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第21回ナノ会議「作品としての家、住むための家」建築家 五十嵐理人


〇はじめに
 こんにちは、ナノメートルアーキテクチャースタッフの原田です。
2024年の第1回目、累計21回目の開催となったナノ会議。ゲストは、代表三谷のかつての戦友でもある建築家、五十嵐理人さん。
 テーマは「作品としての家、住むための家」です。

〇誰のために作るのか?
 「誰のために作るのか?」、本会議の中で、最も印象的な言葉でした。建築をつくる際、一般に設計者・クライアント・施工者といった人物が登場します。そして、それぞれがデザイン性や工事費、つくりやすさなどをはじめとする設計に関する様々な要素を各々異なる割合で大切にしていると言います(下図参照)。クライアントから設計者に依頼がある以上、設計者はクライアントのために設計することは間違いありませんが、例えば実際の現場では施工者が施工しやすいよう、デザインを調整するといったことが起こります。それ自体は工事費の減額につながるため、最終的にクライアントのためになるのですが、その時点では施工者のため、という動きが起こります。このような実態に対し、建築を「誰のために作るのか」という問いを持っているそうです。

五十嵐さんによる、登場人物それぞれが求めるものとその重なりを表現したダイアグラム。

〇作品から見る問いへの回答
 五十嵐さんの設計は、RC造を採用した作品が多い印象を受けます。ここに、先の問いに対する五十嵐さんなりの答えがあると感じました。「木造や鉄骨造の(仕上げを)ペタペタ張る感じが好きではない」と五十嵐さんは話します。クライアントよっては、どんな架構が組まれているかとか、どんな特別な仕上げが使われているかとか、そういった設計者のこだわりが求められていないことも少なくはありません。そのような両者の齟齬を無くし、あくまでクライアントのための設計を実現するため、RC造の必要以上の言語を付加しない、明快な設計を選択している部分もあるのではないでしょうか。また、複雑な架構を要しないRC造は施工の簡略化にも貢献していると考えられます。設計者・クライアント・施工者、これら登場人物の「〇〇のため」が最もバランスよく取れる設計を実現するうえで、RC造という選択はある種理にかなっているのかもしれません。

意匠的にこだわりつつも、明快に設計されたRC造の店舗。

〇おわりに
 先にも記載した通り、やはりクライアントから依頼がある以上、まずは彼らのために努め、彼らの望みを叶えることは大前提でしょう。ですが、建築家の職能を考えたとき、その役割はクライアントのため、という範疇に納まるべきではないと考えています。幸せをつくる対象を彼らのみとせず、彼らを取り巻く環境や社会全体にまで視野を広げ、作品を位置づけることも大切だと感じます。その場合「〇〇のため」の対象が収拾がつかなくなってしまいそうではありますが、その課題に悩みながらも作品を磨き上げることに意味がある、と信じたいです。

設計者に求められる職能とは何か、そんなことを考えさせられる回でした。

次回は2024.4.12 に勝崎さんをお招きします。DaLa木工、金山の高架下に突如現れた24pillarsのオーナーです。様々な兼業がありますが、木工×飲食で何が起きているのかじっくり話を聞き、体験できる会です。一次会はいつも通りナノオフィス、二次会では24pillarsへ移動しての開催です。二次会では24pillarsへ移動しておこないます。

次回、第22回ナノ会議


申し込み
https://nanokaigi22.peatix.com/view

過去のアーカイブ

youtubeチャンネル にて随時更新していきます。
第12回「SNS・Webを活用した建築人の生き残り方」マーケター/youtuber しばたまる
第11回「 照明器具をつくること、光環境を考えること」/池畑善志郎
第10回「建築と写真のあいだ」/建築写真家 ToLoLo studio 中村マユ
第9回 「挑戦と調整」/建築家 瀧尻賢

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