第20回ナノ会議レポート「風景となる居場所/居場所をなす構造」建築家 柿木佑介
〇はじめに
はじめまして、ナノメートルアーキテクチャースタッフの松原成佳です。
今回で20回目の開催となったナノ会議。節目になる回のゲストは、建築家として活躍されているパーシモンズヒルズの柿木佑介さんです。
トークテーマは、「風景となる居場所/居場所をなす構造」とし、建築空間の主となる「居場所」についてハッと驚くようなお話をいただきました。
〇風景となる場所/居場所をなす構成とは?
柿木さんは最初に、風景となる居場所とは、そこに参加したくなる、心に残るイメージを思い起こさせるものだ。と興味深いテーマを与えて頂きました。
一例として、路上に置き看板や客席を禁止されているようなサインが出ていても、人々はお構いなしに椅子やテーブルを並べている様子が、人々のアクティブな行動を引き出している、というものがあります。なぜ、人々は禁止されているにもかかわらず路上に椅子やテーブルを置くのでしょうか。それには、居場所とするような構造があります。先述した場所を注意深く観察してみると、窓がない建物の外壁と、地面に引かれた白線によって、「ここにおいてもいいんだ」と思わせる構造ができていました。このような心理的な要因から人々の行動を駆り立て、風景となる居場所を成していました。
また、近年人々の行動を抑制するような風景がしばしば見受けられます。例えば高架下の土台の表面に突起を配置して居座れないようにしたり、ベンチにも寝転がれないよう手すりが配置されたりしています。そのような人の居場所を消している風景が、よりよい空間にできればいいなと感じました。
以上のような街の構成が人々の心理に訴えかけることで、居場所が拡がっていることに空間の可能性を感じました。
〇ナノ会議での柿木さん
ナノ会議の雰囲気はとても賑やかでした。柿木さんは、イラストや例え話を踏みながら冗談混じりに話されていて、ユーモア溢れる方だと感じました。
また、設計活動以外にも、とある物件の社外報の漫画も描かれているようです。特に、柿をモチーフにしたキャラクターが出てくるコラムが特に面白かったです。語尾がシモンのキャラクターに、会場では笑いが起きていました。(柿は英語でパーシモン)
〇おわりに
街の構成から人々の活動をよく観察することで、発見出来る居場所があるということを再認識し、居場所とは何かと考えさせられるお話でした。この観点を建築にも応用し、新たな風景を作り出すことが、今後建築空間を豊かにするヒントだと感じました。個人的な感想としては、私の卒業設計は看板から人々のアクティブを誘発するような建築群をテーマとしていたので、それと共通した話題が多くとても興味深い会で楽しかったです。
大変学びのある回でした。柿木さん、ありがとうございました!
ナノメートルアーキテクチャー スタッフ松原成佳
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