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諌山 郁美/斑尾ぼたんこしょう保存会

法人名/農園名:斑尾ぼたんこしょう保存会
農園所在地:長野県中野市
就農年数:0年
生産品目:伝統野菜ぼたんこしょうの栽培と加工品の販売
SNS:Instagram 「山の台所」

no.195

地域おこし協力隊から地元の伝統野菜の保存活動に転身!

■プロフィール

 1991年東京生まれ、埼玉育ち。東京農業大学で栄養学を専攻。
大学4年の時、先輩の実家の桃農家に1週間、住み込みで働いて、初の農業体験をする。卒業後は学校給食調理員として、埼玉県と東京都内の学校で計6年間勤務。

 同時に副業として、都電荒川線沿いにあるカフェ「都電テーブル」でホールスタッフとしてアルバイトしたり、食育イベントを企画。

 2019年、ゴールデンウィークを利用して志賀高原の山小屋でアルバイトしたところ、長野県中野市の地域おこし協力隊に出会ったことがきっかけで、中野市へ日帰りツアーに参加、また夏休みに行なった住み込み行農家体験などを通じて、移住を決意。

 2020年4月に中野市に移住してからは、地域おこし協力隊として伝統野菜「ぼたんこしょう」の保存活動を中心に情報発信などを担当しながら、実際の農作業にも参加するようになる。

 2023年3月に協力隊を卒業後、中野市に残って「斑尾(まだらお)ぼたんこしょう保存会」の会員として引き続き栽培に携わりながら、地域食材を使った弁当販売など"半農半X”の状態で活動を続ける。

■農業を職業にした理由

 〜地域おこし協力隊との出会い〜
 東京生まれで祖父母の家も近くにあったため里帰りといった経験もなく、子供の頃から『となりのトトロ』のような自然豊かな環境に憧れて育つ。

 栄養学を学ぶために進学した東京農業大学では、4年生の時に先輩の実家の桃農家を訪ねて作業の手伝いをしたことで、初めて農業の楽しさを経験。

 卒業後は小学校の給食調理の仕事をしながら、学校が休みの期間は、農業体験や食育イベントなどに積極的に参加していたが、2019年には趣味の山登りを兼ねて山小屋でアルバイトをしたゴールデンウィーク中に、長野県中野市の地域おこし協力隊と出会い、それがきっかけで移住希望者向けのツアーに参加する。

 その年の夏休みに、伝統野菜「ぼたんこしょう」の生産農家に2週間にわたってお手伝いをしたり、地元の祭りなどに参加した経験を通じて、ずっと憧れていた田舎暮らしを叶えたいと移住を決意。2020年4月からは中野市の地域おこし協力隊として活動をスタートした。

 〜ぼたんこしょうの保存活動に参加〜
 地域おこし協力隊に就任した当初は、人手不足や後継者不足の問題を抱える「中野市(の農業)を守らなければならない!」と考え込み「斑尾ぼたんこしょう保存会」の作業を手伝ったり、地域情報の発信に頑張っていたが、やがてそれでは自分が楽しくないと気づく。

 そこで協力隊2年目からは、中野市に移住した自分がまずやりたいこと、楽しんでいる姿を見せること自体が貢献だと切り替えて「ぼたんこしょうを守る」より、「生産・加工に携わっている人たちの魅力を伝えたい、応援したい」と肩の力を抜いて考えるようになった。

 地域おこし協力隊を卒業した2023年からは、引き続き保存会の一人として会員の畑を借りて、苗木100本分の栽培を担当したり、地元食材を使った料理やお弁当作りでぼたんこしょう栽培や食農イベントに携わる生活だ。

■農業の魅力とは

 標高800m程の場所にぼたんこしょうの畑があります。見上げると目の前には志賀高原の山並みと青い空が広がり、鳥のさえずりと虫の声しか聞こえません。この環境の中で体を動かし作業をするのがとても心地よく、移住を決めたきっかけにもなりました。

 また休憩時間になると、保存会のお母さん達が作ってくれた手作りのお漬物やお惣菜、中野市の果物がズラリと並びます。そこで繰り広げられる他愛のない会話をしながらのお茶の時間がとても楽しく、私の一番好きな時間です。

 就農も一度は考えましたが、金銭面的にも、覚悟の面においても、私には少しハードルが高いので、現在は"半農半X”というスタイルで活動していて、今の私にはこのスタイルがちょうど良いと感じています。

 私のように、もう少し気軽に農業に関われる環境が増えれば、もっと多くの人に農業の魅力が伝わるのではないか、と思います。

■今後の展望

 地域おこし協力隊を卒業した2023年からは、引き続きぼたんこしょう保存会の一員として、保存会の活動と畑を借りて100本のぼたんこしょうの生育とネット販売を中心に行っています。

 また「山の台所」の屋号で、地元のお母さんと一緒にふるさとの味や地元食材を使ったお弁当の販売を始めました。

 ぼたんこしょう保存会では青果の販売のみならず、規格外品で自ら加工品を作って販売を行ったり、みじん切りにして冷凍したものを味噌や漬物業者に卸しています。

 また、地元の「セブン−イレブン」とのコラボレーションで、長野・山梨エリア限定商品の開発にも携わっています。

 昔は中野市でもごく一部の限られた地域で栽培し食べられてきた野菜でしたが、ぼたんこしょう保存会の活動により現在多くの方に認知していただけるようになりました。

 伝統野菜はただ野菜というのではなく、その土地の気候や生活に根付き、土地の風土そのものをあらわしている、とてもおもしろい野菜です。

 私もぼたんこしょう保存会に出会ったことで、初めて伝統野菜という野菜に興味を持ちました。

 ぼたんこしょう保存会としてではなく、私個人としてこれから何ができるのか何をしたいのか現在模索中ですが、伝統野菜というおもしろい野菜があることを皆さんに広く知ってもらって、興味を持ってもらうきっかけ作りができたらと考えています。ぼたんこしょうだけでなく、他の伝統野菜ともコラボできたら楽しそうだなとも思っています。(記:沼田実季)

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