コミュニケーション能力を圧倒的なレベルに持っていくスキル
コーチングを訓練すると、コミュニケーション能力が飛躍的に伸びるが、しかしリーダーになって多くの人を導く立場になった場合や、自分の伝えたいことを確実に相手に伝えることが必要な立場になった場合は、コーチングのスキルだけではカバーできない。
コーチングは1対1のコミュニケーションにおいてすばらしい聞き役になるには非常に優れたメソッドであるが、1対多人数のコミュニケーションの場合は別のスキルが必要になってくる。
そのスキルとは何か?
それはズバリ、プレゼンテーション能力だ。(プレゼン力)
この記事ではプレゼン力を高める練習の方法も書いたので、4−5人の練習仲間を見つけ、ぜひ試していただきたい。
多人数を前にして話す自信がなかったアメリカ留学時代
僕が初めてアメリカに留学した時、一番戸惑ったのがプレゼンである。 アメリカの学校の授業は、グループワークが多くあり、それを皆の前で発表させられる。
僕は日本では高校でも大学でもほとんどプレゼンをする機会がなかったので、壇上で皆の注目が集まると、一気に口がこわばり、足がすくみ、自分が何を言っているのかもわからなくなってしまうことがよくあった。
しかしアメリカ人の学生たちは、多少緊張してはいるもののいつも楽しそうにプレゼンをしているように見えた。
そして次に戸惑ったのが、パーティーだ。海外でパーティーに参加すると、誰も何も紹介してくれない放置プレイのような状況に出くわすことが多い。
日本でのパーティだとゲームがあったり、知っている人同士のグループになるよう配慮がしてあったりして、段取りがしっかりしている。そのため、安心して参加することができるが、海外のパーティーだったりすると、自由すぎて自分で話す人を見つけていかないと部屋の隅でグラスを片手に傍観する人になってしまい、苦痛な時間を過ごすことになる。
そしてそういったパーティーだと大体5−6人のグループが自然と出来上がって話が始まることが多く、そこで存在を示すには自分も率先して話さなければならないのだが、自分が話す時にその4人ー5人の注目が一斉に自分に向かってくる。
その時、複数の相手を前に話を人に聞いてもらう技術と自信があると、そこが文字どおり独壇場に変わるが、そうでない場合は話をせずにただ笑って過ごすしかなくなる。
僕は留学中にパーティーに参加した際、ビールの入ったグラスに隠れながら、部屋の隅で無理やり笑顔を作っていたことがよくあった。
それだけでなく、仕事に就いてからお客を交えての会議でも、僕はよく発言することなしに、頷くだけの参加をしていたのも記憶している。
プレゼン力をつけたあとの自分
その苦い経験から10年以上たち、NLPのトレーナーズトレーニングでプレゼンをみっちり修行してからは、欧米スタイルの自由なパーティーが大好物になり、パーティーで交際相手が見つかったり、仕事上のコンタクトを得るようになった。 そして会議でも積極的に意見を言うようになり、自分が存在感を示せるようになった。
NLPではプラクティショナーコースとマスタープラクティショナーコースを終了すると、次はトレーナーコースが待っている。 正確にはトレーナーズトレーニングと呼ばれるこのコースは文字どおりNLPトレーナーをトレーニング(養成)するコースだ。
プラクティショナーコースや、マスタープラクティショナーコースではひたすら参加者同士がペアになって新しい技術を練習するのに対して、トレーナーズトレーニングは5人ないし6人、もしくはそれ以上のグループに別れ、ひたすらプレゼンの練習をする。 3週間のトレーニング期間中、毎日1回はプレゼンをさせられる。
最初のうちは、自分でも何を話しているかわからなくなってしまうぐらい緊張してしまうのだが、トレーニング2週間目になってくると、人前で話すのが楽しみになり、多くの人に何かを伝えたくてしょうがなくなってくるから不思議だ。
僕はトレーニング終了時には、多人数の聴衆を前に自分の話す内容がどのくらい受け入れられているのか反応を見ながら話すことができるようになった。 そのため、相手が一人の場合は全くの初対面であっても、余裕を持って自分がいいたいことをあますところなく伝える自信がついた。
プレゼン上達のための具体的な練習法の例
さて、プレゼンの練習といっても実際にはどのようなことをやるのかあなたも知りたいと思うので、上記の通り、NLPトレーナーズトレーニングで
