「左組手」にならないために
最近仕事をしていてよく思うのが、「相手に合わせて左で組んでいてはいけないな」ってことなんですよ。
何のことかわかりませんね。柔道漫画の名作、浦沢直樹先生のYAWARA!の14巻に出てくるエピソードが最近思い出される、という話です。
富士子さんは右組手なのに相手が左組手なのに合わせて左で組んでしまい、そのせいで訳がわからなくなる、というシーンです。「相手に合わせずに、右で組んだらいいのよ!」と柔からアドバイスが飛びます。
もちろん相手はそう簡単に右で組ませてくれませんので、主導権の奪い合いになります。
この「左で組む」というのはつまり「相手の土俵で戦う」ということです。右組手の自分が左組手の相手に左で組んで勝てる訳はないように、相手の土俵で勝負させられて相手に勝てるはずはないのです。が、実際にはぼーっとしてると得てして相手の土俵で戦うことになりがちです。
例えばディープラーニングのような流行りの技術を自分も導入しよう、という場合には、最先端を行っている人たちからまずは学ぶ訳ですが、その人たちと同じ問題設定で同じ入力データで戦おうとしていてもいつまでも敵うはずはありません。パイオニアの敷いたレールに乗っている限り、最初に走り出した人が絶対的に有利だからです。「〇〇理論について議論するシンポジウム」みたいなのに呼ばれた時に、周りは〇〇理論の専門家で自分は新参者だという状況で、周りの専門家の発表スタイル、バックグラウンドと問題設定を踏襲している限りはその専門家の発表のインパクトを超えることはできないのです。ある意味では型破りな、しかし自分の中では「これが一番自然に感じる」というポイントを見つけ出して、「あなた達はどう思うかわからないけど、これが私のフィールドです、私はこう思っていますが、あなたはどう思いますか」というように、自分の土俵における自分の意見を相手にぶつけ、それに対して相手の意見を求める、というスタイルでいくしかありません。もちろんそのフィールドのスタンダードから外れますので簡単には受け入れられないのですが、そちらを高めて戦える武器にしていく以外に後発が最先端に食い込むチャンスはないと思います。独自性というのは結局そういうことではないかと。
なお「左組手」は他人と議論する時にも重要です。「君はわかってないようだけどこのコミュニティではこれが大事なんだよ」とマウントしてくる相手に対して、それを踏襲して疑問を感じながらあがくか、「そんなルールしらん、俺の思うようにやる」というスタイルをリアルで突っ張れるかは難しいところです。厚切りジェイソンは突っ張らなきゃダメだとひたすら主張していました。
僕はこれからどんどん右組手になっていきたいという思いを新たにしています。
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