川島 拓/田村きのこ園
名人のしいたけを絶やしたくない!2022年、2代目を承継
■プロフィール
筑波大学の生命環境学群(農学部)で農業経済学の研究をしながら、アルバイト先の農家で農作業を始め、酒蔵で醸造を経験したことがきっかけで農業を志すようになる。
大学卒業後は、農業経営を学ぶために日本政策金融公庫に就職し、赴任先の北海道で、稚内から富良野、美瑛(びえい)を担当し、農家への融資審査や営業を2年間担当。
新規就農を目指して故郷・茨城県に戻ったが、当時の国の補助金制度の変更で研修手当が受けられないことがわかったことから断念する。
2019年4月、笠間市が募集していた「地域おこし協力隊」に応募。協力隊の活動で生産者取材を続けるなかで、訪れた田村きのこ園でジャンボ椎茸に感動して弟子入りを決める。
地域おこし協力隊の活動を修了した2022年4月に田村きのこ園を事業承継し、現在は栽培を学びながら、販売体制の強化を中心に経営に携わる。
■農業を職業にした理由
新規就農を志し、脱サラして帰郷。補助金制度を利用して農業研修を受けようとしたが、当時の制度変更によってかなわないことがわかったため、笠間地域おこし協力隊の活動に応募する。
農業公社のホームページ更新のために、笠間市内の農家を訪問していた2019年、しいたけ生産歴65年の茸匠、田村仁久郎さんに出会う。「福王しいたけ」と名付けられたジャンボしいたけに感動して、東京のマルシェなどでも積極的に宣伝・販売していたが、栽培の後継者がいない田村さんが、自分の代で生産をやめる考えだと知って悩むように…。
そこで2019年末、福王しいたけを未来に残そうと一念発起して、「しいたけ作りを教えてほしい」と弟子入り。地域おこし協力隊の活動を続けながら、田村さんについて生産技術を学び、協力隊の活動を修了した2022年4月に就農し、経営権を引き継ぐ。
■農業の魅力とは
親方の田村仁久郎さんが作るしいたけは、カサの直径が10cm、厚さ3cm以上と肉厚なもので、アワビのような食感とあふれ出す旨味で一流ホテルの料理人やシェフから高い評価を得ています。
菌床から手作りし、味を追求するために通年栽培を止めて、通常の倍以上の時間をかけた独自の栽培方法で年間8,000kg近く生産しています。
田村さんは、天皇陛下へ献上したり、農林水産大臣賞を受賞したりするなど茸匠と呼ばれる名人なのですが、コロナ禍では売り先が見つからないしいたけを大量に余らせるなど販売方法に悩んでいました。
そこで私は、ホームページを作ってネット販売をスタートしたり、チラシを作ってマルシェで配ったりして、新しいお客さんの獲得に努めています。
師匠のしいたけは、これまで買える場所が道の駅や直売所に限られていました。今は師匠のもとで生産を学びながら、販売体制の拡充に力を入れています。
SNSや口コミのおかげで、最近では市外や県外などから買いに来てくれるお客さまが増えていて、頑張ったら頑張った分だけ結果につながるのが農業の魅力だと感じています。
■今後の展望
自然のなかで美味しいものを作って食べてもらったり、わざわざ遠くから買いに来てもらうことに喜びを感じています。
農業で必要以上に儲けたいという気持ちはありませんが、私がケガしたり病気になったりした場合、福王しいたけが途絶えてしまうことは避けたいので、将来は従業員を雇用して組織化していきたいと考えております。
雇用のためには、事業規模を拡大する必要があります。また、遠方から買い求めに来てくださるお客さまのためにも、直売所の整備を進めて、地域に開かれた農家を目指していきます。
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