「ナノ会議」2019年の振り返り
「ナノ会議」というのは事務所主催で月一で行なっているトークイベントを6月よりはじめました。内々で行う勉強会は何度か行なっていたのですが、せっかくなら自由に参加できる場としようと思いはじめました。半年ほど運営し、あっという間の5回でしたが、開催して感じたことを書いてみます。
勢いで始めましたが、思い返せばなかなか大変でした。最初が特に大変で、登壇していただく方を決めて、予定の調整。ある程度何人か決まると少し余裕はできましたが、当然本業の設計をしながら、ゲストを決め、交渉し、ポスターをつくり、告知をし、打ち合わせ、そしてリサーチ。終わってからきちんと感想などまとめられると良かったのですが、すべての会でそれがやれなかったのは反省点です。反省も込めてまとめて、少しずつではありますが感想をまとめます。
これまでのゲストを振り返るとデザインリサーチャーから始まり、ランドスケーピスト、サラリーマンギャラリストと来て、展示技術者。第5回でようやく建築士/デザイナー。実に多岐に渡る方々に登壇いただきました。なるべく得体のわからない方(登壇者には失礼かもしれませんが)をセレクトしています。
まだ社会にあまり認知されていない職能の方、なんとなく聞いたことはあっても馴染みがなかったり、既存の枠から少しはみ出ていたり、そのような方を中心に登壇いただきました。そして、これはレクチャーではなくあくまでも会議です。一方的なレクチャーではなく参加者全員でわざわざ会って話す場です。せっかくなら何かを感じ、何かに気付き、それを持ち帰り展開できたり、応用できるような時間にしたいという思いです。そしてレクチャーについても単なる変わった職業や人を紹介するにとどまらず、今後の展望や、未来を考えるきっかけをゲストにも与えられるようにに工夫をしました。
第1回目は浅野さん(ヤンバル)学生時代からの友人で、名古屋と京都を行ったり来たりしている彼に近年のデザインリサーチャーとしての活動と今後の名古屋に対する思いなどを聞きたかったことから第一回にお呼びしました。「ヤバい未来のはじめかた」とタイトルからすでにヤバさは出ていました。普段目にすることのない世界で起きている最新の技術、デザイン、それが未来にどう応用されるかなど、話は多岐に渡りました。マイナスのヤバさではなく、ワクワクする、まぶしいくらいに明るい、温度の高いヤバさについてお話いただきました。
第2回はランドスキップ代表の溝口さん。庭に関わる仕事をされていて、Landscapistとして活動をされています。一言で説明すると庭をつくる方ですが、肩書の広義の意味としては「風景をつくる人」です。素晴らしい仕事だと思い、共感する部分は多くあります。私たちは建築をつくることで風景をつくっているとも言えるので、建築とは近いようでその手法や思考が異なる部分の違いが興味の深かったです。これまでの実作を中心に写真を細かく解説いただき、何気なく見ている庭の見方が変わるような回でした。建物や庭がある中で風景をどのように組み立てていくか、その地域の特性や文脈を読み解き、さまざまな素材を用いて空間をつくっていくことに親近感がわきました。
第3回は本山にあるgallery Nの二宮さん。事務所のある東山公園駅から一駅です。住宅兼ギャラリーはサポーズデザインオフィスの設計で、学生の頃から通っていたギャラリーです。住宅づくりから始まり、Nの立ち上げ、そしてこれまでの活動についてお話しいただきました。展示はアーティスト毎に当然異なりますが、空間の使いこなしの多様さを概観でき、紹介されたアートも丁寧に説明いただくことでの作品に対する理解も深まりました。作家とギャラリストの関係は普段聞けることでもないのですが、会場にはアーティストも来られていて、双方のお話が聞くことができました。これまでも数々の展覧会がつくられていて、これからもたくさんの作品に触れられることが楽しみです。
第4回は国内外のアートイベントにてアーティストと展示をつくる技術者として活躍されている宮路さん。自身も主に国外で、アーティストとしても活動もされています。
展示技術者であり、アーティストという肩書ですが、これまでの経験や作品に対して説明をするような話しには全然とどまらず、学生時代や自身の作品については序論に過ぎず、自身の考えの根底にあるメディア論、入れ物と中身の関係、作品自体の外側をつくる、など多岐に渡る話となりました。社会、歴史、哲学、建築、などを横断しながら論理的な切り口で来場者はおそらく展示技術者?とハテナが飛んだかと思います。幅広く、深度のある思考を持ちながらも、展示技術者として活動する事自体が不思議だったりしますが、今後作品をいかにしてつくっていくか期待大です。
第5回は小野さんです。愛知県豊田市で建築士/デザイナーとして活動されています。活動が非常に多岐に渡り、いくつもの理事をされていて、たくさんの顔をお持ちです。豊田駅周辺での活動を中心にお話いただきましたが、話を聞くほどに何者かわからなくなっていったのが正直な感想です。プロダクト、パブリックファニチャー、リノベーション、イベントの企画などなどなど。まち医者ではなく、「まちの薬剤師」のような動き方をされているように感じました。じわじわ効いてくる薬を出していき、少しずつ町が健康になっていくような活動と言えると思います。決して大きな変化でガラッと変えてしまうのではなく、着実に良くなっていくようなまちのあり方。成長が今後も楽しみです。
以上簡単ではありますが、振り返りました。毎月なにか自分たちの普段の思考とは違うことについて学ぶ機会として楽しんでいます。これは継続すれば大きな財産となります。凝り固まったの思考を月一で和らげってもらっているような体験で得るものが多くあります。
最後に。
年明けで確定している予定です。
第7回 1/31金「それでも建築は動いている」
哲学研究者/中村啓介
イベントページ
第8回 2/29金「多元的に」
fabricscape/fabricscape代表 山本紀代彦
これまで学生から社会人までいろんな方にお越しいただくことができ、毎回楽しんでいます。初めてお会いする方や何度も来てくれる方もいて、来年も1年間休まずに続けたいと思います。登壇頂いた方、お越しいただいた方ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。