大阪出身だが、俺は大阪人ではない

「ご出身はどちらですか」「大阪です」「えー!見えないですねー笑」

これが俺が自己紹介した時の定番のやりとりだ。自分でもそう思う。関西弁はそんなきつくないし、声は小さいし、他人に話しかけるの苦手だし、皆が思う「大阪っぽさ」をあまり体現していない。Twitterではなんでやねんとかつぶやいているが、仕事では丁寧語でのやりとりなので関西弁ほぼ0になる。いわゆる大阪的なものの代表である道頓堀や吉本新喜劇などとは無縁で育った。教育に悪いというのでドリフターズも知らずに育ったくらいである。幼少時代は買い食い禁止だったのでお小遣いでツナ焼き食べたりしてない。そもそも住宅街なので駅前にすらろくに店がなかった。たこ焼き器はあったがソウルフードと思えるほどは食べてない(かき氷機と同じ範疇)。大阪の大学に入れば状況は違っただろうが、大学は京都だった。入ったサークルは関西人の割合が少なかったので(大阪出身ほぼ皆無)、むしろ大阪ノリを抑えて過ごしていた(大阪の大学とジョイントコンサートした時に周りが大阪ノリの飲み会にマジ引きしてて笑った)。姉のほうが俺より大阪っぽい。父も母も関西出身ではあるが大阪ではない。母は俺よりも関西弁が薄い。母の両親はどちらも東北なので母はその影響を強く受けており、俺もその影響を多分に受けている。当時は関西で知名度のまだ低かったずんだおはぎ(小豆の代わりに枝豆を砂糖とすりつぶしたもので餅を包んだお菓子)を小さいころから喜んで食べていた。俺が東北に謎の郷愁を感じるのはおそらく幼少期の体験が関係しているだろう。むしろ自分のキャラクターは東北ノリが隔世遺伝したのではないかとすら思う。

ヨッピーの最近の記事ではこんなふうに書かれている。

「大阪には合う人と合わない人がいる」という言葉の内、「合わない人」というのはこういった雑多な街が好きになれない、という人も多数含まれているのではないかな、と思っている。東京で言えば代官山や白金あたりの落ち着いた街が好きな人には決定的に大阪が合わないだろうと思うからだ。そういう人が転勤になって大阪に住まなくてはいけない事情ができたときは豊中市、吹田市など大阪府の「北摂」と呼ばれるような地域、もしくは阪神間の西宮市や芦屋市に住むと良い。

ホンマに勝手なこと言うよな、と思う。大阪的なものがミナミにあるというのは認めるし、キタはその要素が薄いのは同意するが、何故「大阪に合わない人は北摂に住め」なのか。北摂は大阪ではないというのか。何故ミナミのノリに合わない人はキタに住めではないのか。甲子園も宝塚もガンバ大阪も大阪じゃないのか。むかむかする。お前北摂のことどんだけ知ってんねん。誰が代官山やねん。今は東京にいるがそんなハイソな街には住みたくない。

(とは言えこの記事は大阪について詳しくない主に関東の人間に向けて書かれていると思われるのでこんなツッコミは意味がないということは理解している。)

だが正直、自分はミナミのノリにはついていけないとは思う。ウルフルズの大阪ストラットは大好きな曲のひとつだが、自分がそのノリに参加できるかというと一歩ひいてしまうような気がする。(ノリに入りたいという憧れはあるが、大学が大阪でなかった以上自分は外側の人間である。)大阪の観光地おすすめどこですかって聞かれてもあまり答えられない。東京来てから、同郷の人間と「関西のノリ懐かしいよなー」と盛り上がろうとして、そもそも俺ってあまりその関西ノリを体験してないのではないか?と感じていた。「大阪らしさ」を懐かしいと感じていない。東京に来てからは東京ノリに変わってしまい、高校のOB会ではむしろ関東者としてアウェーを感じるレベルになってしまった。幼少期の家並みは阪神大震災で皆壊れて新しい家並みに変わり、実家も引っ越してしまったので大阪に帰る家はなく、新大阪駅についただけでは別に懐かしくないので、「俺に帰れる故郷はもう存在しないのでは…」と思っていた。だが、新日本風土記で「宝塚」特集してた時、「あー、これ、俺の子供時代の雰囲気や」ととても懐かしくなった。宝塚の人間でもないんだけど、番組で紹介されてた阪急宝塚線沿線のあの古くておだやかな感じ、とても覚えている。自分の故郷がミナミでなくキタであることを強く実感する出来事だった。

だから俺は他人が期待する大阪人ではない。ではないが関西人ではある。高校のOB会で周りが関西ノリ全開だと「戻ってきたー」とすごく居心地が良い(自分はもうそれにうまく参加できないけれど)。ミナミに遊びに行ったらたぶん東京者として扱われるだろうがそれも悪くないだろう。大阪出身なことは黙っておこう。キュウソのノリはすごいヒットするんだが彼らが西宮出身と知ってすごく納得した。俺は大阪よりは阪神間のノリなんだろうな。岡崎体育のあれは京都ノリなのかな、よくわからんが好き。関東のお笑いよりは吉本のお笑いが好き。関西人は他人を斬って笑いを取らない。絶対自分がボケて突っ込まれる。これは息子にも強く教育しており、息子は東京生まれだがボケるのがうまくなった(天然?)。俺も関西弁は消えたが雑談で笑いを取るのは今でも上手いよ。どうでもいいんだが、ヨッピーて大阪人ぽくなくない?大阪のお店はめっちゃ良く知ってるけど、ヨッピーの笑いのとり方、めっちゃ関東っぽい(神奈川とかそのへん)。更に余談だが、俺が東京で懐かしさを感じるのは代官山でも白金でもなく小金井市だ。ここには(阪神大震災より前の)街並みが残っている。道がまっすぐになってなくて入り組んでて、住宅地なので目印もなくて、初心者が絶対迷う感じ、すごく懐かしい。関東大震災が来たらいっぱい壊れると思うのだが、最近は戸建てブームでどんどん新しくなっているのでその心配はないかも。あと、東村山にも謎の懐かしさを感じる。ここまで来ると本当に謎だな。あのしっくいの塀がつらなる感じが懐かしいというか…どこでもいい訳じゃないんだな。なんかあるんだろうな。


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