Street Story 06 【裸足のまんまで】

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「起床~ 起床~」


寮生活の一日はこの館内放送から始まる。


眠たい目を擦りながら、ゾロゾロとグランドに集まる寮生達。

僕もその群れに混じってグランドへと向かっていた。


点呼が終わり、寮の掃除が始まる。
(※点呼とは寮生が全員いるか確認する作業?のこと)


眠い…。


それもそのハズだ。なぜなら僕は数時間前まで繁華街にいたのだから。

数時間前なのに『夢』の中での出来事のようだ。


初めて真夜中の繁華街に行き、初めて人前でギターを弾きながら歌った。

眠さも手伝ってか、半分「夢遊病」の状態で中庭の掃除をしていた。

中学時代の僕はといえば、「部活バカ」と言われてもおかしくないくらいに、毎日が部活の日々だった。


僕が所属していたのは剣道部。
実は、実家が佐賀なのに熊本の私立中学校に通っていたのもそれが理由。

剣道は兄の影響で5才から始めた。
通っていた道場が強かったこともあり、小学校時代も全国大会などに出場していた。


そういう理由から、僕のイトコと同級生の友達と3人で熊本の中学校に通うことになった。


その中学校もスポーツが盛んな学校で、剣道部も強く、僕が中学3年の時は全国大会で準優勝という輝かしい成績を残した。


ものすごく強かった。


彼らは…。


意味深な表現になってしまったが、全国大会の時の僕は応援席で一生懸命に拍手をしていた。

全国大会だけではない、県大会もそう。地区大会もそう。

中学時代、僕はほとんど試合に出場したことがない。

剣道部において僕はダメダメな奴だったんだ。


別にサボってたワケじゃなくて、本当に周りのやつらに勝てなかった。


一緒に佐賀から行ってたイトコはメチャクチャ強かったし(大学時代にも日本一になってるし)、同級生も強かったし、しまいにはレギュラーの座を下級生に取られるし…。


実力主義の世界だから仕方ないことなんだろうけど。。


正直、僕はそんな中で毎日部活をするのが苦痛でしかなかった。


当時の僕はかなりのチビッコで、体力もなかったが、一番足りなかったものは『実力』だった。

正しくいうと、「自分を信じて努力することが『実力』になっていく」ということに気付いてなかった。

負け続けの日々を送っていると自分自身がイヤになってしまう。

試合に出れないのに練習をするのもイヤ。かといって、辞めてしまうのもイヤ。

辞めることなどを考えると、家を出て県外の私立に通わせてくれている親の顔がどうしても出てきてしまう。

できれば、試合に出て頑張っている姿を見せてあげたい。

でも、今の自分は応援席で拍手係として座っている。


情けなくて、自分自身を嫌いになったことも多々あった。
そして、自分を信じれなくなったことも幾度となくあった。

そんな僕において「大石さん」という存在はすごく輝いて見えていたんだ。

あんなに大勢の人の中で、歌がヘタクソでも大声で胸張って歌っている「大石さん」が大きく見えた。

僕が路上で歌うようになったのは、中学3年の夏。
たぶん全国大会の少し前だったと思う。


もう少し早く「大石さん」と仲良くなっていれば…


♪裸足のまんまで笑われても 
 裸足のまんまで立たされても
 裸足のまんまで責められても
 おれはおれを信じてやる  ♪


もう少し早くこの歌に出会っていれば、すべてを吹っ切って選手選考の部内試合をやれたのかもしれない。

20代半ばで今さら言っても遅すぎるんだけどね…。
(注:執筆時は20代半ばでした。。笑)


前章でも書いたけど、一番大切なことは

「自分が今やってることに胸張れるかどうか」なんだと思う。

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いまそういう状況にいる人がいたら、目一杯やってみてください。


中学3年間、高校3年間、社会人になってからもそう、タイムリミットある人ない人それぞれでしょう。

それに不安や迷いなんて、どんな時だってつきまとってくるでしょう。

でも、その瞬間に目一杯やって「おれ今これに夢中なんだ!!」って言えるかどうか、時が経って「当時はあれに夢中だったんだ!!」って胸張って言えるかどうか、たぶんそれが重要なんだと思う。


おれもいま現時点においてその『瞬間』のど真ん中です。


これからもそうだと思うけど。


んで、当時のおれはというと、「裸足のまんまで」を覚えることに夢中になってました^^;

(「剣道は??」というツッコミは勘弁してください:笑)


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つづく

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