

 2008年の就農時に比べると、農家としてスキルが上がりました。ジュースやジュレ、ドライフルーツなどの6次産業化を始めたのは、規格外品の活用という目的もありますが、通年で販売できる加工品を取り扱うことで消費者の信頼獲得や、ブランドイメージの確立につながるからです。

 しかし、果物は本来ならば収穫したものをそのまま出荷するのが最も利益率が高いので、秀品率が上がった今、少しずつ加工の割合は減らしていきたいと考えています。

 また年に複数回作れる野菜と異なり、果樹は1年に1回しか収穫できません。毎年いろいろな課題が生まれますから、今年ダメだった部分は、来年は必ず解決しようということを目標にしています。

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