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Houkago Grind Time - Bakyunsified (Moe to the Gore)
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台湾からアメリカへ移住したアジア系アメリカ人のAndrew Lee氏によるひとりグラインドコア2020年1st。彼はRipped To Shredsというオールドスクール・デスメタルバンドのメンバーでもある。
もしも、放課後ティータイムがグラインドコアに目覚めていたら…というカワイイと激しさを共存させたBABYMETALのようなポップなものではないことはこのジャケットを見ればなんとなく分かるだろう…。シュールかつツッコミどころが満載ではあるが、ジャパニーズ・アニメへの愛とグラインドコアへの愛が真っ直ぐ詰め込まれた珍盤だ。
『けいおん!』や『らき⭐︎すた』などのキャラクターのボイスサンプルからのトレモロアーミングと唸るようなグロウル、そして激しいブラストビートはもう笑うしかないのだが、ライブではドラムビートがあえての(?)生音ではなく打ち込みだったりと少しチープなところも良い味を出している。
(※埋め込みの楽曲は3rdアルバムより収録)
萌えの要素を抜いてしまえば王道なグラインドコアといってしまえばそうなのかもしれないのだが、彼の音楽やアートワークから感じる何も恥ずかしがることはないといういわゆるオタク・カルチャーと、マイノリティな音楽ジャンルであるグラインドコアへの堂々としたリスペクトは、好きなものは好き、好きなことだけを表現して共感しそれに着いて来てくれるリスナーが一人でもいればいい、といった前向きな作品でもあり日本アニメの世界への影響は我々日本人が誇るべきであるということを改めて実感させてくれる。
そしてこういったメタル(広義として)とアニメの関係性はごく身近であり、普段我々が何気なく耳にしているアニソンの中にもヘヴィ・メタルは数多く取り入れられている。あまりにも数が多い為ここでは省略させていただくが、スタジオ・ミュージシャンによる技術が高い演奏とよく聴いてみるとギターは歪みBPMは早く、ドラムもテクニカルで激しいものが多い。アニソンの作曲家にもメタラーが多いのは確かではある。ただ彼の作品はアニソンとの関係ではなく、映像作品としてのアニメとグラインドコアの視点から組み合わせたものだ。
クラブミュージック界隈では似たようにナードコアというアニメのボイス・サンプリングとハードコア・テクノやトランス・ミュージックを融合させたものがあり、親和性はそちらの方がかなり近いといえるだろう。
Houkago Grind Timeはポップさは皆無だが、好きなものを極めた結果、それが合わさることでここまでカオスなものを生みだしてしまうというのは他のバンドではなかなか見られない。ある意味で最高にグロテスクで最高に楽しい気分にさせてくれるグラインドコアは彼だけかもしれない。