行われたプレゼンの練習の一つをシェアしたい。
マイナスの負荷をかけるプレゼン練習法
プレゼンの時、いちばんの僕の悪い癖は体が動いてしまうことだった。 聴衆の意識が僕に集中すると、緊張のためか、歩き回ったり、手を話と関係ないところで動かしてしまったり、目線がキョロキョロしてしまったりしていたことがよくあった。
そしてもう一つの悪い癖は、聴衆の注目や、動きが気になって緊張して話ができなくなってしまうことだった。
それらを矯正するのが、次に示すプレゼンの練習法だ。
まずプレゼンの練習をするにあたって練習仲間を4−5人集める。そして一人ずつ計3種類の練習を順繰りに行う。
1週目
まずプレゼンをする役の人が壇上にたち、他の参加者は、聴衆としてプレゼン役を見るのだが、その際、プレゼン役の人は、5分間何も話さず、体は直立不動の体制を保持する。簡単に思えるかもしれないが、実際やってみるときつい練習であることがわかる。
最初の2分間は非常に不快な沈黙で、その沈黙の重圧の責任が自分に全部あるように感じて、何か話したくなるし、体をどうしても動かしたくなる。
しかし3分ほど経つと、だんだん、自分の体の中に起こるこういった不快感を冷静に傍観できる自分を発見できる。 NLPでいう、ディソシエーションができてくるのだ。
”まあ体は不快だけど、心まで不快にしなくていいんだ”
と思うようになる。 最後の1分間は、すごい気持ちが悪いことは確かだけど、そんなに大したことでもないなと思えるようになる。
2週目
次にプレゼン役の人は、あるテーマ(例えば心に残った旅行など)に沿って話を聴衆に向かってする。 そしてこの時も体は一切動かしてはいけない。 これも結構きつい。この練習で、いかに自分が話をしている時に体を動かしているかがわかる。
そしてこの練習の目的は、体の無駄な動きをなくすためにある。 だらだらと手を動かしたり、顔の表情を動かすと、いざ本当に身振りで伝えなくてはいけない時に、ボディーランゲージのメッセージ効果が薄れる。
例えば、驚いた話をしている時、両手を上げて、目を丸くさせると、伝わる効果が動かない時と比べて倍増するが、驚いた話をしていない時に目を動かしていたり、両手を動かしていたりすると、聴衆は混乱する。 壇上を移動するときも、この場所に立つときは過去の話をする、ここに立つと未来の話、ここに立つとポジティブな話、ここに立つとネガティブな話、と決まっていれば聴衆も潜在意識的にしっくりくるが、あてもなく歩き回ると伝わる効果が半減する。 体を動かさないことになれることによって、本番のプレゼンでは能動的に、かつ戦略的にボディーランゲージを使えるようになる。
3週目
最後の練習は、自分にとってプレゼンの時に一番起こって欲しくないことを紙に書く。 そしてそのコピーを他の参加者全員に配り、それを自分のプレゼンの時に、再現してもらう。 英語でこれをワーストケース(最悪の)シナリオというが、これを聴衆役の人にやってもらう。
例えば僕の例でいうと、聴衆の中にあくびをする人がいたり、隣の人と私語を始めたり、勝手に退場してしまったり、笑いを取るべきところで、沈黙したり、何を話してもほとんど反応がないなどがプレゼンにおけるワーストケースシナリオであったが、それを全て参加者に再現してもらった。
クラスメートであって、練習とわかっていてもいざそれをやられると、自分の心がざわつき、そしてイラつき、プレゼンどころではないと思い始める。 しかしそれでも続けていると、だんだんイライラが静まり、自分が悪いのではないと思うようになり、淡々と予定通りにプレゼンを進めようという気持ちになってくる。
トレーニング期間中この圧迫的なプレゼン練習は1セットしか行われなかったが、僕にとっては、これがプレゼンに対する恐怖を一気に拭ってくれる経験であった。 あなたももし、僕と同じような癖があるならばぜひ、このプレゼンの練習を試していただきたい。
まとめ
コーチングの技術を学ぶと1対1のコミュニケーション能力を飛躍的にアップさせることができるが、1対多人数のコミュニケーションの場合、プレゼンテーションのスキルが必要になってくる。 プレゼンは、自分の心のマネージメントができるかできないかで、結果が大きく変わってくる。 そしてそれは効果的なトレーニングをすることによって、短期間で劇的に結果が出る。 そして1対多人数のコミュニケーションに自信がつくと、1対1のコミュニケーションに圧倒的な余裕が生まれる。