ぼくのワーケーション
10月某日、層雲峡にいた。
北海道の屋根と呼ばれる大雪山国立公園の北部に位置するこの温泉街は、日本でもっとも早く紅葉が訪れるエリア。
訪れたこの日はまさに色付いたタイミング。めっちゃ綺麗。(それでも例年よりは遅かったみたい)
ただ、今回この日本一早い紅葉のタイミングに合わせたかと言えばそうではなく、あと一週間で今シーズンの営業が終了するという友達のゲストハウスに遊びに来るのが目的だった。
友人の名前は志水陽平くん。層雲峡ホステルというゲストハウスのオーナーだ。
層雲峡ホステルは今年で3年目を迎える層雲峡の温泉街にあるゲストハウス。
もともと大雪山系の登山やハイキングの拠点となるユースホステルだった宿で、今でもその名残から様々なコースにアタックできる好立地と豊かな自然・温泉街に位置する宿として愛されている。
今回シーズンオフ(冬季は休業中)になることを聞き、ギリギリでスケジュールを合わせることができた。そして遊びに行く旨を陽平くんに伝えると意外な返信がきた。
「拓郎さん、ウチの宿でワーケーションしてみませんか?」
せっかく行くなら、と陽平くんに案内してもらいながら紅葉の山の中を歩きたいなと思っていたこと、スケジュールの都合上、2泊することも決まっていた。
そんな陽平くんからの提案に断る理由はなかった。
はじめてのワーケーション
今回訪れる層雲峡はぼくの住む街、北見市のお隣の温泉街。
隣と行っても峠を挟んでいることや車で1時間半もかかる距離がある。(北海道の隣は遠いね)
普段は道東を中心に動き回ってる自分にとって、なかなか来ることができない場所が今回ワーケーションをする場所だ。
一応、ワーケーション について↓
ワーケーションとは
英語のWork(仕事)とVacation(休暇)の合成語。リゾート地や地方部など、普段の職場とは異なる場所で働きながら休暇取得を行うこと。あるいは休暇と併用し、旅先で業務を組み合わせる滞在のこと。
引用:JTB総合研究所
移動や諸々の事情で(鹿との事故は割愛する...)、1日目の夜遅くに宿に到着。
ぼくのはじめてのワーケーションはここからスタートだ。
宿に着いて真っ先にしたのはカレーを食べること(笑)
ぼくはここのカレーが大好きだ。
黒岳カレーと名付けられたその名の通りドロっと真っ黒なカレー。
鶏肉がゴロゴロ入っていて、とってもおいしい。(これでなんと800円!)
宿泊をしなくても層雲峡を通り過ぎる行程の日には頼み込んで食べさせてもらっているほど。
トラブルにより、予定よりずっと遅い時間についたにも関わらずこのカレーが待っていてくれたことは嬉しかった・・・(鹿の件も吹き飛んだ)
ここの宿はそこらの飲食店よりもずっと広い厨房があって、たまに食に関するイベントもおこなわれる。(訪れた数日前にはこんなイベントも)
普段はこのカレーや早朝、山を登る人には嬉しい朝食のおにぎりも用意してくれる。
右がおにぎりセット、かわいいメッセージ付
この日は少し飲みながら次の日の予定を立てる。今回やりたいことの一つでもあったトレッキング。
層雲峡からアタックできるルートはいくつもあるらしく、明日は層雲峡の温泉街を見下ろせるパノラマ台を歩くことにした。
往復で三時間ほどだというこのコースは、本格的な登山の装備がなくても歩けるくらいのコースだという。ぼくにとってはちょうどいいコースを楽しみに眠りについた。
気軽にできるトレッキング
朝起きると窓からは裏手の小川が見える。曇天だけど、気持ちの良い朝だった。
この日は9時に出発。
普段の自分の稼働時間よりも遅い出発のため、ポチポチメッセージを返しながら用意してくれたおにぎりを食べた。
今年に入って前月、前々月と2ヶ月続けて行った登山はどちらも暗い時間から動き出すガチなもの(笑)
それと比べると拍子抜けするくらい気軽で、経験のない人でも気構えする必要なく遊べるのではないだろうか?
(層雲峡ホステルではある程度のアイテムの貸し出しもおこなっている)
宿を出発して、車で走ること5分。これも驚くほど早く登山口についてしまう。
コンビニに行くくらいの感覚でトレッキングにのぞめる層雲峡、恐るべし...!
