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【#ゲームの作り方】【#かなえたい夢】硬派な三国志ゲームをツクール
はじめに
コーエーの人気ゲーム「三國志」シリーズは、多くの小説や映画と同じく、三国志演義をベースにした二次創作物です。
noteでも多くの記事で解説されている通り、三国志演義(以下、単に「演義」)は、歴史書である「三国志」(以下、正史)を下敷きにしながら「史実七割、虚構三割」を目指した創作物。
「え、演義ベースってことはつまりIFシナリオばかりってことじゃん。なんで正史をベースにしないの?」に対する答えは単純で、「正史では売れないから」です。
正史ベースのゲームは、
過去にいくつもの作品が登場して、そしてひっそりと消えていきました。
ウルフチームの「天舞 三国志正史」「同 満漢全席」などのシリーズ、天水ソフトウェアの「私説三国志」「後漢志」・・。
「それらはどうして売れなかったの?」に対する答えも単純で、「(コーエーより)完成度が低かったから」です。
有機農法にこだわった野菜でも、おいしくなければ売れないのと同じ。
「じゃあ、コーエーのゲームで史実に忠実なシナリオを作ればいいんじゃないの?」に対して個人が答えるのは難しいですが、その一つの解を、ここで紹介します。
三国志ツクール
ちょうど10年前の2015年に、コーエーの「三国志30周年」を記念して発売された「三国志ツクール」があります。
この三国志ツクール(以下、単に「ツクール」)では、おなじみの「新武将登録」や「顔登録」のほかに、「シナリオ編集」ができる。
この機能を使えば、新武将を「追加する」だけでなく、武将のステータスを変更することで、創作世界の住人である周倉や刑道栄などを「登場させない」こともできるわけです。
そうやって、正史(「三国志」「後漢書」「晋書」)のみを根拠とする、硬派なシナリオを作れるのではないか。
このすばらしいツールの唯一の欠点は、ゲームのベースがかなり古い「三國志II」であることですかね。
しかし、前例はないのでしょうか。
ただ架空の人物を除外して実在する人物で補うというだけなら、とんでもない発想というわけではなく、ありふれたアイデアです。
すでに出来の良いシナリオが多数あるのではなかろうか。
それであれば、自分で作ろうとせずに、それで遊べば十分ではないのか。
ということで、筆者が調べて辿り着いたのは、この三例です。
織風斎さんのページ
こちらでは、後漢末のシナリオを多数、正史ベースで作って公開していました。
190年「反董卓の会盟」
194年「群雄割拠」
196年「皇帝東へ」
198年「呂布討伐戦」
200年「官渡の戦い」
208年「赤壁の戦い」
これらのシナリオでは約800名の武将が登場するということです。
オリジナルの「三國志II」が357名ですから、2倍以上になっている。
道成由麻さんのブログ
こちらでは、いろいろな時代の中国を舞台にしたシナリオを作って公開しているようです。
その中には三国時代に近いもの(司馬炎死後の、西晋の混乱期)がありますので、魏末晋初の国データや人物は参考にできるはずです。
しかし、データがアップロードされたURLが死んでおり、内容を知ることができません。
ブログ内の記事でも、「コーエーが公式のサーバーを用意してくれたらよかった」と書いてありました。
そもそも他者の作ったシナリオをプレイできると謳うのならば
それ用の場所くらい、コーエーが用意してほしいものなんですが
当時も言ったことですが、そもそも、
コーエーがアップロードの場を設けていないのがおかしい
つまり、コーエーが「公式のデータ共有の場所を作り、一般からシナリオを募集して、完成度の高い作品を表彰する」というエコシステムを構築しなかったことが見て取れます。
萬寵寧(MANCHONE)さんのサイト
https://manchone.jimdosite.com/三国志ツクール/
こちらでは、三国時代ではなく始皇帝の時代を舞台にしたシナリオを作って公開しています。
そして、MANCHONEさんは、ツクール用以外にも「戦国史」用のシナリオも多数作成しています。
「戦国史」は日本の戦国時代を舞台にしたシェアウェアですが、エディット機能で地図を変更できるため、古今東西(や、架空世界)のシナリオを作ることが可能です。
その中に三国志をテーマにした「中原の覇者~天舞三国志~」があり、例えば190年1月開始のシナリオ(東漢春秋)では「エリア数127、群雄数53、武将数1039」と、かなりボリュームが大きい力作です。
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データの形式が違うけれども、群雄間の力関係や登場人物は、参考にできるのではないかと思います。
検討した結果、
これらのサイトで公開されているシナリオの本気度はどれも高く、とくに織風斎さんのページではほぼ2年ごとにシナリオが設定されています。
これなら新たに作る意味がないのではないか・・・とも思ったのですが、唯一の弱点を見つけました。
190年と194年の間、つまり192年です。
この192(初平三)年という年は、激動の後漢末にあっても特別に面白い。
初平・興平年間(190~195年)に、二袁(袁紹・袁術)がそれぞれに同盟者を集めて戦わせていたからで、その中で曹操がもまれて台頭してくる過程が興味深い。
コーエーもそのことに気づいているようで、三国志14のパワーアップキットでは、「二袁の思惑」という191年10月開始のシナリオが入りました。
この二袁の対立については別途書くとして、ひとまず簡単に、「三国志全人物事典」巻末の年表から192年の欄を抜き出してみます。
・袁紹、公孫瓚を界橋に破る。
・王允・呂布、董卓を殺す。
・曹操、兗州牧に迎えられ、青州の黄巾三十余万を降し、精鋭を収めて「青州兵」と号する。
・李傕・郭汜、王允を殺し、長安を占拠する。呂布、長安を脱出して関東に。
・孫堅、劉表の将黄祖と戦って陣没、孫策、後を継ぐ。
どうでしょうか。これだけの大事件が並ぶ年は、ほかにありませんよね。
ただ、最後の事件だけは、本当に192年の出来事だったのか疑問符がつくもので、こちらの記事で特集しています。
192年開始のシナリオが世の中にあまりないのは、まさに、「この年のどこを切り取るかで、バランスが簡単に崩れるので、難しい」からでしょう。
この、難しい作業に、挑んでいきます。
不定期にはなりますが、作業の進捗・過程を記事にしていき、完成したらデータを公開しようと思います。
余談
192年シナリオを考える際に、ポイントとなる人物がいます。(本当は何人もいるのですが、あえて一人だけ。)
「臧洪(字は子源)」です。
彼は正史に伝がある。それどころか『魏書 巻七』のタイトルは「呂布臧洪伝」ですから、呂布と並ぶほどの人物です。(少なくとも、陳寿はそう見ていた。)
参考:
呂布が初平・興平年間の引っかき回し役だとしたら、彼はスピンオフ映画の主役のような存在ですね。
しかしなぜか『演義』には登場しないため、長らくコーエーのゲームにも登場しませんでした。
ようやく三国志13から登場していますが、その能力値は、13では「統率72、武力81、知力65、政治24」、14では「統率68、武力49、知略73、政治76、魅力80」と、評価がブレブレです。
この臧洪のような、埋もれている人物にスポットライトを当てたい。
それこそが、筆者の本当の「かなえたい夢」なのです。
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