写真真ん中上の岩の絶壁らへんを目指す
「本当に水がおいしいんですよ」登山口前に車を停めて準備しながら、陽平くんが教えてくれた。
大雪山の山々の雪解け水や森に降った雨が流れ出し、ここまで流れてくる。
なんと層雲峡を流れているこの川は石狩川(!)だという。
起点と近く、赤石川などと合流しながら北海道でもっとも長い河川はここから流れ出ている。
豊富な天然水が流れる地域の証として、少し下流の上川町内には最近酒蔵ができたほど。その水質は折り紙付きだ。
山に入り、歩きながら、いろいろなことを話した。町のこと、仕事のこと、仲間のこと。
宿のシーズンが終わってしまうタイミングや、紅葉真っ盛りのシーズンに合わせたかったのもあるが、実はこうやって陽平くんといろいろ話す時間を一番楽しみにしていた。
実は陽平くん自身もアウトドアガイドの試験のため、前日夜に苫小牧から層雲峡に戻ってきたばかり。疲れと安堵とで一休みしたいところだったことは想像に難くない。
それなのに嫌な顔一つせず、むしろ喜んで一緒に歩いてくれていた。(ありがとう・・・)
北海道という土地は、広い。
道東や上川をはじめとした北海道内各地に友達がいる。
だけど、会える回数も時間も限られる中で、何よりそれぞれが住んでいる場所に行くための労力を考えると、再会できたときの喜びはいつだって特別だ。
物理的に距離が離れているから会うことは簡単ではない。
だからこそ、そんな時間が実現したときは、その時間を大切にしたいとぼくたちは思うのかもしれない。
上りには本当にぽっきり1時間。宿を出発してから諸々の準備を含めても1時間半もかからなかった。
実は車を停めて、登頂する地点を見上げた時には高台くらいの印象しかなったのだが、実際に登ってみるとびっくりするくらい高い場所に来ていたんだなと気付いた。
眼下には層雲峡の温泉街が一望できる。
地上から見上げるホテル群はとても巨大だけれど、上から見下ろせば山々の中にポツンとある小さな集落にしか見えないかった。
それほどまでに、この温泉街を囲む山々は雄大で美しい。
ちょうどまっすぐ眺めた目線の位置には黒岳と北鎮岳が見える。数日前に今年初めての降雪があったらしい。
この時期は紅葉と雪が同時に見える季節なのだそうだ。
北海道の長い冬が始まる。
層雲峡の温泉街を楽しむ
降りてからはもちろん温泉へ!
層雲峡ホステルで宿泊すると提携先の温泉に割引価格で入れる。温泉も選べて、グレードの高いホテルにも行けてしまう。
町宿として機能しているからこそ、周辺の宿と連携したサービスだ。
この日は朝陽リゾートホテルに行った。ここは層雲峡の他の温泉と少しだけ泉質が違うらしい。
川沿いに位置する露天風呂の借景と広い水風呂が嬉しい。
写真はない(ごめんなさい笑)。
温泉に入った後は腹ごしらえ。ここも陽平くんが普段から懇意にしている「ホテル大雪」の中にあるランチも食べられる居酒屋へ。
(陽平くんのカレーを食べたいと言ったのだけど、これは拒否られた)
のれんを下げてる時間に駆け込みで入ったのに、陽平くんの顔を見るなりオッケー!
メニューにないラーメンとチャーハンのセットを食べさせてくれた。ここでも地域にしっかり溶け込んでいる様子をみることができた。
運動した後だから許されるモリモリメニュー。しょっぱさが最高だな〜(写真はiPhone、ごめんなさい)
お昼を食べて、さあやっと仕事開始!・・・の前にお昼寝。
ワーケーションのワーの部分をまったく満たせないまま休憩してしまった...気持ち良すぎた...
宿でする仕事
気を取り直して起きた後はオンラインの打ち合わせとひたすら連絡を返す。
このリリースもこの時だしたよ↓
この日経験したワーケーションはとても忙しかったというのが正直な感想だった。
遊びの中にどう仕事を組み込んでいくのか。そんなことがワーケーション 中には求められるのかもしれない。
ただ、自分の場合はあまり集中力がない方なので、ダラダラと長い時間作業をするよりもパッと切り替えて集中するというスタイルはとてもよかった。
普段と違う作業環境というのも新鮮で集中できる材料だったのかもしれない。
素敵なしつらえと日当たりのいいデスクだな〜
あとはぼくの泊まった部屋は二階の角部屋だったんだけど、ネットワーク環境も良好!
ホテルや宿だと部屋のWi-Fiが激弱で滞在先では常備してるポケットWi-Fiに繋がなきゃいけないこともしばしば。
層雲峡ホステルではメッシュWi-Fiというのを採用しているらしく(技術的なことはわからん)、ルーターのあるリビングと各部屋でも速度にほぼ変化はなかった。
これだけ詰め込んでもまだ18時。
朝早くから動き出し、普段では感じられない自然の中を歩き、温泉に入って、集中して仕事をする。
自分にとっては大満足の1日だった。(だけど、昼寝をしすぎるのだけは要注意だね)
行く用事をつくれることがワーケーションに繋がる
層雲峡に行ったのは1ヶ月前。これを書くにあたって、改めてワーケーションについて考えた。
今回、層雲峡ホステルのシーズンオフ目前に駆け込みで訪れたスケジュールだったけれど、そうまでして行きたいな、行かなきゃなと思わせてくれる友達の存在は大きかった。
何度も言うが、北海道という土地は広い。
その中で活動しながら、北海道各地でそれぞれに挑戦している人と出会う機会がある。
地域は違えど、同じような志を持った人がいるということは支えにも、モチベーションにもなる。
ぼくはそんな人たちと口実や用事を作り、再会を繰り返している。
一瞬の楽しいひとときを過ごす一方、そんな再会はけっして当たり前じゃないことをお互いが知っている。
移動するだけで多くの時間を要すること。人口の少ない地方で生活すること。
「気のおけない仲間」という点で変えのきかない、限られた存在だ。
そんな場所をわざわざお互いが行き来している。
そんな北海道の実情と、ワーケーションは少し似ているような気がする。
わざわざ普段の自分の生活とは縁の遠いところへ行く。その時の決め手はロケーションや設備だけではないはず。
「目的となるような人がいる」ということはとても重要なことなのだと思う。(現にぼくも年間通じて誰かに会いに行く以外の旅行はしていない)
この数日も陽平くんはつきっきりで普段の生活の中で楽しんでいる場所に連れて行ってくれた。
普段の遊び場、暮らし、住んでいるからこそわかる楽しみ方。
そんな「人を通して楽しむ」ことが旅やワーケーションの醍醐味なのではないだろうか?
これからも自分は目的になるような人のいる場所や宿に行っていたいなと思う。
陽平くん、本当にありがとう!また来年も遊びに行くね。
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